第1話 プロローグ ミエラ
辺りは暗く一面を木々に囲まれた中、窓から微かに明かりが漏れ出す家に2つの人影があった。1人は大柄で痩せ細り、銀色の長い髪を後ろで縛りあげ、若い時には端正な顔していただろうが、現在は疲れた顔をした中年の男性と男性の身内と思われる同じく、長く銀色の髪を肩まで伸ばしてるまだ年端もいかぬ少女
男性は木製で作られた年季の入ったベッドの上で上半身だけ起こして、疲れた目ではあるが、優しげに少女見つめ耳を傾けていた。
少女はそんな男性の様子を気遣いながらも自身の話を上手く伝わるよう一生懸命に身振りを交えながら話していた。
『お父さん、私本当に見たんだよ!神様!それでねお願いしたんだよお父さんの身体が良くなるように、、』
話を聞き終えた、父と呼ばれた男性はそんな娘の話を信じてはいなかったが、自身の為に健気な願いをした娘に優しげに
『そうか…今日お父さんが元気なのは、ミエラがお願いしてくれたからか、ありがとう。でも神様とは何処で出会えたんだい?』
そんな父の言葉に嬉しくなりミエラと呼ばれた少女は出会った神について父に詳細を話し始めていた
『うん!神様は森の奥にいたんだ、最初は何か大きな生き物がいると思ってお父さんに言われたよう森で生き物にあった時のように気づかれないして、逃げようとしてたんだ、そしたらね神様から声をかけられたの、凄い怖かったけど、近くにいって…』
父はその話を遮り、失望を混じえた表情で少女を咎めた
『森で出会った生き物が言葉を話したからといって近づいたのか、?お父さんはミエラに言わなかったかい?この世には人語を操り騙す、生き物が沢山いる事をなのに、、』
ミエラはそんな父の失望を挽回できるように、なるべく早く自身が何故危険を冒してまで近づいて言った理由を話し始めた
『ごめんなさい…でも近づいて言ったのは話しかけられた言葉が人語じゃなかったの…お父さんが教えてくれた古代語だったの、だから大丈夫だと思って近づいたの…』
そんな娘の弁解を聞きながら、父は一瞬頭に血が昇ったのをすぐにコントロールして自身を落ち着かせた
娘に、古代語を話すのは神と呼ばれる者達だけではない、其れこそただ欲望のままに生きる魔物達も言葉を使い、そして神と呼ばれる存在もけして良いものだけではない
ただ自身の知識を教える際にその事を話していなかった
のは自分だ
そして他愛のない話で古代語の話しをした覚えはあるが、教えた訳ではなかった
その中で古代語を教えてくれた言う娘に、嫉妬と誇りの気持ちが新たに湧いてきて、娘に発した言葉は
『そうだな、、それでどうしたんだい?』
情けないものだった、褒める事も謝罪もできず、ただ逃げ道を求めるよう娘に続きを促した
ミエラはそんな父の気持ちは分からず叱れなかった事に安堵し、また父が許してくれた思い続きを話し始めた
『うん!それでね私も、全部の言葉はわからなかったけど願いと誓いだけは、わかったの、それでね気になって近づいたら大きかった身体が私より小さい身体になってたのモノグくらいの』
娘の話を話を聞きながら、父は娘がモノグと呼んだ生物について考えを巡らせていた。
モノグとは大人の足ぐらいの大きさの生物で、毛のないウサギのような胴体にアリのような顔を持つ生き物である、何故、娘は数多くいる生き物の中でモノグに例えたのか、そして神と呼ばれた生き物について
最初は娘が自身を元気つけてくれるよう、話を作ったものだと考えていた、何故なら自身と娘がいるこの家がある、レミアの森は魔物だけでなく他の神が存在できない、土地なのだから、、
今や娘の話を聞く父は、先ほどの嫉妬や優しさ等の感情等は消え、表情は険しくそして、いくつもの考えを巡らせていた
『でね神様はなんていうか虫みたいな顔してたの、大きな眼の中にいっぱいまた眼があって、、それで身体はウサギみたいでだからモノグみたいだったの、だから私も最初はやっぱり神様じゃないかもって思っちゃって』
ミエラは神様の特徴を話しつつバツの悪い顔しないよう隠しながら話していた、自身が神様を気持ち悪いと思ってしまった事をさとられないように
そんなミエラの気持ちは、別の事を考えていた父には気付かれず父はそれより先の話をミエラに促していた
