第3話

ただ、オーディションも全く受からなかったらもっと早くに諦めて田舎に帰っていたのだろうけれど、エキストラや端役にチョロッと受かったりすることが稀にあったので完全に踏ん切りがつかないでいる状態だった。



「なんだかなぁーもう年齢的にダメなのかなぁー」

「年齢って……真子、まだ20歳じゃないか。若い若い」

「篤志くんは芸能界に疎いから分からないんだろうけどアイドルで20歳デビューなんてありえないんだよ?」

「そうなのか? 恐ろしいところだな、ゲーノー界って」

「……」


(本当、篤志くんって鈍いんだよなぁ)


横目で篤志くんを見る。明日の仕込をしている篤志くんの横顔は真剣そのものだった。


「……」


私がこんなに必死にアイドルを目指しているのには訳があった。それもこれも全てこの篤志くんのせいなのだ。


それは私が8歳、篤志くんが18歳の時。


私はいとこになった篤志くんのことが好きだった。


子どもの私から見たら十歳上の篤志くんは立派な大人だった。だけど大人の篤志くんは子どもの私といっぱい遊んでくれたからいつの間にか好きになっていた。


そんな大好きな篤志くんがテレビに映し出されていたとあるアイドルの子を指差して言ったのだ。

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