CASE 1 田中 裕太
―12月25日 18時頃―
「はぁ…来てしまったか、クリスマス」
「はい!楽しみっスね先輩!」
「私は心配だ。」
「いいか?今から私は良い子の元に向かう、余計な事はするなよ?」
「うす!」
そう言うと
「
「はい!」
「返事だけは良いんだよなぁ…。それじゃ、行ってくるよ!」
「はいっ!行ってらっしゃーい!」
サンタクロースがそりに座ると、瞬く間に空へとトナカイ達が走り出す。
夜の月にはサンタの影が映り、皆に今日が何日かを思い出させる。
「さてと、僕も行くとするかな」
故にそりも小さく、トナカイも一匹のみ。
まぁ、でも飛行速度が落ちるくらいで何ら問題はない。
「よし行くぞ、走れぇー!」
トナカイは渋々体に付いた雪を落とし、そりの上にちんまりと座る
長い長いクリスマスの始まりである。
◇
―12月25日 18時30分頃―
◇
◆
「いいか?お前はいつも考えすぎだ。よく子供達の事を観て、最初に思いついたプレゼントを渡せ」
「え?でも―」
「なんでもだ。子供たちのリストを渡しておくから、ちゃんと見ておけ」
「…うす」
◆
◇
「たしかこんなこと言ってたんだよな」
「う〜ん、大丈夫だと思うんだけどな〜」
…念の為、子供たちの詳細を確認しておくことにした。念の為だ。
先輩の言葉で不安になった訳では無い。
「なになに?今年最初の子供は小学3年生、9歳 男の子…
「9歳か、難しいな…」
(う〜ん、とりあえずゲーム機とか?)
(でも、もしかしたら―)
◇
◆
「最初に思いついたプレゼントを渡せ」
◆
◇
「いや、うん、ゲーム機にしておこう」
そうこうしている内に目的地が見えてきた。
少し階段が錆びついたアパート、ここの二階に
「よし、今年初仕事だ…頑張るぞ!」
◇
―12月25日 19時頃―
(おじゃまします)
ぬるりと窓から侵入すると、川の字で寝る家族から身を潜め、
(えと、そう!ゲーム機だな)
(……?ゲーム機ってどのゲーム機あげればいいんだ?)
今だとSwitchかPS5等が主流だろうか。
かのサンタクロースであれば
「小学生ならSwitchの方が皆と遊びやすくて良いのではないだろか?」
と考え適当なソフトとSwitchをプレゼントしただろう。
だが、
(今のゲーム機、えぇっと、先輩何か言ってたっけな〜?)
◇
◆
「ゲームボーイ?私もやったことあるよ」
「マジすか!何遊んでました?」
「やっぱ私はルビーかな」
「おお!僕サファイアやってましたよ!今度交換しましょう」
「おぉ、いいぞ!ケーブルどこ置いたっけ…?」
◆
◇
(…とりあえず、ゲーム機本体と通信ケーブルを置いて行こう)
そそくさと袋からゲーム機とケーブルを取り出し、包装をすると、靴下の中へと箱を押し込む。
(朝起きて…うん、きっと喜んでくれるぞ〜!)
驕り高ぶったまま、
「え〜っと?次の子供は―」
冬の夜は長い、クリスマスはまだまだ続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます