ドキドキ!食レポ!


 エリシアはとある高級レストランに訪れていた。




 今回はYouTube企画の撮影で、撮影者と一緒に料理のレビューをするという趣向だ。煌びやかな照明が落ち着いた雰囲気を演出する店内で、エリシアは優雅に席に座り、カメラに向かって微笑んでいる。




「皆さま、こんにちは。今日は特別に、とあるレストランで素敵な料理をレビューしていきますわ。」




 エリシアは完璧な笑顔で話し、撮影者がカメラを回している。


 次々と運ばれてくる豪華な料理に、彼女は興味津々で目を輝かせる。前菜からメインディッシュまで、すべてがアートのように美しく盛り付けられていた。




「さて、まずはこちらの前菜からいただきますわ。」




 彼女はフォークを手に取り、慎重に料理を口に運ぶ。その仕草は洗練されており、一つひとつの動作が上品に見える。


 撮影者がカメラ越しに尋ねた。



「どうですか、味の感想は?」




 エリシアはしばらく味を堪能した後、満足げに頷いた。




「ふふっ、これは素晴らしいですわね。香りが豊かで、素材の味をしっかりと引き立てていますわ。」




 こうして、エリシアは撮影者と共に楽しく料理のレビューを進めていった。視聴者に伝わるような魅力的なコメントを意識しながら、彼女は撮影を続けていくのだった。




 メニューの中には、見事に調理されたブロッコリーの料理があった。




 苦手だという人も多いブロッコリーだが、シェフの巧みな調理と味付けのセンスが光り、見た目も味も素晴らしい一品に仕上がっている。


 エリシアはフォークで一口を口に運び、感想を述べるために満足げに微笑んだ。






「美味しいですわね。……この、ブッコロス。」






一瞬、場が静まり返る。撮影者がすぐに気づき、小声でそっと注意した。




「……か、噛んでる……噛んでる。」




 エリシアはピクリと眉を動かし、気まずそうに口元を整えた。




 「おっと、失礼しましたわ。」


エリシアは少し焦りながら、もう一度ブロッコリーの名前を言おうとする。


「えっと……この……ブッコロ……」




 撮影者はカメラ越しに、必死に目線で「違う!違う!」と語りかける。エリシアはその視線に気づき、さらに混乱してしまった。




「え……えっと、ぶっ殺すぞ……じゃなくて、ブッコロ……」




 エリシアは言葉を詰まらせながら、完全に迷走し始める。


 撮影者は顔を引きつらせながら、「違うって!違う違う!」と内心で叫び、何とか場を取り繕おうと必死にエリシアにサインを送っている。




 「おほほほ……久々の食レポですからね。」




 エリシアは気まずさを誤魔化すように、優雅に笑いながら何とか話を繋げようとする。




「それにしても、素晴らしい味付けですわね。」


 撮影者は、次こそちゃんと名前を言ってくれと願いながらエリシアを見守る。






「この、えっと、ブロリー。」






 エリシアがまた間違えた名前を言った瞬間、撮影者は慌てて声を潜めて注意した。




「怒られるから、まじで。ドラゴン※※※ルじゃないんだから。やめてくださいって!」




 エリシアは一瞬ポカンとしたが、すぐに何かを悟ったように笑みを引きつらせた。




 気を取り直して、エリシアは次のメニューに挑んだ。


 ところが、出てきたのはブロッコリーの天ぷらだった。オーナーによると、ブロッコリーを間違って大量に仕入れてしまったらしく、特別サービスだという。




 エリシアは少し眉をひそめながらも、天ぷらを一口頬張った。




「あ、うんめえですわ!サクサクしてていけますね……えっと。」




 撮影者はカメラを回しながら、内心で必死に祈った。




(頼むぞ……頼むぞエリシア!)




 しかし、エリシアの脳内はすでに混乱の極みに達していた。




 さっきの「ブロッコリー」「うんめえ」「天ぷら」が頭の中でごちゃ混ぜになり、言葉がメチャクチャに合体してしまった。







「てんめえらぶっ殺すぞ!」






 静まり返るレストラン。撮影者は顔を真っ赤にして慌てた。




「ダメじゃん!全然ダメじゃん!すんませんねぇオーナーさん!」




 カメラを手早く片付けながら頭を下げた。




「ちょっと……機材トラブルで、また出直してきますんで!」




 オーナーは苦笑しながら見送る中、撮影は大混乱のまま一時中断となった。

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