act4 真実と未来

第9話

全ての話を終えたご主人様がまるで自分自身を蔑むように言った。


「本当の俺はこんなにも卑しくて傲慢で、未だに香を──亡き妻の言葉にすがって生きているただの矮小わいしょうな男だ」と。


だけど私はその言葉通りのご主人様を感じることは出来なかった。


「ご主人様はとても純粋なお方です」

「──何」


気が付けば堰を切ったようにご主人様に対する気持ちを吐き出していた。


この一年で私は知った。ご主人様は見た目の怖さからは結びつかないほどに心優しい方なのだと。


不器用な優しさを垣間見たことが何度もあって、その度に私の中でご主人様の印象がいい方へと傾いて行った。


不愛想で無口な中でも決して嘘は言わず、常に私を気遣ってくれるのを肌で感じていた。


最初は怖かった体の関係もご主人様の扱いがとても優しいからすっかりその行為の虜になってしまっているなんて恥ずかしいことまで言ってしまった。



そして私はご主人様のいない生活なんて考えられなくなっていた。


それほどまでにご主人様は私の中ではとても大きな存在になっていたのだ。



もっとも、私はご主人様のほんの一端しか見ていないのかも知れない。


本当のご主人様はもしかしたら見かけ通りの恐ろしい本音がある方なのかも知れない。


だけど仮にそうだったとしても、私にとってはそんなご主人様でもいい。


どんなご主人様でも私は私の全てをご主人様に捧げてしまってもいいと思っているほどに──愛してしまったのです。

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