見習いサンタクロース

鈴鹿 葦人

CASE 0 見習いサンタ

12月25日のクリスマス、この日は今年1年を良い子として過ごした者の前にサンタクロースが現れる。


「じゃあそれ以外の子には?」


そう思う人が居ただろう。

もちろん彼らにもプレゼントは来る

でも、からは貰えない

来るのはサンタに成れない欠陥品

それが『見習いサンタ』





―12月24日―


「なんでこれができない!…吹谷ふきたに君!」


「……いやでもっすね、先輩?今回は僕も頑張ったんスよ?」


「いいや、頑張ってない!頑張れてない!相手の子がこのプレゼントで喜ぶと?」


事の発端は1時間前、クリスマスに向けての予行練習をしていた時だ。



「今回は小学1年生、女の子用のプレゼントを見繕ってくれ」


「分っかりました!」


吹谷ふきたに君、分かってるよね?」


「………?はい」


吹谷ふきたには首を傾げながら背中の袋をまさぐり、プレゼントを探した。


(小学1年生か〜、やっぱ『着せ替え人形』とかが良いかな?)


吹谷ふきたには袋の中から『着せ替え人形』を探し始めたが、次第に探す速度は落ちてゆき、最終的には手が止まった。


(待てよ、着せ替え人形なんてすぐ飽きるか?じゃあ化粧品か…?)


再び袋をまさぐる手が動き始めたが、数分後にはまた手が止まり…


(いやいや、待て?これで良いのか?)

(やっぱり前の方が良いな)

(こっちか?これ?どれ?)


などと悩み続け、結局答えを出すのに小一時間かかった。


「…うん、これだ!できましたよ!先輩!」



「だから配慮して、より良い物にしたんじゃないで―」


「良くなってない!」


「…へ?」


「しかも無駄な配慮がキモいし邪魔だ!なんでお前はプレーンな状態で渡せない!」


「プレーンな状態って、それただの着せ替え人形じゃないですか」


「いいんだよ、それで…合ってるんだよお前、最初だけな?」


「じゃあ何ですか?六法全書二冊は間違っているとでも?」


「間違ってるだろ普通に、小学生女児だぞ…字を読むことすらままならないのに」

「しかも二冊!あれ一つで全てを補えるだろ!要らないよ!」


「いや、それは、予備に…」


「その上キモいんだよ!なんか、もっとあっただろ!ゲームとか、占い本とかさぁ…!」

「朝起きたら枕本に馬鹿デカい本二冊で喜ぶ女児ってなんだよ、居ねえよそんなの」


「すんません」


「…はぁ、もう一回やるぞ」


「うす」



これが『見習いサンタ』、良い子以外の家には次世代のサンタがプレゼントの練習にやってくるのだ。しかし、今回の『見習い』は相当手がかかる様子


はたして明日、子供達は欲しいものが貰えるのでしょうか…?

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