第2話 分類の力
「この光は...魔力の波動ですか?」
私の問いに、ミラは静かに頷いた。書架の間を縫うように、幾筋もの光が流れている。まるで星座を結ぶ線のように、特定の本と本を繋いでいるようだ。
「魔法書は互いに影響し合うの。特に同系統の魔法は、より強く...」
その言葉が終わらないうち、上層から轟音が響いた。ミラの表情が曇る。
「また始まったわ。似た魔力を持つ本が、無秩序に配架されているため...」
私は彼女の言葉の意味を直感的に理解した。それは前世で何度も経験してきた問題。蔵書の分類が適切でないことによる、資料の損失と検索効率の低下。
ただし、この世界では物理的な影響を及ぼすようだ。
「ミラさん、デューイ十進分類法は、この世界でも機能しますか?」
「デューイ...?」
「はい。主題による分類システムです。例えば...」
説明の途中、新たな振動が走った。今度は近い。振り返ると、一冊の本が棚から飛び出し、不安定な光を放っている。
とっさの判断だった。
私は周囲の本の背表紙を確認し、すぐに同系統の魔法書を見つけ出す。そして、それらを素早く隣接した位置に移動させた。
すると、不思議なことが起きた。
本から放たれていた不安定な光が、徐々に穏やかな輝きへと変化していく。まるで、同じ仲間と出会えた安堵のように。
「これは...」ミラの目が大きく見開かれた。「分類による魔力の安定化。理論上は可能とされていましたが、実践できた者はいなかった」
私も驚いていた。図書館情報学の知識が、この世界では魔法のように機能する。
「藤堂さん」ミラが真剣な表情で言った。「九階書庫の問題も、あなたなら...」
その時、新たな足音が聞こえた。振り返ると、そこには制服姿の少女が立っていた。
「すみません」少女は小さく息を切らせている。「魔法学院図書室から来ました。リリア・セイジブルームと申します。その...魔法書の管理について、ご相談が」
ミラは微かに目を細めた。まるで、何かを見通すように。
「丁度いいわ。藤堂さん、あなたの最初の仕事になりそうね」
私には分かっていた。この依頼には、まだ見えない何かが潜んでいることが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます