第13話 告白

あやか「直人くん?直人くんったら!!」


直人「あぁ…ごめんボーっとしてたよ」


あやか「もう、しっかりしてよね!」


直人「ははは…」


あやか「…あの、ごめんね?私、あんまり覚えてないけど直人君に迷惑かけちゃったみたいで…嫌いになったでしょ」


直人「ううん、全然嫌いになんかならないよ。それに、こうなったのは全部病気のせいだもん。君は何も悪くないよ」


あやかさんは、突然メソメソと泣き出した。そして、か細い声でこう言った


あやか「グスッ…直人君はやっぱり優しい…優しすぎるよぉ…」


僕は黙って彼女が泣き止むのを見守っていた。


しばらくして、あやかさんは落ち着いたのか口を開いた。


あやか「直人君ごめん、私、本当はこんなボロボロ泣く姿、見せたくなかったんだけどね…でも、泣かせるようなことを言った君がいけないんだから!」


直人「ははは!ごめんね。つい本音が出ちゃったよ」


あやか「…本音ってことは、この先何があっても君は、私のことを嫌いになったりしないってこと?」


直人「もちろん!何があったって、あやかさんのこと嫌いなったりしないよ」


あやか「えへへ、そう言ってくれると嬉しいな、ありがとう」


僕はなんだか照れくさくなって顔を赤らめ、あやかさんから視線を外す。多分、向こうも同じような感情になっているだろうとも思った。


直人「ところで、あやかさん。僕は君と今日病室で会って、気がついたことがあるんだ」


あやか「んっ?なに?」


僕は思い切ってこの言葉を口にした。


直人「あの時、僕が病室で知り合った女の子の正体は、君だったんだね」


あやか「…ッ!!ようやく気がついてくれたんだ」


あやかさんは、またもや目に涙を浮かべる。


直人「あぁ、気づくのが遅くなって本当にごめん。あやかさん、病院の時と全然雰囲気違うから分からなかったよ」


あやか「えへ、ごめんね。でも直人くんだっていくらヒントをあげても、ちっとも気がつかないんだもの。私、それが結構ショックだったんだからね!」


直人「ごめんごめん!まさか、あやかさんもここに入院しているとは思わなかったから」


あやか「私も、病棟であなたのこと見たとき、どうして直人くんがここにいるの!?ってびっくりしちゃったよ。だから気になって私、声をかけたんだ」


直人「そうだったんだ。声かけてくれてありがとうね。あやかさんから声をかけてくれなかったら、あんな楽しい時間はなかったと思う」


あやか「そう言ってもらえると嬉しい!私も直人くんと仲良くなれて本当に良かったよ!」


直人「うん!僕もかのんさん…いや、あやかさんと話せて良かった!」


そして僕は、胸につっかえていたあの事を口に出した


直人「…あの!僕、あやかさんに一つ謝らなくちゃいけないことがあるんだ!」


あやか「えっと…なにかな?」


直人「あの時、君が退院するまで一緒にいてあげられなくてごめん!」


あやか「なんだ、そんなことか。いやいいんだよ。確かに私も直人くんが隔離室に入ってとてもびっくりしたけど、仕方ないことだよね。だって入院生活ってとっても辛いもの。限界が来ちゃうこともあるよ」


直人「僕、限界来ていたのかな?全然寝てばっかだったけど…」


あやか「ううん、寝ていただけだとしても頭の中はすっごく忙しいから休めているようで休めてないんだよ。それに病気のせいで体調もものすごく悪いしね。直人くんはここまで本当よく頑張ったと思う。私、尊敬するよ」


直人「あ…ありがとう…!!」


あやかさんの言葉に僕はたじろぐ。


直人「あやかさんだって、僕には想像つかないつらい出来事がいっぱいあったと思う。それなのにたった一人で逃げずに闘っていてすごいよ」


あやか「直人くんは本当に優しいね。ありがとう」


直人「うん、でもこれからはいっぱい人に頼ってね。みんなあやかさんの力になりたいと思っているから」


あやか「…直人くんはどうなの?」


直人「…えっ?」


あやか「だから、直人くんは私が困ったとき、力になってくれるの?」


直人「もちろんだよ!僕なんかでよければ、あやかさんのこと全力でサポートするよ!」


あやか「『僕なんか』って言葉、なんか引っかかる。私は、他の誰でもないあなたに、ずっとそばで見守っていてほしいの」


直人「えぇぇぇ!そ…それってどういうこと?」


あやか「はぁ…直人君ってほんとニブいんだね。恥ずかしいセリフ何度も言わせないでよ!」


直人「ご…ごめん」


あやか「じゃあ、鈍感な直人君のためにストレートで伝えるね。私、直人君のことが好き。ずっとそばにいてほしいの」


心臓がドクンと跳ねる。それと同時に全身が熱くなる。


まさか、再度告白されるなんて思わなかった。なんだか頭がクラクラとする。この間もあやかさんから告白されたが、それと比じゃないくらい嬉しかった。


僕は動揺を抑えながら、こういった。


直人「ありがとう。すごい嬉しいよ!でも…」


あやか「…でも?…あぁ、やっぱり私と付き合えないんだ…そうだよね…」


直人「いや、そうじゃなくて!女の子の方から告白されるのは、なんかちょっと違うっていうか…」


あやか「ん? それってどういうこと?」


直人「つまりさ、僕のほうからも、きちんとあやかさんに思いを伝えたくって…」


あやか「!!!」


直人「だから、ごめん、今から僕の話、聞いてくれるかな」


あやか「うん!もちろんいいよ!」


直人「あー、えっと、僕があやかさんを好きになったのは実は入学式の時からなんだ。新入生代表のスピーチをしている君はとても輝いて見えたよ」


僕はこれまでのことを一つ一つ丁寧に思い出しながら言葉を紡ぐ


直人「でも君はとても人気者で、僕みたいな小心者が付き合えるわけがないなって半分諦めてた」


「そんなことないのに…」とあやかさんが小さい声で言った気がした。


直人「でも2年になって、あやかさんと同じクラスになってこれはチャンスだって思った。仲良くなるぞって意気込んで空回りもしたっけ。それで入院もしちゃったけど、退院した後にあやかさんのほうから話しかけてくれてめちゃくちゃ嬉しかったな」


こんなにも人に対して素直な気持ちを伝えたことはあっただろうか。そんなことを思いながらこの告白も終わりへと近づく。


直人「正直、なんで突然あやかさんが僕と接点を持とうとしたのか今までずっと謎だった。けれど、それが今日ようやく分かったんだ」


あやかさんはただ黙って僕の話を聞いている。その姿が健気で愛おしいとさえ思った。僕は淡々と力強く、最後に本当に伝えたいことを、言った。


直人「つまり僕が言いたいのは、君のことを他の誰よりも深く知っていて、他の誰よりも、好きだってことだよ」


病室に涼しい風が吹き抜ける。


直人「だから…あやかさん、僕と付き合ってください」


あやか「……うん…うん!…うん!」


あやかさんは僕の言葉に何度もうなずいた。


その瞬間、いままでの悩みや苦しみが嘘のように、とても晴れ晴れしい気分になったんだ。

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