ただし、そこには疲れた目で娘の話を聞く優しい父ではなく、その目には恐れと闘志を宿し表情は険しかった。
ミエラは空気が変わり目の前にいる人物が、いつもの優しい父でないという不安に駆られながらも、先を促す父の反応に話を続けなければいけないと思い、話を続けた。
『神様はその場で動かなくて、私が名前を聞いたのそしたら』
娘は一呼吸を置いて父に神の名をつげた
『ノストールって言ったの』
静寂が部屋の中に訪れた、それは父の醸し出す雰囲気もあるがそれを感じとったミエラもその要因であった
父はその名を娘から受けて、娘があったのは本物だと確信した
世界を生んだ神は二つ分かれた
分かれた神はさらに、自身を離して繋がりを生んだ。
離された神々は様々な、生き物や事象や概念を生んだ。
昔から伝わる神と呼ばれる者達が出てくる本やもの語りにはある一文だ娘が話したノストールの名は父は深く知っていた。
歪みのノストール
病の神 アスケラから生まれた神であり、そして父や娘のいる大陸にいるはずがない神だった
本来、神々は自ら作った生命や事象にのみその姿を映し父や娘のいる、自ら作った世界に現れる事ができる。
そうして神の権威が及ぶ土地をセイクリッドランドと呼び、そこには他の神の権威が及ぶ事はできなかった。その理由について神々と対話できた者達もいたが父の知る限りそういった詳細はなかった
それが今になって自身や娘のいるこのレミアの森
豊潤のレミアが権威を振りまく土地に現れたのだ、、、
黙り込み思案する父をみてミエラも口を閉ざし、部屋には沈黙が流れていた、その重苦しい沈黙は天井から下げられている部屋一面を照らしていた,光石の入ったランプに何処からか入ってきた虫がぶつかる音ともに破られた。
父は音に気づき同時に目の前にいる娘の表情をみて、申し訳気持ちになった、自身を喜ばせようと話し始めた娘は今や不安いっぱいの顔で自身の言葉を待っていたからである。
『ミエラ、、ごめんよ、お父さんはいまどんな神様だったのか自分の頭の中をずっと探検していたんだ、、それで名前を聞いてどうしたかお父さんは続きが聞きたいな』
精一杯優しく、娘の不安を消せるよう父は話しかけ
ミエラは安心したように続きを話し始めた。
『うん、それで神様は何かずっと私に話してたんだけど私も全部の言葉がわかるわけじゃないから、、それでも一生懸命聞いたの、そしたら神様は自分を信じて欲しいって、そしたら、願いを聞いてくれるって言ったの、私はだったらお父さんの身体を良くしてくれるようお願いしたの』
ミエラは嬉しそうに話し終えそして父を見た、きっと話し始めた時のように自分を優しい表情でみてくれると思って、、しかし父の顔は予想とは違いその顔は話し始めた前より酷く疲れて、そして目には悲しみが宿っていた。
父はミエラの話し聞き、もう自身が長くない事を悟っていた、父がよく知るノストールがこの大陸にきて、レミアの土地に現れた事実が何よりだった。
レミアの森にきてこの土地でなら自身の身体を癒し、ゆくゆくは稀代な魔法使いになれると考えていた大事な娘の成長を見守れると思っていた。しかし今や自身の想像つかぬ事柄が進んでおり、今いる土地はもはや安息の地でなくなっていた。
何より気がかりなのが、娘がノストールに誓いを立てた事だ。
博識な娘であり少なくともノストールの外見に好印象を持っていなかったはずが、ノストールを信じたのは恐らくノストールの歪みの力だろう
世には様々な大陸がありとあらゆる種族が犇めきあっていたが、今や大陸の結界により、外の世界はどうなっているかも分からない、呪われた大陸アルベスト
そこから来た神ノストール
父の考えは既に決まっており何とか愛しい娘だけでも、現在自身らが置かれてる状況から外せればと考えていた。
そしてこの土地から出れば、自身の命は続かないだろうがそれも仕方ないと
結論を達したと、すぐに準備に取り掛かりたいがまずは
夜もふけっており娘を寝かしつけようとした矢先異変に気づいた。
目をよく凝らして部屋をみるとあちら此方に黒いシミがありそれらは動く事なく部屋に存在していた、そしてそれが異質だった。
