第5話 潜入、心理の迷宮へ

「このセミナー、何としても潜入するしかないな。」


斉藤康隆はチラシを手にしながらつぶやいた。その表情はやや苛立ちを帯びている。セミナーの開催場所と日時は判明したものの、どのような形で行われるのか、そして「共鳴の会」のリーダー格がそこに現れるかはまだ未知数だ。


芹沢孝次郎は静かに頷きながら、手元のメモ帳にチラシの情報を書き込んだ。


「同感です。ただし、単に潜入するだけでは十分ではありません。このセミナーでは、彼らがどのような心理操作を行い、参加者にどんな影響を与えるかを見極める必要があります。」


「それはいいが、どうやって潜入するんだ? 俺たちがそのまま行ったら、すぐに怪しまれるだろう。」


斉藤が困惑したように芹沢を見つめると、彼は微かに笑みを浮かべた。


「参加方法はチラシに書かれています。事前にオンラインで登録する形になっているようですね。それなら、私が参加者として登録しましょう。」


「おいおい、本当に大丈夫なのか?」


「ご心配なく。心理学者としての知識を活かせば、私の正体を見抜かれることはまずないでしょう。斉藤さんは会場の外で待機していてください。私が中で何を掴むかによって、次の一手を考えましょう。」


セミナー会場の様子


3日後の夕方、都内のビジネスセンター。セミナー会場は、建物の中でも特に簡素な一室に用意されていた。入り口には、スーツを着た受付係が立ち、参加者一人一人に「参加証明」を確認している。


芹沢は用意していた偽名でスムーズに受付を通過した。部屋に入ると、すでに10名ほどの参加者が椅子に座り、無言のまま主催者を待っていた。皆、一様に疲れた表情を浮かべている。


「なるほど……。」


芹沢は部屋全体を観察しながら、椅子に腰を下ろした。この空間には、緊張感と期待感が入り混じっている。参加者たちは、ここで何かを得られると信じているのだろう。その心理を利用するのが「共鳴の会」の手法だ。


数分後、部屋の前方のドアが開き、一人の男性が姿を現した。チラシで見たリーダー格の男、白河悠人だ。40代半ばほどのスーツ姿、整った顔立ちに穏やかな笑みを浮かべながら、一人一人を見回す。その表情には、自信と支配欲が滲んでいる。


「皆さん、今日はお越しいただきありがとうございます。」


白河の声は低く、落ち着いており、それだけで空間が支配されるような威圧感があった。彼が話し始めると、参加者たちは完全に耳を傾け、まるで彼の言葉を一言も逃すまいとするかのようだ。


心理的操作の現場


「ここに来ている皆さんには、それぞれの悩みや苦しみがあることでしょう。しかし、それは変えられる。ここでの体験が、あなた方を新たな未来へ導くきっかけとなるのです。」


白河の言葉は、具体性に欠ける一方で、人々の感情を巧みに揺さぶる。彼は短い沈黙を挟みながら、参加者たちの期待感を煽るように話を続けた。


「大切なのは、自分を信じ、私たちと共鳴することです。その共鳴が、あなた方の人生を劇的に変える力を生むのです。」


芹沢は彼の発言を分析しながら、メモを取るふりをして記録していた。白河の話し方には、いくつかの心理操作の技術が隠されている。特に、希望と不安を同時に植え付ける「ダブルバインド」の手法が見て取れた。


「希望」:ここにいれば人生が変わる。

「不安」:ここを逃せば、今のまま変われない。


この組み合わせにより、参加者は彼の言葉を信じざるを得なくなる。


接触のチャンス


セミナーが終了し、参加者たちはそれぞれ黙々と帰路についた。白河はスタッフと話し込んでおり、周囲への警戒を緩めていない。芹沢は慎重に会場を後にし、建物の外で待機していた斉藤と合流した。


「どうだった?」


「白河悠人。間違いなくこの団体の中心人物です。彼の言葉には、心理的支配の要素が満載でした。ただし、表向きには一切の違法性が見当たりません。」


「つまり、まだ決定的な証拠は掴めていないってことか?」


「ええ。ただ、セミナー中にいくつかのキーワードが出てきました。『共鳴する力』『未来を変える体験』など。これらは、次の勧誘や実際の行動に繋がる伏線だと思われます。」


斉藤は腕を組み、深いため息をついた。


「くそっ……何を迎えに行くのか、その手掛かりはまだないのか?」


芹沢は微かに笑みを浮かべた。


「手掛かりはあります。次に私たちがすべきことは……。」


次回に続く!


白河の心理操作の全貌を暴くため、芹沢と斉藤が次に取るべき行動とは?

「共鳴の会」が次に計画している動きとは――。読者の皆さんの選択で物語が進みます!


読者選択肢

1.白河悠人に直接接触し、彼の言葉から真意を探る

2.セミナーで出会った参加者の一人に接触し、内部事情を聞き出す

3.次回のセミナーに再度潜入し、さらなる証拠を集める


投票締切は明日7時まで! 応援コメントに選択肢番号と理由を記載してください。

あなたの選択が、芹沢たちの次の行動を導きます!


読者へのメッセージ


心理学的な手法を駆使して人々を誘導する「共鳴の会」の恐ろしい実態が明らかになりつつあります。次回の行動が、事件解決への鍵となります。どの選択肢が最も有効か、ぜひあなたの推理をお聞かせください!


物語の次回展開をお楽しみに!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月12日 17:00 毎日 17:00

【読者参加型小説 毎日投稿】共鳴の罠――読者が暴く真実 湊 マチ @minatomachi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画