第18話 せめてもの成長を

入学から2ヶ月が経過した。

そんな中、私、エリー・フォレストは一生懸命に魔法や勉学に励んでいる。

相変わらず毎日の通学はきっついけれど、生徒会のご厚意で馬車を出してもらって何とか助かっている。

登下校のたびにアーノルド先輩と顔を合わせるのが難点だけど。


今日も馬車の中で


「ティータイムに飲むなら、紅茶か珈琲か」


という人類の存亡をかけた議論を行い、紛糾して殴り合いになったばかりだ。

あの野郎、あんな苦いだけの泥水を好んで飲む理由が分からん。

舶来品だからって気取ってんじゃねーぞ。


それにしても……


「人、少なくなったなぁ」


クラスを見回して、思わず呟いた。

はい、すみません、私が原因ですね。


あー、いやぁ、私だけのせいではないんですがね。

私に意地悪をしてきた、中でも悪質な子たちが揃ってクラスから消えたというだけで…

確かクラスには40人くらいいたはずなのに、半分ちょっとになってんな。


一時期は半分以下にまで減っていたが、定期的に人数が増えて、今これくらいだ。

多分、やらかした罪状によって停学期間が定められていたんだろうね。


そんな中、私が一番苦戦しているのが魔法学です。

聖女なのに一番苦手なのが魔法ってどういう事なんだろうか。

例の「キャンプファイヤー事件」と呼ばれる悲劇以来、私も頑張って練習はしているんだけど…


「てりゃあ!」


………やっぱり光るだけだ。

何にも影響がない。

先生たちは「もしかして付与魔法特化型なんじゃないか」と助言をしてくれたけど、相手に付与する為の魔力操作も難しいんだよな、これ。


「ちっ、まったくなっちゃいないな。これだから平民風情は……」


担任教師の舌打ちが聞こえてくる。

目の下にある隈が、ますます濃くなって私を睨み付ける。

ひぃ、怖いぃぃっ。


「いいか、付与魔法はイメージが大事なんだ」


「は、はい」


「付与する能力にもよるが、対象自身なのか、対象の持つ武器や防具なのか…具体的なイメージを持って、例えば相手にボールを渡す感覚でやってみろ」


わかりやすぅい!

先生、すっごいいい人だよね!!

生徒の処罰に反対する保護者たちの声を押し切って、停学の書類に担任印を押しまくったって聞いてます!

最初に


「あ、こいつ、絶対に私を差別するモブ貴族先生だ」


とか思ってごめんなさい!

モニカさんもそうだけど、人は見かけで判断しちゃいけないね!


そんなわけで、どうにか対象物に魔法をかける所までには至ったんだけど…


「何も起きんな」


先生自ら実験台になってくれて、謎の付与魔法を受けてくれたのに申し訳ないのだが、特別に何かが起きたわけではない。

身体能力が上がったわけでもなければ、魔法力が高まったわけでもない。

物理攻撃や魔法攻撃への耐性が上昇したわけでもない。


「自分が光ることができる、相手や対象物を光らせることができる」


なんだこの魔法。

存在意義が疑われるぞ。

さすがにもう面と切って馬鹿にしてくる人はいないけれど、みんなからの冷たかったり、蔑んだ視線が突き刺さる。

がっくりと項垂れると先生が吐き捨てるように言う。


「ちっ、どの属性とも判別されていない魔法が、そう簡単に解明できてたまるか。肩を落としている暇があれば、もっと研鑽を積め。この程度で諦めるとは、まったく平民風情は……」


うおおおおお、先生!

一生ついていきます!!

この程度で諦めてらんないですよね!


そんなこんなで、さらに1ヶ月も研鑽を積むうちに、私の魔力操作は順調に伸び……


「はああああっ!!」


私が杖を振ると、大講義室一杯に広がる光のドーム。

そう、私は身に着けた。


すっごく光りまくっちゃう魔法を!!


…………うん、何に使うんだ、これ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る