4.んなことあるんですかい?

「え……」


仰向けになったまま呆然とするやなぎ。ほんと、言葉が継げなかった。


「ですので、ポリープが大きくて、当院では切除治療ができません。他の病院を紹介しますので、今回は入院なしです」


なん…………だと…………。


こちらを見下ろす先生と看護師さん数名を見上げながら固まりましたね。「泊まっていってもいいよ~?」と笑う看護師さんに、「いえ……帰ります」とフツーに返答。


ここまできて……!!?

んなことある?

マジ「なん…………だと…………」です。


先生の説明によると、ポリープの根の部分が広範囲で、きれいに無理なく切除するには、もっと高機能な設備の整った病院で治療した方がいい、とのこと。


最初からそっち紹介してくれ。


そんな思いをぐっと飲みこみ、荷物を持って病院を後に。

「遠方から来てもらったのに申し訳ない」と言ってくれた先生に、会釈しかできなかった器の小さいやなぎ。

治療できなかった……。どうしよ、せっかく仕事の休みも調整したのに。

ばっちり内視鏡検査台の八千円もとられ(当然ですが)、意気消沈してたのでした。


不幸中の幸いは、大腸の方に異常はなかったこと。

しかし、直腸のポリープの方に、がんの可能性もあると指摘されました。


痔だと思ったらポリープで、さらにがん……。

もっと早く病院行っていたら……。

たら、たら、という後悔と、行けなかった理由を挙げて「仕方ない」と言い聞かせるという、頭の中ぐるぐる状態で帰宅。


家に着く頃には日も傾いていました。

からだも心も空っぽ。

とりあえず食べました。

食べる元気はあったwww


ずっと絶食状態だったので、いきなり食べると胃がびっくりするもの。

本当はおかゆがいいのでしょうが、とにかく飢えていたやなぎ。レトルトご飯小盛サイズをチンして(冷凍庫には普段食べてる玄米しかなかった。消化は良くないそう)、お湯を注いで塩をふり、なんちゃっておかゆを作成。


それがまた、おいしかった。からだに優しく沁みる感じ。


大腸内視鏡検査当日は、胃腸をいたわるために消化のいいものを少量食べるのがいいそうです。軽く脱水状態になるからなのか、体力使うからなのか、そんなにたくさん食べたいと思わないです。

(下剤と炭酸ガスが腸内でくすぶって、ごろごろいうのも理由に入りそう)



翌日さっそく紹介先の病院へ。念のため朝食もおかゆです。


超混んでた。でっかい病院で迷いそう。

そして待った。予約しても待つとは言われてましたが……。

呼ばれてみれば、また心電図などの検査から。

一か月前に受けたばかりなんですけど……とゴネてみても無駄でした。(検査代六千円強、ああ……涙)


でもちょっと面白い場面もあったのです。

それは採血の場にて。


前回でも書きましたが、やなぎは血管が細く、下の方にあるため見つかりづらく、採血や注射の際に何度か針を刺されるのです。

たまに一発で済ませてくれる看護師さんもいるのですが、そんな人はなんとなくオーラでわかるように。


そして今回は、もう見た瞬間に悟った。

強ぇ……な、と。

銀行の受付みたいな採血場の机に座るその姿、ヤバかったです。

ドン!!!という効果音ついてる感じ。

歴戦の看護師。


「お願いします」と椅子に座り、袖を肘まで上げて差し出す。

前日の脱水の影響は、まだ自覚症状として残っている。

やなぎの腕を見て、相手の空気が変わったのがわかった。(マジです)

