第4話

『これくらいでアイドルになれるなら真子なんて超アイドルになれるよな』

『え、真子がアイドル?』

『そう。アイドルになって有名になったらお嫁さんにもらってやるよ』

『!!』



篤志くんにとってはたった一回きりの戯言だったのかもしれないけれど、その日以来私はアイドルという職業に憧れを持つようになった。


アイドルになれば篤志くんと結婚出来ると、そう思い込んでしまっているのだ。


(まぁ、篤志くんはそんなこと忘れているんだろうけどさ)


また「はぁ」とため息が出た。


篤志くんは私のことをなんとも思っていない。だって四年も一緒に暮らしているのに全然そういう雰囲気になったことがないから。


何回かさりげなく色仕掛けみたいなのをしたこともあったけれど見事にスルーされたし、冗談っぽく「好き」といった時も軽いノリで「俺もだー」と笑い飛ばされた。


「……キツい」

「え、体がキツいのか?」

「……」


ボソッと呟いたぼやきを聞きつけて篤志くんが私の元に寄って来た。


「大丈夫か? どこがキツいんだ」

「……」


(キツいのは気持ちだよ!)


いっそハッキリと気持ちをぶちまけてしまおうか?──そう思った瞬間、篤志くんの携帯が鳴った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る