第2話 古い屋敷

 翌日


「ジアーロ・シュルティ…だったな。 今から転移魔法を使う。 俺のそばに来い。 」

「かしこまりました。 」


 すると国の離れにある古い屋敷に転移した。


「ここは…」

「お前も聞いていただろう。 お前のところの国王にもらったんだ。 いいからさっさと入れ。 」

「か、かしこまりました。 」


 屋敷に入ると魔王軍のうちの1人が迎えてきた。


「おかえりなさい。 屋敷の掃除が丁度終わったわよ。 あら、その子が噂の…? 」

「ああ、悪いがこいつを部屋に連れてってくれ。後、フランはどこにいる? 」

「わかったわ。 フランは確かドナを追いかけてるはずよ。 」

「わかった。 じゃあ頼む。 」

「よろしくね、私はナトーア。 あなたの名前は? 」

「わ、私はジアーロ・シュルティと申します。 これからよろしくお願いいたします。 」


 礼儀よくお辞儀をし、相手の様子を伺っていた。

 そしてナトーアは少女を部屋に案内し、話をし始めた。


「ごめんなさいね。 私たちもこうなるとは思っていなかったの。 まさか1000年に一度が今だとは思わなくて…魔王様に変わって謝罪するわね。 」

「いえ、全然大丈夫です。 」

「…お腹減ってるかしら?もしよければ何か食べ物を持ってくるわよ? 」

「え、えっと…」


 すると部屋に響き渡るほどの大きな音で少女の腹が立った。


「うっふふ。 何か探してくるわね。 」

「すみません…」


 ナトーアが部屋を出ていくとシュルティは部屋を探り始めた。


『盗聴器とか録画装置は無さそう…まあ流石にないか。次に確認することは…』


 _______________________

 数日前


「シュルティ、今話せる? 」

「お母様、何の御用でしょうか? 」


 シュルティの母親が真剣な目で話し始めた。


「…勇者御一行様が魔王軍に敗北してしまったの。 」

「そんな…勇者様たちが? 」

「ええ…でも国王様が魔王との交渉に成功したらしく、助かる可能性があるの。 」

「…それはどういった内容なんですか? 」

「金髪黄眼…1000年に一度生まれる逸材を連れてこい、と。 」

「…そういうことでしたか。 」

「これは世界を救うために仕方のないことなのはわかるわね。 だからあなたが魔王のもとに行くことは絶対なの。 」

「…そういうことでしたら私、行きます。 皆に死んでほしくないですから。 」


 すると母親はシュルティを抱きしめ涙を流し始めた。


「お母様…? 」

「行ってほしくない…いつかこの日が来てしまうかもしれないとはわかっていたわ。でも…こんな事はやはり望めないわ。 」

「お母様…私を育ててくれてありがとうございました。 私のわがままのせいでお母様を苦しめてしまって本当にごめんなさい。 ジアーロ・シュルティ、先月で14歳になりました。 まだ大人とは言い難いですが、精一杯務めを果たしています。 」

「シュルティ…いい? あなたの務めは必ず生きること、そして…魔王軍を探ることよ。そして何かわかったら手紙を出す。 これが国王様からの伝言よ。 」

「…わかりました。 お母様、大好きです。 私はお母様といれてとても幸せでした。 」


 2人は強く抱きしめ合って、涙を共に流していた。

 それからシュルティは国王に呼び出されて今現在に至る。

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