第三話『伸びよ仲良く』

 〈ユメ〉は、華乃かのと一緒に育った。

 ふたりは遊ぶ時も、食べる時も、お風呂の時も、お昼寝の時も、ずっと一緒だった。


 小腹を空かせば、揃って母の元へ、おやつをねだりに行く。

 〈ユメ〉は、華乃用の、犬が食べてはいけないおやつを横取りしようとして、華乃を泣かせることもあった。

 ただし、おやつがの時は、仲良く歯に赤い果肉をつけた。


 芝生の庭に出れば、揃って父の元へ、ボール遊びをしろとせがみに行く。

 〈ユメ〉は、華乃用の、テニスボールを強くかじってダメにしてしまい、華乃を泣かせることもあった。

 ただしそのあとで、華乃は〈ユメ〉を枕にして、仲良くスヤスヤ昼寝した。


 〈ユメ〉は、まるで自分のことを人間と思っているかのような振る舞いをした。

 しかし、夜、寝るのはいつも、庭の小屋だった。


 仔犬と人の子は、共に伸び伸び成長してゆく……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る