第2話

「おい、例の写真、ネットでバズってるぞ」

「ええ、こんなにうけるとは思わなかったわ」

「いやいや、削除すると言ったのに」

「いいじゃない。うけてるから」

「うけてるから、まずいんだよ」

「なんで?」

俺の彼女はネット大好きなくせに、ネットの怖さをまるでわかっていないのだ。

俺がそう説明したが、やっぱりわかってもらえない。

バカかこいつは。

「ああっ、もういいよ!」

そう言って、俺は電話を切った。


その翌日のことだ。

そのとき俺は、パソコンでネットを見ていた。

例の写真はまだ、ネット上で話題になっていた。

――うーん、まだトレンドに乗っているなあ。

その時見えた。

パソコンの画面上の先、部屋の壁からなにかが飛び出しているのだ。

――なんだあ?

最初、それがなんなのかがわからなかった。

見ていると、それは壁から徐々に出てきている。

そして気づいた。

それはあの写真に写っていた女の首だったのだ。

――ひえっ!

俺は驚きのあまりに腰が抜け、椅子から動けなくなった。

腰が抜けるなんて、生まれて初めてだった。

本当に一ミリも動けない。

そうするうちに首は壁から完全に出て来て、ゆっくりと俺の方に向かってきたのだ。

――ひいいいいいいっ!

首は俺の方に近づいてきたが、俺のことは全く見ていなかった。

首が見ていたのはパソコンだった。

そして首はパソコンの画面の中に、すっと消えた。

――なんだいまのは。

なにがなんだかわからない。

わかったのは、山で撮られた女の首が、とんでもないことに、俺の部屋に来たと言うことだ。

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