第8話

しかし結婚からわずか三年で奥様は亡くなってしまう。


最愛の人の今際の際の言葉は『どうかいつまでもひとりでいないでください。きっと私と同じようにあなたのことを愛し、一緒にいたいと思う女性がこれから絶対に現れますから』だった。


奥様は最後までご主人様をひとりにしてしまうことを一番心配しながら逝ってしまったのだ。



奥様が亡くなってからすぐにはそんな気持ちになることはなく、ご主人様は長く失意の日々を過ごしたそうだけれど、やがて少しずつ奥様が残された言葉を現実のものにしたくて奥様と恋した時と同じ状況で伴侶となってくれる人を探し始めた。



だけど年を経る毎にご主人様を本当の意味で受け入れてくれるメイドはいなかった。


奥様とは一年で恋仲になったという指針があったためにご主人様がひとりのメイドをお屋敷に置くのは一年間と決めていた。


一年一緒にいて、なんの感情も生まれなかったらそれだけのものだと頑なに信じてしまっていた。



結果として招き入れたメイドたちはご主人様を好きにならなかった。


みんなメイドとなってから一年後、ご主人様の元から去って行った。



そんな絶望が繰り返される焦燥感から、ご主人様はとうとうメイドの仕事内容に体の関係を盛り込んでしまう。


それは余計にメイドたちから怖がられ、気持ちを離れさす行為だと解っていても独り身の寂しさを何らかの形で埋めないとどうしようにもないところまで来てしまっていたのだった。

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