「ほう……」とでも聞こえてきそう。


すっと腕を圧迫するバンド(?)を取り出す歴戦ぽい看護師。

いざ対戦。


「アルコール(消毒)大丈夫ですね?」

「はい」

普通の看護師はここで、狙いを定めるために肘の内側あたりを軽く押しながら血管を探す。

しかしその看護師は違った。

一か所軽く触れたかと思うと、すぐに針先を向けたのだ。


さすがにちょっと息を飲んだ。

ちくり。

「はい、採っちゃいますよ~」

看護師の勝利宣言である。


管を通って行く己の血潮。

まじか。ハンパない。やっぱこの人テュよかった。

片手でボトルケースを手際よく変えていく。満たされた血液ボトルをカラコロ転がす様は、銃撃戦の最中、空になった弾倉をぽいぽい捨てていく強キャラそのもの。


「ありがとうございました」

上着を手に立ち上がる。うなずく看護師。

歴史に残る勝負であった。


その後は先生と話をしたのですが、その先生、前日の大腸内視鏡検査の場に居合わせた先生でした。なので話は早かった。


このポリープは放っておくといずれ確実にがんになると。

もう一部がん化している可能性もある、もう一度大腸内視鏡検査をして詳しく診る必要がある、とのことでした。


また大腸内視鏡検査やんのか……。

げんなりしたものの、その病院ではカメラの解像度などの機能がとても良いらしく、受ける以外の選択肢はなく。

翌日に受けることに。


今度は、自宅で下剤を服用し、来院するというケース。

専用食キットを買わずに、おかゆとか卵で済ませることで了承を得ました。


早朝から下剤を飲まなければならないため、その日は早く就寝。

ところが。

前日に飲む下剤、その効き目がハンパなかった……!!!

深夜に二回飛び起きました。

たまげましたね。間に合う感じのごろごろ具合ではありますが。

大腸内視鏡検査直後のせいもあったと思います。


そして翌朝は、早朝の爽やかな日光差し込むなか下剤を作成。

作成といっても、粉の入ったパックに1.8リットルの水(冷たくてOK)を入れ、よ~く振るだけ。

気合いを入れて、ぐいっとひと口。

そして目を見開いたやなぎ。


うっ!!うまい……!!!!!

うまい……だと……!!?


今度の下剤は「マグコロール」という製品名だったのですが、驚くことに美味しかったのです。

例えるならレモネード。

もうフツーのおいしいレモネード。

ジュースです。ゴクゴク飲めました。


後で調べたら、飲みやすい代わりに効き目がやや穏やかなようです。そのための前日の強め下剤だったのか……。

大腸内視鏡検査を受ける読者の方がいらっしゃいましたら、「マグコロール」を出されたら「勝った」と思っていいかもしれません。


もともとほぼ空っぽに近かったおかげか、すんなり腸のなかはきれいになりました。

といっても九回くらいはお手洗いに行ってます。今回はこまめに立って動いたりしました。


お腹が落ち着いたら出発。

途中、駅のホームでゴロロっとして一瞬「待て待て待て!!!」と慌てましたが、すぐに治まる感じで大丈夫でした。


病院では最初にCT検査を受けました。

人間ドックの写真でよく見る、トンネル状のあれです。

初めてだったのですが、なんか緊張しました。

息止めてバンザイして、回るドーム内の機械を見上げていると、どっか異次元に転送されるんじゃないかとかアホなこと。


スーファミ版ゼルダの伝説のオープニングで、生贄として司祭に飛ばされる姫たちが脳裏をよぎった。あれトラウマです。姫たちどうなったの?


その後、一日ぶりの大腸内視鏡検査を受け。

今回は鎮静剤打ってもらったのですが、なんか微妙でした。

苦しくないわけではないし、言われるようにウトウトもせず、でもなんか頭がぼんやりする、みたいな。


「やなぎさん、よ~くわかりましたよ~!」

とバリキャリ風女医先生の声が聞こえましたが、返事できなかった。


ふらつく足で、支えられながらベッドに案内され、30分ほどまどろみ。途中看護師さんが「組織(ポリープの一部)を採ったそうです。精密検査に出すので、また○○日にいらしてください。今日の問診はなしになります」と告げに来ました。


けっこう日が開くな……なんか審判待ちな気分……。

とぼんやりする頭で、今後のこととか考え。

帰る頃には閉院間際で、ロビーにはやなぎくらいしかいませんでした。ちょっと孤独感じちゃいました。ほろり。

(お会計一万七千円。ほろり)



年内に入院治療できれば、高額療養費制度でだいぶ医療費抑えられるのですが……できないかも。

入院するはずがカクカクシカジカ、と報告すると、職場の人たち、家族には「んなことある?」とツッコまれました。

ですよね!!!!

というわけで、やなぎ、審判待ちです。

続く……と思う!!



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「Ji」かと思っていたら直腸ポリープだった件で運命の判決待ちな件 やなぎ まんてん @hishiike

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