ノータリン教の野望!


 ヨツハシカメラの店内は、まさにカオスと混乱そのものだった。




 転売ヤーたちが押し寄せ、店内は人の波で埋め尽くされている。


 電化製品やゲーム機、日用品まで、目ぼしい「商材」は片っ端から買い占められていく。店の棚が空っぽになる様子に、一般客たちは呆然と立ち尽くしていた。




「なんだこれは……」




 一人の客が思わず呟く。状況を理解できないまま、ただその光景を見つめるしかなかった。




「一体何が起こってる!?」




 店員もあまりの混雑に対応しきれず、対応する暇もない。


 彼らは途方に暮れながら、溢れんばかりの転売ヤーたちが商品を手にして店外へと次々と消えていくのを見送っていた。店内は焦燥感と怒りが入り混じり、もはやただの電気店とは思えない雰囲気に包まれている。


 異様な雰囲気に包まれた店内で、突然誰かが叫んだ。




「ノータリン教だ!」




 その声が響くと、周囲の人々も次々と同じ言葉を繰り返し始める。




「ノータリン教だ!」

「ノータリン教の仕業だ!」

「ノータリン教が来たぞおおお!」




 ヨツハシカメラは混乱の渦に巻き込まれ、転売ヤーたちの群れの正体が次第に明らかになっていく。世界征服を企む謎の組織「ノータリン教」——彼らはお布施を稼ぐために転売活動を行っていたのだ!


 店内には緊張と不安が広がり、一般客は後ずさりしながら出口へと急ぐ。


 ノータリン教の転売ヤーたちは、まるで何事もないかのように商品の山を抱え、カオスの中を悠々と進んでいる。誰もがその異様な集団を恐れ、店内の騒ぎはますます激しさを増していった。




 「どけどけどけ〜、おどきあそばせ〜!」




 群衆を押し除けながら、堂々と現れたのはエリシア。彼女はまるでこのカオスを制するかのような勢いで進み出てくる。その目には、どこか正義の炎が燃え盛っているように見えた。


 転売ヤーたちが道を空ける中、エリシアは涼しい顔で、次々と商品を抱えていく転売ヤーたちを鋭く見回す。




 「——とう!」




 エリシアは軽やかに跳躍し、シュバッと空中で身を翻すと、手をかざしてノータリン教の転売ヤーたちに向けて洗脳ビームを放った!




「ぐわあああぁ〜!」




 ビームを受けたトレカ狙いの転売ヤーは、一瞬目を見開き、まるで人が変わったかのように手元のトレカを抱きしめ始める。


 そしてシュリンクを勢いよく破り、カードの裏にガリガリと自分の名前を書き始めた!




「うおおおお!これは俺のもんだぁ〜!誰にも売らねええぇえ!」




 その場で高らかに叫びながら、転売ヤーはカードを掲げ、周りのノータリン教メンバーたちに自慢げに見せつける。他の転売ヤーたちも動揺し、あちらこちらで自分の「商材」を手にして戸惑い始める。エリシアの洗脳ビームが、ノータリン教の思惑を次々と打ち崩していった。




 「デヤッ!」




 エリシアは再び洗脳ビームを放った!今度のターゲットは、プラモデル狙いの転売ヤーだ。ビームを受けた転売ヤーは、突然商品の名前をド忘れした様子で頭を抱える。




「こちらの商品のロボットの名前をおっしゃってください」




 転売ヤーは必死に記憶をたどろうとするが、口から出たのは妙な言葉だった。




「あ、ああぁあ……し、知らねええええ!ご、ゴンダム!希望戦士ゴンダム!」




 周りの人々が失笑する中、転売ヤーは洗脳されたままその場でニッパーを取り出し、プラモデルの箱を開けて組み立て始めた。彼は夢中でパーツを切り取り、説明書も見ずに組み立てを進めている。




「うおおおおぉ!組み立ててやるぜ!これは俺のものだああ!」




 その勢いで、他の転売ヤーたちも動揺し、商品を抱えながらその場で組み立てを始めたり、開封したりしてしまう。


 エリシアの洗脳ビームは、転売ヤーたちの冷静さを次々と奪い去り、ヨツハシカメラはますます混沌としていった。


 エリシアは再び手をかざし、転売ヤーたちに向けて洗脳ビームを発射!




「おりゃああぁ!」




 次のターゲットは、マスクを抱えた転売ヤーだ。ビームを受けた彼は目を見開き、突如大声で叫び出す。




「おおぅ!?……俺にマスクなんかいらねえええ!俺はもう『甘いマスク』をつけてんだよぉ〜!」




 周囲の一般客たちが容赦なくツッコミを入れる。




「誰が甘いマスクじゃ」

「ブサメンしね」

「帰れ!」




 転売ヤーは恥ずかしさのあまり顔を赤らめ、マスクをその場に投げ捨てて、慌てて店外へ逃げ出した。エリシアの洗脳ビームが、転売ヤーたちを次々と狂わせ、カオスだった店内は別の意味で騒然とした空気に包まれた。


 ノータリン教の転売ヤーたちを次々と洗脳ビームで打ち倒し、ヨツハシカメラの店内は次第に平穏を取り戻していく。エリシアは満足げに頷きながら、最後に店内を見渡すと、ゆっくりと出口に向かって歩き出した。


 彼女の後ろ姿が見えなくなると、一般客や店員たちはほっとしたように息をつく。




 ——ノータリン教がいる場所に彼女あり!いつでもどこでも駆けつけ候!




