バス
一般人。
第1話
病院へ向かう最中のバスの中好きな小説を読み音楽を聴きながら浸り、この無駄な時間を流れ作業のようにこなしていく。たった週に1度だけれどそれですら億劫に感じる。ふと窓の景色を見た時に目を止めたガードレールにもたれ掛かる小さなピンクの自転車。だがそれとは正反対に周りはホテル街、なぜだか周りに流されない芯の強さをかんじる。それに対して俺はどんな事でも周りの目を気にして周りによく思われようとしたがる。あんなちっぽけな自転車よりも酷い人間なのかと思い舌を鳴らす。ホテルの光が煌びやかに舞う中俺はポツンとある何の変哲もない病院へ入って行く。たわいもない会話をしながら気がつけば「お会計へどうぞ」と促されるままに金を支払い病院を出る。先週俺がおすすめした「聞いてくるね」と言ってくれたあの曲を聞いてくれたのだろうか、だが曲の話なんて今日な一切でなかった。好みじゃなかったのか、それともはなから聞く気なんてなかったんだろうか。そんなちっぽけな悩みとは対極的に先程よりも活気のあるホテルのライトが街を照らす。やるせなくなって俺はその先生が嫌いになった。もう口も聞いてやらない。行くまでの道も億劫なのにさらに嫌なのは帰り道だ、そしてこのやるせない気持ちもおまけでついてくる。バスに乗ると優先席しか空いてない。優先席しか空いてないと言うだけでべつに混んでいるわけでも無さそうだ。だがこの優先席に座る。という罪悪感と周りの視線がとても嫌で立つことにした。だが今の俺は「なんで目の前の席が空いてるのに立っているんだろう」とか思われてるように感じれる視線がまとわりついてくるのを感じて全てが嫌になる。バスも駅を通過したことで席がどんどん空いてきた。俺は2人席の窓側に座った。小説を開き、また自分の世界に入る。バスの中はまた少しずつ混み出して俺の隣の席に誰が座ってくるのか不安で仕方がなかった。すると横にいた香水臭い女がみすぼらしい太ったおばさんに俺の横の席を「どうぞ座ってください。」と譲ってきやがる。座ったおばさんと女がありがとうと言い合ってるのを聴きながらこんな横で小説を見ている俺の事をこの女はどう思ってるのか、俺はここにいていいのか分からなくなって莫大な嫌悪感が一気に迫ってきた。この抱えきれない嫌悪感をシラを切るように小説の続きを読み始める。気づいた頃には車内は静まり返っており、聞こえるのは運転手がかき鳴らしているウィンカーのカチカチという耳障りな音だけ。ウィンカーの音はもっと他に候補があったのだろうか、例えばパフパフだったりシュイーンシュイーンといった馬鹿げた音だったり、としょうもないことを考え無駄に時間を使ってしまった自分を悔いる。自分は今何をすべきなのか、何ができるのかすら分からなくなってきた。最寄りのバス停に着きバスをおりる。バスも電車も忘れ物をするとめんどくさいので降りる時のひやひやする感じがとても嫌だ、自分が座っていた席を何度も確認して降りる。家とバス停の間の横断歩道。俺は横断歩道もまともに渡れない。曲がろうとしている車のウィンカーがまた耳障りでしかたない。いま俺が渡っていいのか、そこの車は今この瞬間渡れると思ってたのに俺が通ることでタイミングを逃してしまうのではないかとへんなプレッシャーに押しつぶされそうな中信号が赤になる。こうなったら俺の勝ちだ。また青になったときに最初から渡れば歩行者優先な世の中は許してくれる。でもこの赤になるまでの時間、さらにそこからまた青になる時間がいちばん勿体なく感じた。俺は何回言っても学べない。学ぼうとしていないのかもしれない。誰もいないはずの家に着いても残るのは後悔だけこの後悔と添い寝しながら毎日を過ごす。何も楽しくない何も変わらない俺だけの日常。
バス 一般人。 @ippanzin__
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