第5話 1人の正義
屋敷から少し離れた森の中
『いつになったら…あいつは手紙をよこすんだ…シュルティ! 』
______________________数日前、ジアーロ家にて
「グリゼルダさん。 あれから手紙って…」
「バルム…一通もありません。 きっと環境が優れないのでしょう。 」
「…じゃあ、俺が様子を見てきます。 」
「…何を言っているんですか? あまりにも危険です! それに魔族に敵意を向けたら…」
「わかっています。 敵意は向けず、シュルティの様子を見てくるだけですので、どうかご理解を。 すぐ戻ります。 」
そう言って部屋を出ていった。
__俺は孤児だった
それを救ってくれたのが、ジアーロ家だった
______________________
今から10年程前に、俺はジアーロ家という一般民族に引き取られた。 貴族が孤児を引き取る理由は何となく想像がつく、だが一般民族が引き取る理由がわからなかった。 きっと…同情だったのだろう。
そう思っていた。
「おかえりなさい! あなたがバルムお兄ちゃんですよね? ようこそ、ジアーロ家へ! 」
家に入って出迎えてきたのは、見たこともない綺麗な髪と目をした4歳の子供だった。俺とは6歳差で、これから上手くやれるのか少し不安になった。
「困ったことがあったら、私かお母様に何でも言ってね! そうだお母様! 今日はお母様の作るシチューがいいと思うのですが、いかがでしょうか? 」
「私は今、貴方に何か聞きましたか? 」
この言葉を聞いて、俺は戸惑った。
俺を引き取るときは優しい言葉をかけてくれたのに…実の娘に対してはとても厳しいのかよ…俺も、そうなるのか…?
だが俺に対してはとても優しく、『母』という言葉にふさわしい人だった。
1年たって俺は勇気を出してシュルティに聞いてみた。
「なぁ…何でグリゼルダさんはお前に厳しいんだ…? 」
するとシュルティは満面の笑みで答えてくれた。
「私がお母様にお願いしたんです! 」
「…え? なんでそんなこと…? 」
「だって今のうちから礼儀を体に叩き込まないとぎこちなくなりそうなんですもの。 」
俺はその言葉を聞き、俺は色々な感情が襲ってきた。 でも一番感じたのは、尊敬だった。
「私は、こんな風に生まれてしまって…いつか面倒事を巻き込んでしまう気がして…ですからすぐに外に出てもお母様が恥じぬようにと思いまして。 」
「…そう、だったんだ。 」
「お母様、私のわがまま聞いてつらそうなんです。 本当なら私にもお兄様の様に接したいはずなので…めいいっぱい甘やかさせてください。 私からもお願いします! 」
「…家族思いだな。 わかった、グリゼルダさんのことは俺が守る。 もちろん…シュルティのことも全力で守る。 だからお前は俺に甘えてくれ。
俺を救ってくれた恩返しだ。」
俺はこのとき、ジアーロ家と自分自身に誓った。
"家族"を全力で守ると。
______________________
現在
『魔族の数、強さ、そして今シュルティがいる環境を知りたい。 国の奴らはあいつをただの犠牲としか思ってない…なら俺はジアーロ家として妹を護るだけだ。 』
永遠に続く命 むおだ はや @mu1015
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