第2話 板挟み状態!?

翌日、僕はひとりで学校に行った。理由は単純で、朝、自宅に薫が来なかったからだ。


母「あれぇ~いつもならこの時間に薫ちゃん来るのにねぇ~もしかして喧嘩でもしたぁ?」


とか母親に言われたが無視して家を出た。


直人「あいつまだ怒ってるのかな?まあ、学校行って謝ればいいや」


そう思いながら学校に着く。


しかし薫は、朝も昼も、僕の教室を訪ねてくることはなかった。


僕はなんだかもやもやして、放課後に薫の教室まで行くことにした。


夕礼の後、僕はそそくさと帰り支度をし、教室を後にする。


すると背後から僕を呼ぶ声がした。


「直人君!直人君ったら!」


振り返るとそこには安藤さんがいた。


直人「ん?なんだ安藤さんか。どうしたの?」


あやか「もしかして、今から薫さんのところに行くの?」


直人「そうだよ。よくわかったね」


あやか「私も一緒に薫さんのところに行ってもいいかしら?一晩考えたけど、やっぱり昨日、私もあの子に悪いことをしたなと思って。だから薫さんにきちんと謝りたくて」


直人「うん。いいよ、じゃあ一緒に行こうか」


僕と安藤さんは、小走りで1年の教室へと向かった。


教室にはまだちらほら人が残っていたが、薫の姿はなかった。


僕はたまらず近くにいる男子生徒に声をかける。


直人「ごめん、そこの君。前田薫はもう帰っちゃったの?」


男子生徒「あぁ、前田さんなら、帰りの会が終わったと同時に走って帰っていきましたよ」


僕と安藤さんは顔を見合わせる


直人「そうか、ありがとう」


あやか「…薫さん、先に帰っちゃったのね。ちなみにメッセージとかって、送ってみた?」


直人「あぁ、朝に送ったよ。でも、未読スルーされてるんだ…」


あやか「そうなの…じゃあ電話でもかけてみたら?もしかしたら出るかも」


直人「あっそうだね。試しにかけてみるよ」


プルプルプル…プルプルプル…


長いコールの後、ようやく薫が出た。


薫「はい、どうしたのおにぃ」電話越しから気だるそうな感じが伝わってくる


直人「あっ薫?いま大丈夫か?」


薫「まぁ大丈夫だけど」


直人「そうか、良かった。いや昨日のことちゃんと謝れてなかったなと思って…それで今日、直接会えなかったから電話したんだ。ほんとごめんな」


薫「おにぃ、もう怒ってないよ。私の方こそ昨日取り乱しちゃってごめんなさい」


直人「良かった!今日一日薫のこと心配していたんだ。……あっ、そうだ!実は安藤さんも薫に言いたいことがあるらしくて。今、隣にいるからちょっと聞いてもらえるか?」


スピーカー通話にしていたため、安藤さんのほうに少しスマホを向ける。


あやか「もしもし、薫さん?昨日は2人で食事している場に突然入り込んでしまってごめんなさい。軽率な言動をしてしまったと反省しているわ」


薫「…ちょっと待って、なんで安藤さんがいるの?」


直人「なんでって…さっきも言ったけど、安藤さんも薫と話がしたいっていうから…」


薫「いやそういうことじゃなくて、いつの間にそいつとそんな仲良くなったんだって聞いてるの!」


明らかに薫がキレている。


直人「いや仲良くなったっていうか、なりゆきというか…」


薫「あっ、そうやってはぐらかすんだ…おにぃはいつもそうやって逃げるからズルいよね。安藤さんのことが好きなら、好きってはっきり言えばいいのに」


直人「べっ、別に好きとかそういうわけじゃ…」


薫「じゃあ、私と安藤さん、どっちが大切なのか今この場で言えるよね?」


直人「えっ!!そ…それは…」


直人(どうしよう、安藤さんの前で嘘をつくわけにはいかないよな。でも、薫のご機嫌も取らなくちゃ…)


そんな板挟みの状況で僕は


直人「か、薫の方が大切に決まってるじゃないか!」


と言い放った。


一瞬の静寂


薫「ふぅん、おにぃはやっぱり私のことが好きなんだぁ。そっかそっかぁ…それだけ聞けたら満足だわ。じゃあね!」


直人「おっおい!そういうことじゃなくて…」


プツッ 


僕が弁解しようとした瞬間、通話を一方的に切られた。


直人「切れちゃった…」


「薫の方が大切!」と言ってしまった手前、安藤さんの隣にいるのがなんだか気まずい…


どう声を発しようか迷っていると、安藤さんの方から話しかけてくれた。


あやか「薫さん、機嫌治してくれてよかったわね。これで明日から関係も元通り。すぐ仲直りができてよかったじゃない」


なんか声色がトゲトゲしている


直人「そ…そうだね…安藤さんもありがとう。一緒にいてくれて」


あやか「いや私なんて、薫さんの神経を逆なですることしかできなかったわ。でも、よっぽど私、薫さんから嫌われているのね」


直人「そんなことないよ!ただ薫は安藤さんのこと勘違いしているだけで」


あやか「まぁ、そうだといいんだけど。それより、やっぱり直人君は薫さんのこと好きなのね。薄々気づいてはいたけど」


直人「違うよ!僕は薫のことは妹のようにしか思ってないよ!」


あやか「ふーん…そうなのね。それって本当なのかしら」


…やっぱり、なんか安藤さんの機嫌が悪いみたいだ…僕は居心地が悪くなってお決まりの逃げに走った。


直人「じゃ、じゃあ僕、今日、夕飯の当番だから先に帰るね!バイバイ!」


僕は後を振り返ることなく、足早にその場を去った。


直人(やっぱり安藤さんの前で薫のことが大切なんて言わない方が良かったよな。いやでも、あの時ああ言うしかなかったし…。あぁ、明日からどう2人と接すればいいんだ…)


なんてぐるぐると頭の中で考えながら家路についた。

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