3.いざ!大腸内視鏡検査
手術までの一か月、リンゴやキノコなど、試しに食べてみた。
結果は「少量なら問題ないものもあるが、体調みつつ意識して選ぶ」という、それまでと変わらないものに落ち着いた。
りんごは一個まるまる食べると翌日ガスで死亡。半分なら便通がよくなった。
キノコ類は、エリンギは微妙、しめじ半分二日連続摂取は便通に良い結果になった。
など。
同じフォドマップ食品でも個人差あるようで、観察しながら食べることが必要です。
ちなみに、やなぎの天敵は玉ねぎ。一発KOリングアウトです。野菜炒めにスープに、かけがえのない旨味……大好きだった……(昔は平気だったのですよね)。
大腸内視鏡検査の前日はちょっと厳しい食事制限があります。
腸にものが残らないように、消化のいいものを食べること。もちろん食べすぎ厳禁です。
病院では、専用の検査食キットを買いました。
レトルトカレーのようなパッケージが三食分。メニューは3パターンから選べます。やなぎは「ビーフシチュー」をチョイス。
箱に載ってるイメージ写真を見るだけでは「これだけじゃ余裕で足りない……!!」でしたが、食べてみると意外にお腹がふくれました。
朝は「鳥そぼろ雑炊」、昼は「鳥そぼろとじゃがいもの煮もの」と「おかゆ」、夜は「ビーフシチュー」と「クラッカー五枚」。
これを夜七時までに食べる(看護師さんは、多少遅くなっても大丈夫と言っていました)。
味も、普通に美味しい。
水分に制限はなく、お茶やスポーツドリンク、コーヒーなども可。
果肉の入っていないゼリー、クリームがのっていないプリンなら、余分におやつとして食べてもOK。
そんなに苦痛はなかったです。
当日は朝から禁食ですが、水分は自由、粒とか果肉が入っていない飴ちゃんなら舐めても大丈夫。
前々日と前日に下剤を服用します。
錠剤タイプだったのですが、やなぎはこれが効かなかった……!
正確にいうと、効くまでに時間がかかりすぎたのでした。
服用後7、8時間で緩やかに効くらしいのですが、私はさらに倍!!の16時間後。前日に飲んだ下剤はたぶん、当日の下剤服用中に効いたか流されたか。
やなぎの腸、どんだけ。
当日は、2リットルの下剤水を2時間かけて服用します。
検査着に着替えるのですが、お尻側に穴の開いた紙パンツ(長めのボクサータイプ)を着用、その上からガウンを着ます。
今回は自分で脱ぐのか下ろされるのか、地味に気になっていたやなぎ。この紙パンツに目を見張りました。
なるほど、これなら履いたままカメラを挿入できるって寸法かい……考えたな。
下剤水は正直マズかった。
スポーツドリンクにコラーゲン系飲料を混ぜたような味。
最初は「思ったより飲みやすい」でしたが、半分ぐらいで急にしんどくなり。
「下剤に飽きたらこれ舐めて味変してね」と用意してくれた飴をいくつか舐めました。
コップ一杯飲んで10分休み、また飲む、を繰り返します。
半分ぐらいで最初の便意があり、平均で合計6、7回排便。薄い黄色の水状になるまで、下剤を飲みつつ別に水分も取りつつ、腸の中を空っぽにしていきます。
自販機もトイレもある部屋には、同じく検査をしにきた方々が10人くらいいて、「あたしは前回、2リットルできれいにならなくて、下剤2本目いったわよ~」などと、ほのぼの会話があったり。
服用中は立って歩くなど、からだを動かした方がスムーズに便意リズムが起こるそうで、NPCよろしく、ひたすら部屋を壁沿いに歩き続けるお婆さんもいたり。
テレビもあり、もちろんスマホを見ることもでき、快適ではある。
ただ、ちょっとアレなのは、排便4回目以降、看護師さんの目視による便チェックが必要なことでした。
相手はプロだ。恥ずかしがる必要はない。
わかっちゃいるけど、やっぱり居心地悪い。だって人間ですもの。
看護師さんのOKがでるまで、検査には進めない。
このプレッシャーと、疲れでだんだん皆無口になっていき。
やなぎはやなぎで、なかなかきれいにならない己の腸に焦っていました。
部屋の同志は看護師さんのゴーサインを獲得していき、ひとり、またひとりと検査室へ消えていく。
水槽の電動音と、テレビから何度も聞こえてくる「私、失敗しないので」という映画CМの声、部屋を歩き続けるNPCお婆さんのザッザッザッ……という足音だけが空しく響く空間。
気づけば服用開始から5時間が経過。
部屋にはやなぎひとりになっていました。
そっと近づく看護師さん。
差し出されたのは2本目の下剤。
まさかのおかわりでした。
マジやなぎの腸どんだけ。
2本目を飲み始めても便意はなかなか訪れず。
憔悴していたとき、看護師さんに声をかけられました。
座っていると便意にきづきづらいもの。とりあえずお手洗いに行ってみてと促しにきたのでした。
「あ、今、ですか?」
「うん、今。いっトイレ(たぶん聞き間違い)」
出ました。無事。
ちょっと微妙だったそうですが、まぁ大丈夫と、めでたくクリア。
いざ大腸内視鏡検査へ。
通された小さな部屋、ベッドに横になり、点滴のため注射される。
血管が細いらしいやなぎ。普段から、採血などでは2、3回刺される。下剤服用で脱水状態になったせいで血管がさらに細くなり、看護師さんを3人交代するという苦戦ぶり。
ベッドに寝たまま部屋を移動。
動く天井を見ながら、「おお……この視点、映画とかゲームとか、アニメでよく見る主人公目線じゃん!!」と半笑いに。
いよいよ検査は始まり、空っぽになった我が腸を見ながら「先生(おじいちゃん先生じゃなかった)、私の腸って長いんでしょうか」「んー、長め、かもしれませんねぇ」と話す余裕が当初はありました。
しかし次第に苦しくなる腹部。平常、腸はぺったんこで、検査の際は炭酸ガス(無害)でふくらましながら腸を観察するため、膨満感が起こるのです。
「あの……おならが……出そうで」
「大丈夫ですよ、出してください」
「でも、あの、下剤(水分)も出そうな感じが……!!」
「そういうもんなので大丈夫です。でも、あんま勢いよく出さないでください」
――どうやって!!!?
内心でうろたえるやなぎ。
放出する微調整をするには腹に力をこめる必要がある。しかしパンパンになった腹部には自我が届かない。コントロール不能だ。
そうこうするうちに、次第に遠のく意識。苦しさも薄れていく。
――あれ、自分生きてるかな?
「はい、終わりましたよ。お疲れさまです」
生きてました。
「えーっと、話聞こえてましたか?」
と先生。
看護師さん以外に先生が二人いて、あれこれ会話しているのはなんとなく聞こえていたものの、苦しさで途中からそれどころではなかった。つまり、聞いていない。
「いえ……あまり」
ぼんやりした意識で答えたやなぎ。
直後に先生の口から告げられたのは、天と地がひっくり返るようなものでした。
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