第11話 ああ、モニカ様

「ご機嫌よろしくて?ミスキャンプファイヤー?」


おーっほっほっほ、という言葉がぴったりな表情で現れたのは親友モニカ・ホールズワースだ。

取り巻きの方々は


「さすがはモニカ様は美しくいらして…」


とか


「あの雷魔法は、これまでで一番エレガントでしたわ」


なんて言ってる。


うん、全面的に同意する。

私の発光魔法なんか比べるのがおこがましいほどだった。


「もう、とても無様でした事よ。とても正視できる代物ではなく…」


「ごめんなざいいいっ!!!」


「エ、エリーさん!?」


次の瞬間、土下座して、借りていた杖を献上するポーズをとっていた。

ああ、もう情けない。

せっかく友達が杖を貸してくれたのに、私はあんな魔法しか使えなかった。

私は親友の顔に泥を塗ってしまったようなものだ。


「モニカさんの言うように、私はみじめで無様な虫けらです!!生ごみ以下の、生きる価値もないへっぽこ野郎です!踏まれて足ふきマットになるくらいしか価値のない、哀れな雑巾です!!」


「お、おやめなさい!! 誰もそこまで言っていないでしょう!!」


ああ、なんて慈悲深いのでしょう、モニカ様は。

こんな私を肯定してくれるなんて。

ノエリア様は別格として、次の推し候補よ!

そもそもノエリア様の代替なのだから、いい人に決まっているじゃないの!


「まったく貴女という人は調子が狂いますわね。ほら、その汚らしい鼻水を、これでお拭きなさい!もちろん、平民の体液の付いた汚れた布など返さなくて結構よ」


そう言って差し出してくれたのはレースがあしらわれた、見るからに高価な絹のハンカチ。

………なるほど、これはそういう事なのね。

もちろん異論はないわ。


「わかりました」


「何が!?」


「今日から私はモニカさんの奴隷になればいいのですね?」


「意味不明すぎますわ!!」


あれ? 間違えた?


「モニカ様…」

「いくらなんでも、それはあまりに……」

「やって良い事と、悪い事が……」


周囲の取り巻きさんたちも、どん引きしているし。

なぜか私にではなく、モニカ様にだけど。


「本当に貴女は煽り甲斐のない方ですわ!!その杖も、ハンカチも返さなくてよろしい!それと破かれた教科書は手配したので、今度受け取るが良いわ!」


「何から何までありがとうございますうううううう!!」


大地に伏して拝み倒すと、モニカ様は颯爽をご神体を翻らせて去っていった。

若干、怯えているように見えたが、きっと私なんかに構って家名が汚れるのを恐れたのだろう。

それでも私のような雑巾が気落ちしているのを見て、いたたまれなくなり、さりげなく先ほどの失敗についても触れる事で、気にするなと励ましてくれたに違いない。

そのついでに杖やハンカチ、そして教科書まで施してくれるなんて、もう頭が上がらない。


ああ、モニカ様!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る