act2 君の秘密。
第5話
私には秘密がある。
大好きな彼には言えない内緒の秘密が。
こんな私を知ったらあなたは私をどう思うのだろう──?
**********
仕事を終えた夜更け。
美紗緒は寝ているかも知れないと思ったけれど一応メールを打った。
【用事が済んで今、帰宅中です。美紗緒ちゃんは今頃夢の中かな? いい夢見れているといいね】
当然返信はない。でもきっと朝イチでメールを返して来て、僕はその着信音で起きるんだろうなと思った。
深夜──街中は静寂に包まれ昼間とは別世界だった。
僕はこの時間帯が好きだった。周りの目を気にしないで堂々と女の格好をして街中を歩けるこの時間帯が。
ひとり暮らししているアパートに帰って来た時、部屋の前の違和感に気がついた。
(……え)
其処には今、此処には居るはずのない人物が立っていた。
「み、美紗緒ちゃん?!」
「!」
そう、僕の部屋の前には今頃夢の中にいるであろう美紗緒がいたのだ。
「美紗緒ちゃん、何やってんの?! こんな時間に」
「……あなた……和巳くん?」
「は? 何いって…………あっ!」
(しまった! 今、女の格好している!)
「あ……あ、あ、あの……」
「……」
一瞬にして嫌な汗が噴出した。
(これはどう考えても絶体絶命ってやつだよね?!)
もうなんて声をかけたらいいのか解からなくて黙りこくっていると
「……中で事情、訊かせて」
美紗緒はやけに冷静にそう呟いた。
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