第7話 超能力?或る居酒屋の奇妙な客【怖い話】

(本話の分量は、文庫本換算0.8P程です。)




居酒屋でアルバイトをはじめたEさん(大学生・男・接客担当)。


或る平日の夕方、店の奥に有るレジの辺りで立っていると、ピンポーンとセンサーが鳴った。客が入って来たようだ。


対応に出ると、そこにはYシャツとスラックス姿のぼさぼさ頭の中年男が立っていて、出て来たEさんに目も合わせず、ブツブツと独り言を言っている。


自分の世界に浸ってブツブツ言っている中年男だが、顔を上げたタイミングでEさんの存在に気が付いてハっとびっくり。そのままブツブツを一瞬止めて「カウンターね」と一言。




Eさんは中年男の前に立って席に案内。座らせてからは、お冷とおしぼりを運ぶ。その間、中年男は刺身の盛り合わせと日本酒を注文する以外、ブツブツ言い続けていた。


その後、Eさんが日本酒を運んで配膳。まだブツブツ言っている。配膳中に、ブツブツの内容が聞こえた、「3,3,2,7,8。かける、いやわる。一つが二つなるのは何でだろう?二つが三つにならないで四つになったと想定する」なんて。


その後、Eさんは男の席に刺身の盛り合わせを運ぶ。男はやはり、ブツブツを続けていた。「10にゼロを一つ付けることと100にゼロを一つ付けること」等と言っていた。


こうして何度か中年男の席に行く内に、ブツブツ言うのは奇妙だが、問題行動を起こしそうにはないと思った。また、他の客も増えて居酒屋は騒がしくなってきた。中年男のことは気にしなくなったし、中年男に呼ばれて注文を聞きに行く時にももうブツブツの内容を聞いてみようなんて余裕もなかった。




その後、Eさんは、中年男にラストオーダーであることを伝える。中年男は「会計して」と言う。店の奥で計算すると、3万円越えだった。


閉店後。仕事を終えたEさんは、控室で一緒になった先輩に「ブツブツ言う変なお客さんでしたね」と言った。


先輩は中年男について知っていることを説明してくれた、「あの人。週一くらいで平日夕方に来るよ。いつも3万円くらいは注文する。この前、ブツブツ言う内容を聞いたんだけどね、『わたくしに2億円をもたらせた数字と出会ったのは、2億円をもたらせた日とすべきではなくて』なんてよ。金持ちなんだろうね」と。


それを聞いたEさん。ブツブツ言う数字を聞いて、宝くじを買ってみようかとも思った。



以上「第三話:超能力?或る居酒屋の奇妙な客【怖い話】」。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る