星のCord.D

八つ橋っておいしいよね

仮面の戦士

第1話,Aと友の証

 Na.15年、ケレス王国とゼウス帝国で新たなおうじが誕生した。第15代ケレス王国国王ヴァルディ・ケレスは、王子エクス・ケレスと名付け、第9代ゼウス帝国皇帝アントニオ・ゼウスは、皇子アロン・ゼウスと名付けた。そして、二人のおうじは、運命に導かれることとなる...。

 Na.21年、僕は初めての友達ができた。アロン。彼はとても優しい人だよ。きっかけは、古代都市パルテミスから発掘された、不思議な力がある、白と黒の骸骨仮面を保管するための交渉をゼウス帝国と行うときのことだ。

 父上は交渉のため、この場を離れるから僕と兄上は帝国側の皇子と仲良くしておきなさいとのことだ。父上の言葉を聞いた兄上は、少々なっとくいかない顔をしていた。帝国側を警戒しているのかな?そう思いながらも、兄上は僕とともに会いに行った。

 僕と兄上は、待ち合わせの場所である二人の特徴的な赤い眼を見た。


「はじめまして。ケレス王国第2王子アーノルド・ケレスです。こちらは、弟のエクス・ケレスです。」


僕は、そわそわしながら会釈した。見た目からして女の人は、兄上よりも2つは年上だろう。あと、もう一人の子は、僕と同じくらいの年だと思う。


「ご丁寧なあいさつに感謝する。はじめまして、アーノルド殿。私は、ゼウス帝国第一皇女ルミン・ゼウスだ。こちらは、五つ下の弟、アロン・ゼウスだ。」


アロン君は、そのまま軽く会釈をした。僕は彼の眼から、何かまっすぐなものを感じた。兄上は、手に持っていた自前のチェス盤を出して、


「さっそくですが、ルミン様と手合わせいただけるでしょうか?」

「無論だ。ぜひともやらせていただく。」


チェス好きの兄上は、いつも初めましての相手に、チェスでの手合わせ申し込んでいる。まぁ僕が相手だと毎回兄上は勝てないんだけどね。そんなことを思っていると、目の前にいたアロン君が、僕の手を握った。


「エクス君、せっかくだし鬼ごっこしようよ!」


正直いきなりこんなことを言われるとは思わなかった。でもまぁ断る意味もないしな。


「うん。いいよ。あと、エクスでいいよ。」

「おー!ありがとう!じゃあ俺もアロンって呼んでよ。」

「わかったよ。だけど、一人称「俺」は怒られるんじゃない?」

「そこは大丈夫。ちゃんと父上や姉上らには、「私」だからね。」


そんなことを言う彼の顔は、あまりにも自信ありげな顔だった。そんな顔を見ていた僕は、思わず笑ってしまった。それを見て彼も笑っていた。案外面白いやつだ。

 それから僕らは、かわりおにをした。結果は...ほぼ僕が鬼だった。だって足速いし、体力化けもんだよ?タッチするにはいい感じに障害物で行き止まりにするしかなかった。


「いやーいっぱい走ったねー。次は何する?こおりおにする?」

「おいおい...勘弁してよ。よくそんな走って...また鬼ごっこしようと...思えるな。」

「よく言われるよ。じゃあひとまず休憩しようか。」

「そうだね。あと...よく言われるなら、アロンは...体力のばけもので...正解だね。」

「そう言うこと言われても、あんまいい気分はしないぞ?」


そんな話をしていたら急に面白くなった。彼も同じだったようで、お互い笑いあった。

 僕らは、古代都市パルテミスを見ながらゆっくり話でもすることにした。しかし、こうやってみていると、何百年も前にこんな立派な都市が形成されているなんて、とてもじゃないけど信じられない。そんなことを思っていたが、その話とは別で、アロンが話しかけてきた。


「なー。エクスの夢って何?」

「え?」


正直いきなり聞かれても戸惑ってしまう。夢か―...


「なんだろう...」

「うーん?決まってない感じ?」


しばらく黙って考えたが、あんまそれっぽいものが浮かばない。


「...そうだね。全然浮かばない。」


彼は、フーンって言って真っすぐパルテミスを見た。


「俺はさ、みんなでおいしいって言える世界にすること!」

「なにそれ。どーいうことだい?」


チョットナニイイタイノカワカラナイ。今でもおいしいって言えるけど...。そう思っていたら、チェスを終えてきた兄上とルミン様が戻ってきた。


「エクス、そろそろ父上も交渉が終わる頃だろうから、父上の元に戻るよ。」


そうか、もう帰るのか。僕は、ちょっとだけ悲しげな表情になってしまった。それを見ていたのか、アロンは笑顔で、グーの手を出した。


「悲しい顔しなくたって大丈夫だよ。僕らは、これで友達なんだからね。」


ルミン様の前だから、多少丁寧にしているつもりだろうけど、ちょっと微妙かな。

でも、友達か。僕は軽く笑って、グーの手を出してアロンのグーに当てた。


「ありがとう。アロンこれで、友達だね?」

「そうだよ!...また遊ぼうな。」


僕らは手を振りあい、その場から離れて帰った。帝国の子でも、すごくいい子だった。魔族だけどいい子だった。また、遊びたいな。

 このひとときは、きっと僕にとって忘れないだろうね。



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2025年1月25日 00:00
2025年2月22日 00:00

星のCord.D 八つ橋っておいしいよね @YatsuhasiG

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