何故ならそれはシミではなく、虫だったのだ、そして微動にせずに部屋におり何かを待っているようだった。
父は冷静を装い娘を部屋からだそうと声をかけようとした瞬間、神の声を聞いた
〘願いを叶えよう〙
古代語で発されたその言葉の真意を父は身をもって知ることになった。
部屋の虫達は一斉に父に向かって飛翔した
そして娘の悲鳴を聞きながら父は自分の中に虫達が入ってくるのを感じとった、そこから父の意識はなくなった。
ミエラは父に群がる虫達を何とかしようと精一杯払い除けていたが何処から来ているのか、払い除ける数より群がる虫達の数には逆らえず、ただ足掻くことしかできないでいた、しかしそんな時間も長くはなかった。
それまで群がっていた虫達はまるで糸がきれたように崩れ落ち虫達の群れ中からいつも見ていた父の姿があった。
父の身体は傷一つなく、そんな違和感よりミエラはただ父の姿がある事に安堵して必死に呼びかけた。
『お父さん…!お父さん…!!』
何どか呼びかけていたミエラの声に反応してかまたは別の理由か父はゆっくりと目をあけ声を発した
『あぁりぃあぁがかとぉう、ミミエラァ』
目をあけ、声を開いた父は異常だった。
生気のない眼に呂律の回らない声、そしていきなり立ち上がり、地面に手をつきそのまま動き始めた。まるで獣のようにあるいは虫のように、、
ミエラはそんな父をみて恐怖や嫌悪感を抱くと共に父の身に起きた事が弾けるように頭の中で紐づいてしまッた。
自分のせいかと、自身が誓ったからだと。
ノストールは確かに叶えたのだ父の身体を良くした、それは理解しがたい願いの代償だが確かに、父の身体を良くなり動きまわっていた。
何故自分は急に現れた異形の神にあんなお願いをしたのか深い後悔と悲しみに目から抑えきれない感情として涙が溢れていた、そんなミエラの耳に忘れもしない声が聞こえてきた。
そしてその声はミエラに向かいしっかりと
『お前の誓いを叶えたぞ』
ミエラはそんな声を聞いてまた深く絶望した、やはり自身のせいかと、そんなミエラには語りかけてくる声に返す意欲もなく、ただ話される声に耳を傾けるだけになっていた。
『私はお前の誓いを願いを叶えた、ならばお前は代償を払わなければいけない、私は美しいお前の身体が欲しい、才ある脳がほしい、お前の全てが欲しい』
その言葉と共に目の前には、モノグの見た目をした神ではなく、大人の人間より頭二つ大きな生き物がいた、その見た目はコウモリのようだと思った、ただ頭は3つあった。虫の顔、コウモリの顔、そして美しい女性の顔。
何もかも異常な部屋の中でミエラは、それが生存意思なのか、それとも復讐心なのか自身に向けた怒りなのか分からない感情の中、魔法を唱えた。
それが、始めて他に向ける攻撃の魔法だった
ミエラの周りには炎が舞い、瞬く間にミエラを中心とした渦となり辺りをふきとばした。
渦が消えた後に残ったのはミエラとノストールだけだった、異形に変わった父も、家も、渦に焼き飛ばされた後でもノストールは目の前に存在していた、そしてノストールはまるで何でもなかったように羽を広げ、羽に隠されていたら8本の手でミエラを掴もうとした
しかし伸ばした手がミエラを捕らえる事はなかった。
深い霧がミエラを包み、同時にノストールがその動きを止めたからだ、そして森の神は呪われた神の前に姿を現した。
ミエラは振り返り自身の後ろに立つ、レミアを見上げた
美しい女性の姿をした神は、傲りでなければ自身に似ていると思った。
レミアは感情なく、ノストールに向け言葉と同時に力を振るった
『去れ』
短い言葉共にノストールの身体に向かって風が吹き、何処から伸びたか分からない木々の根が、土を這いノストールの足元から羽根までを覆っていった。
ミエラはその光景を前に自身の意識を保つのに必死だった。魔法の影響かそれとも二人の力なのか自身の意思とは違い身体から意識が遠ざかっていった、
そしてその根がノストールの身体全てを包む前にミエラはノストールがレミア放った言葉を聞いた。
〘彼の地で人は神を生み出した〙
ミエラは今度こそ意識を失った。
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