act2 約束と決意
第3話
──ご主人様との契約の日から一年になろうとしていた
「
「はい」
「明日、この屋敷から出て行け」
「──え」
いつものように朝食を摂りながらご主人様が突然告げた。
「おまえがこの屋敷に来てから明日で一年だ」
「……」
「今後についての必要事項はこれに全て書かれている」
「……」
そう言ってテーブルにA4サイズの封筒をバサッと置いた。
「仕事もすぐに始められるように手配してある。住む処も備え付けの家具が揃っているから身ひとつで行っても何ら困ることはない」
「……」
「俺は今日から出張で一晩留守にする。だから今、言っておく。───世話になったな」
「!」
淡々と一方的に言いたいことだけを言ってご主人様は屋敷を出て行った。
私ひとりしかいなくなった屋敷に静寂が広がる。
元々この広い屋敷にはご主人様と私しか住んでいない。
ご主人様は極度の人見知りで、十年前に亡くなった奥様がひとりでお屋敷の事やご主人様の事、全てを切り盛りしていたのだと訊いた。
奥様亡き後、ご主人様は経営している孤児院を退所した後、行くあてのない少女たちをメイドとして一年ずつ雇うようになったそうだ。
何故ご主人様がそんなことを始めたのかは解らない。
単なる慈善事業ではないことは体の関係を強要されることから解る。
言葉は悪いけれど、ご主人様は身寄りがないという弱味に漬け込んでメイドとなった少女たちを性奴隷として扱っているのではないかと思った。
しかしメイドとして働き始めた少女たちは全員一年後、ご主人さまによって職と住む場所、そして手厚い手当を与えられてこの屋敷を去っている。
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