第2話

「いらっしゃいませ!」

「真子ちゃん、いつものお願いねー」

「はぁい、きつねうどんひとつ!」

「はぃよ」


此処はうどん処【かのう屋】。私のアルバイト先だ。


そう、今の私はこのうどん屋さんで働いている。



──夜20時過ぎ。慌ただしかった一日の業務を終えひと息つく



「真子、暖簾外して来て」

「はぁい」


この【かのう屋】はいとこの加納篤志かのうあつしが営んでいるお店だった。


四年前、アイドルを夢見て田舎から上京した私はとりあえず親戚の篤志くんの元に身を寄せた。


いとこといっても篤志くんは私のお母さんのお兄さんが再婚した奥さんの連れ子なので血の繋がりは全くなかった。


だけど小さい時からの顔見知りで、親戚の中では一番仲良くしてくれた大人だった。


「あ、そうだ。真子、おまえに手紙来ていたぞ」

「本当?!」


篤志くんから封筒を受け取りその場で開けざっと目を通すと「はぁ……」とため息が出た。


「なんだ、また落ちたのか?」

「……うん」

「ドンマイ」

「……」


四年前の国民的アイドルグループのオーディションは結局三次審査止まりだった。


私は東京に来て初めて知ったのだ。東京には可愛い子なんて掃いて捨てるほどいるということを。


だけどだからといっておめおめ田舎に帰る訳にもいかず、篤志くんのお店で働きながら芸能界入りを目指すべくオーディションを受けまくって──今現在に至る。

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