 そう謳われるエリシアは、再びどこかでカオスを制圧するために現れるのだろう。彼女の冒険は、まだまだ続く。




********************




 街は不法滞在者たちによって、まさにカオスの極みと化していた。




 店では万引きが横行し、品物が次々と棚から消えていく。路上には売春婦たちが列をなし、周囲に怪しげな視線を送りながら、通りを行き交う人々に声をかけている。少し離れた公園では、毎日何かが煮えたぎる怪しげな鍋が並び、独特の匂いが風に乗って広がっていた。


 空気はあちこちで吸引される「葉っぱ」の煙で汚染され、街全体が鈍い霞に包まれているかのようだ。人々は顔をしかめながらも、避けようのない現実に呆れ、街の活気は完全に陰りを帯びていた。




 街の住人たちは、混乱の中で不安と恐怖を抱えながら口々に叫び始めた。




「ノータリン教だ!」

「ノータリン教が来たんだ!」

「ノータリン教だああぁ!」




 街中で略奪される商品、そして怪しげな売春活動——すべてはノータリン教の仕業だったのだ。


 彼らは略奪した物品を闇市場で売り捌き、売春で得た金を「お布施」と称して組織に流し込んでいたのである。


 ノータリン教の拡大に伴い、街の秩序はますます崩壊し、混沌が支配していた。


 街中のあらゆる場所で不法な取引が横行し、住人たちは恐怖におののきながら、かつての日常が遠ざかっていくのをただ見守るしかなかった。ノータリン教の影はどこまでも広がり、街全体を覆い尽くそうとしていた。




 「どけどけ〜!おどきなすって!」




 群衆をかき分けて現れたのは、エリシア!彼女は堂々とした姿勢で進み出ると、ノータリン教の不法滞在者たちを鋭く睨みつけた。




「貴様ら、ノータリン教ですわね!死ねい!」




 ——とりゃぁ!




 彼女は全力で腕を突き出し、強烈な一撃、キェー砲を放つ!




「きええぇえぇ〜!」




 そのビームが不法滞在者を直撃し、彼はたちまち吹き飛ばされ、怪しげな鍋に頭から突っ込んでしまった。そして、ぐらぐらと鍋の中で体を揺らした後、ついに息絶えた。




 エリシアの一撃により、周囲のノータリン教のメンバーたちは一瞬にして恐怖に駆られ、騒然となった。彼女は容赦なく次なる標的を見据え、カオスの街を救うために進撃を続ける。ノータリン教も、エリシアの怒りには抗えないようだった。




 エリシアは数人の不法滞在者に囲まれても、まるで怯むことなく不敵な笑みを浮かべている。

 対する不法滞在者たちは次々と気合を入れ、誰かが叫んだ。




「チウゴク3年の歴史を味わえぇ!」




 それを聞くやいなや、エリシアは手を広げ、立て続けに強烈な打撃を繰り返す。




 ——ビシ!バシ!ドッゴォオ!




 不法滞在者たちは次々と吹き飛ばされ、近くに積み上げられていた段ボールの山に激突した。


 その瞬間、段ボールが崩れ、中から怪しげな葉っぱが宙を舞うように撒き散らされる。


 周囲に立ちこめる異様な香りが漂い、不法滞在者たちはさらに混乱していく。葉っぱの煙が立ち上る中、エリシアはなおも冷静で、次なる一撃を狙っている。


 周囲の人々は息を呑み、エリシアがもたらすカオスと彼女の圧倒的な力に、ますます目が離せなくなっていた。




 「——パアアアアアン!」




 突然、過積載の「クルマカー」がエリシアに向かって突進してきた!


「うお!あっぶね!」


 エリシアは一瞬後退しながらも、すぐに手をかざしてキェー砲を放つ。




「きええええぇ〜!」




 強烈なビームがクルマカーに直撃し、不法滞在者の運転手は驚愕してハンドルを操作するが、アクセルとブレーキを踏み間違えた彼は、勢いそのままに電柱に激突!


 その衝撃で車のボンネットが開き、冷却水が勢いよくピューッと噴き出す。


 さらに、四輪すべてのタイヤがガチャンと外れて転がり落ち、車体は完全に崩壊し、真っ二つに割れてしまった。




 エリシアの凄まじい一撃で、街の混乱を引き起こしていた不法滞在者たちはどこかへ消え去っていく。


 エリシアはひと息つき、街の平和が少しずつ戻り始めるのを感じながら、周囲を見渡していた。彼女の圧倒的な力は、街を支配していたカオスに終止符を打つのだった。




 エリシアは意気揚々と、不法滞在者たちを次々と捕まえては、手際よくトラックのコンテナに押し込んでいく。




「母国に帰れですわ!」




 彼女の冷たい宣言に、不法滞在者たちはもはや反抗する術もなく、コンテナの中へと詰め込まれていく。街には再び平和が戻り、エリシアは満足げにトラックのコンテナを閉め、手を払ってほこりを落とす。


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