・ネタ製造機
とあるプログラマーによって、作品制作業界に革命が起きた。
「この機械に単語とシチュエーションを入れると、自動的に話のネタをAIが生成してくれます。日本人版なので必ずや日本人に受け入れられ売れるでしょう」
『ネタ製造機(日本人版)』は、多くの作家や読者によって玩具にされたり批判されたりしながらも次第に受け入れられていった。その精度は日本人向けに特化しており、生成されたネタで書かれた物語は小説や漫画、ドラマを問わず大ヒットしたのである。
「この話面白い! まさかこうなるなんて思わなかったよ!」
「あはは。このギャグ笑えるわ!」
「めちゃくちゃ泣いた……最高に良い……」
物語を作る者は突飛なネタ勝負ではなく、いかに緻密に面白く書けるかが求められるようになった。それによって作家全体の品質が上がり、様々な分野で切磋琢磨した。そうすることで、出版業界はもちろん創作界隈全体が熱気に包まれ大いに盛り上がったのである。
そんな熱狂が10年続いたが、徐々に『ネタ製造機(日本人版)』は日本人相手に陰りを見せるようになり始めた。
「なんかこの話、前にも読んだことあるような……」
「この間発売された奴と話が似てない?」
「あ、確かに」
AIの学習スピードよりも速くネタが消化され続けた結果、ネタが飽和してしまい同じようなネタや過去に作ったネタと同じようなネタしか生成できなくなってしまったのである。
「う~ん。たぶんこの話こういう展開でしょ?」
「あ、やっぱりそう思う?」
「そういう展開だったよ」
意外性のない展開に読者は飽きはじめ、次第にネタ製造機は使われなくなっていった。かと言って、AIが作るネタ製造機を超えるネタを人間が思いつくのは難しかった。新しいと思ったネタも、すでにAIが生成していたなどはよくある話だ。
「最近、似たような話が多いよね~」
日本のネタ業界は道を閉ざされようとしていた。
そんな時、SNSで突如として見たことのない新しいネタが量産されだした。その目新しさに日本人たちは飛びつく。
「こんな話見たことないわ!」
「なるほど、こういう話になるのか……」
「この解釈、新鮮だな」
今までとはまったく違う話に様々な人が飛びつき、このネタの出元はどこだと探し回った。
「あった! これがネタ元だ!」
ようやく見つけたネタ元に日本人たちは群がった。そのネタ元にはこう書いてあったのである。
『ネタ製造機(ブラジル人版)』
『ネタ製造機(アメリカ人版)』
『ネタ製造機(イタリア人版)』
そして『ネタ製造機(日本人版)』には日本人以外が群がっていたのであった。
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