見んなや
あるビルのエレベーターホールで、スーツ姿のサラリーマンが苛立たしげに腕時計を確認しながら待っていた。
「なかなか来ないな…。」
エレベーターが到着するまでの時間がやけに長く感じられる。焦る気持ちを押さえつつ、彼はもう一度ボタンを押した。
やっとのことで、エレベーターが「チーン」と軽やかな音を鳴らし、ドアが開いた。
——その瞬間、彼の目に飛び込んできたのは、驚きの光景だった。
エレベーターの中には小さなテーブルと椅子が設置され、そこにはエリシアが優雅に昼食を楽しんでいた。
エレベーターという狭い空間が、まるで一流レストランの個室のように様変わりしている。白いクロスが掛けられたテーブルの上には、豪華な料理が並び、湯気が立ち上っている。
隣には、一人のウェイターが無言で控え、銀のポットからエリシアのカップに紅茶を注いでいた。
エレベーターの中ということをまるで忘れさせる、奇妙に洗練された空間がそこに広がっていた。
サラリーマンは、口を開けたまま呆然とその光景を見つめるしかなかった。
エレベーターの中でエリシアと目が合ったサラリーマンは、瞬間的に冷たい汗が背中を伝った。
エリシアは、じっと彼を睨みつけた後、突然ものすごい剣幕で叫んだ。
「なに見とんねん、こら!おい!」
サラリーマンは、困惑したままその場に立ち尽くす。
「私が飯食ってるところ、そんな面白いか!?なあ!おい!なんとか言えですわあああぁ!」
エリシアがフォークを振りかざして席を立とうとしたその瞬間、エレベーターのドアがスッと閉まり、エリシアは上の階へと運ばれていった。
サラリーマンは開いた口が塞がらないまま、ただ立ち尽くすしかなかった。
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