第6話

美紗緒は僕に逢いたくてメールを受け取ってから家まで来たらしい。


暗い夜道を駆けて来て来たいう美紗緒の気持ちを嬉しく思いつつも恨めしく感じつつ、ここらが潮時なのだろうと観念して全てを話すことにした。



美紗緒は最後まで黙って僕の話を訊いてくれた。


話し終わって数分、僕たちの間には沈黙が漂っていたがやがて美紗緒が口火を切った。


「……そっか……そういう訳だったのか」

「え?」


てっきり開口一番、気持ち悪い! と罵られるかと思っていたから予想に反しての冷静な言い方に少し拍子抜けした。


「あのね、和巳くん。私も和巳くんに秘密にしていたことがあるの」

「──え」


いきなりの【秘密】という単語に驚いた。


嫌な動悸が騒ぐ胸を抑えつつ、美紗緒の言葉を待っていると


「実は私、本当は……女の子が好き、なの」

「えっ?!」


(今、もの凄いカミングアウトが頭の中を通過して行った……)


そんな僕の戸惑いを気にしつつも美紗緒は続けた。


「ずっと女の子ばかりの環境にいて、いつの間にか恋愛対象は女の子になっていたの。男の人は野蛮で汚くていやらしいイメージばかりで……。大学で初めて共学になったけど、やっぱりそのイメージは払拭されなかった」

「……」

「でも、和巳くんと出逢ってから私の考えは変わったの」

「え」

「和巳くんを初めて見た時、なんだか他の男の人とは違うものを感じて……なんていうのかな、男臭くないっていうか……顔も綺麗で……全然嫌悪感が湧かなかった」

「…!」

「だからずっと気になってて……そんな和巳くんから告白されて付き合い始めて、色んな和巳くんを知って初めの時よりもうんと好きになって惹かれた」

「美紗緒ちゃん……」

「でもその訳がやっと解かった。そっか……和巳くん、女の子の格好するのが好きなんだね」

「気持ち……悪い?」

「全然! あっ、あの……女の子の格好している和巳くん、すごく綺麗で……さ、先刻からドキドキしてる」

「──え」

「男の和巳くんも勿論好きだけど……女の子の和巳くんはもっと好き、かも」

「!!」


そういいながら美紗緒はうっとりとした表情を見せながら僕にキスした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る