第5話

「……もしかして悠希?」

「ご名答」

「何、ずっと付き合いがあったの? 悠希と」

「ありますよ。無二の親友なんですよ? じゃなきゃ今日だって招待されていません」

「……」


(それはそうか)


実家暮らししていたのに悠希から貴央に関する話は一度も訊いたことがなかった。だからてっきりふたりの関係は高校進学と共に途絶えたのかと思っていた。


(だけどそうじゃなかったんだ)



──ということは……



「待っていたんですよね? 俺を」

「!」


不意に耳元に唇を落とされゾクッとした。


「何、を」

「もういいでしょう? 離れてから10年。15歳の俺が告白した柚希さんと今、俺は同じ歳になった」

「……」

「あの時では危うかった歳の差も今のこの年齢では全く問題ないでしょう?」

「……」

「そして今、柚希さんには彼氏がいない」

「……」

「この10年、柚希さんの心の中には誰がいましたか?」

「……」

「あの時俺にいった『すき』という言葉の意味、今は違う『すき』の意味に変化していますよね」

「……」

「ねぇ、柚希さん」

「~~~」


こんなのかわせるはずがなかった。


再会した彼から受けた誘惑を跳ね退けられるほど私は出来た女じゃなかったのだ──。

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