第4話

そして私にも約束の一年がやって来た。



ようやくご主人様から解放されるその時がやって来たのだ。



朝食の後片付けをしながらぼんやりと考えていた。


(私は……)


一年間、なんとなくだけれど考えて来たことがこの時になってひとつの大きな塊となって表に出ようとしていた──。






カチッという軽い音と共に暗闇に満ちた部屋は一斉に明るくなった。


「おかえりなさいませ」

「!」


出張を終え、屋敷に戻ったご主人様を迎えた私を見た瞬間、ご主人様の顔が今までに見たことがないものになった。


驚いた気持ちを押し込めながら極力普段通りに接した。


「お食事になさいますか? それとも先にお風呂──」

「何をしている」

「っ!」


いきなり腕を取られて骨が軋んだ。


「おまえは何をしている。何故此処にいる」

「……私は出て行きません」

「!」


掴まれていた腕が一層痛んだ。


ご主人様の動揺ぶりが其処からありありと解った。


「私はこのまま変わらずにご主人様にお仕えしたいです」

「──何を企んでいる」

「え」

「何を企んでいると訊いている! おまえには充分な報酬を与えたではないか」


声を荒げられ決心した気持ちが萎んでしまいそうだった。

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