第1-2夜 英雄伝説開幕

 血と火薬の匂い、弾ける轟音、重い荷物、悲鳴の狂奏曲……

 どうやら俺と少女は地獄に来たらしい


「敵が突っ込んで来るぞーーー!耐えしのげー!!」

「「「うおおおおおおーーーー!!!」」」


 あのなあ、いきなり最前線に送ることはないだろう。リスポーンした瞬間頭に銃弾が飛んできたらどうすんだよ。


「問題ない。私があなたに防護壁を施してあるから。」

「本当に大丈夫だよな?銃弾が飛んできた瞬間解除とかするなよ? 」

「しない。あと死んだら夢が終わる。」

「それは先に言ってくれ! 」


 と、2人で口論していると、数人の敵兵が突っ込んで来た。


「おい、そこの2人!さっさと戦わんか!」


 上官にこれ以上怒られるのはごめんだ。こっちもなんとなくこの雰囲気に慣れてきた。舞台は整った。いざ勝負、勝負!

 トリガーに力を込めたその刹那、耳元で弾ける小爆発とともに、銃口が火を噴き、緋色に染まった弾丸が次々と敵の首を狩らんとして飛んでゆく。

はずだった……

 ただの男子高校生にまともな銃火器の扱いなど出来るはずもなく、銃は暴れ馬のように動くのみ。銃弾は気分の悪い曇り空に消えていった。華々しい伝説の始まりを予定していた俺にとってはいろんなダメージが積み重なる。もうやめて!とっくに彼のライフはゼロよ!


「情けない。」

「うるさい!そっちはボム投げるだけじゃないか」

「あなたの望んだシナリオ通りにしたつもり。」


 確かにそのとおりである。俺は銃を撃つ役割を望んでいた。さらに、手榴弾と言えど、タイミングを誤れば多くの味方を巻き込みかねない。でも悔しい。


「反動ゼロにできるとか無い? 」

「ある。望むなら付与する。」


 こうして、反動をゼロにしてもらった俺は、もう一度敵に的を絞り、トリガーを引き、この銃が唸りを挙げる。今度は一気に3人を撃退した。あまりの興奮に、俺は撃つのが止まらなくなってしまった。

 血の匂いが、火薬の匂いが、爆発音が、悲鳴が、今の俺にとっての麻薬に変貌し、俺を殺戮マシンに仕立て上げてしまった。

 ガコンッ……

 叩かれた。敵か?いや今の俺がやられるわけがない。そこには1人の温そうなガキがいた。このクソガキが床尾のところで叩いてきやがったのだ。俺は彼女を蹴飛ばした。そして拳銃を向ける。


「これ以上の戦闘は危険。現実での精神に異常をきたす可能性がある。今すぐ戦闘を停止せよ。」

「今気持ちいいとこやってんだよ、黙ってろよクソガキ!」

「分かった。直ちに対象意識を書き換える。」


 ガキは高速で飛びかかって来る。しかし、先に構えていた俺のほうが有利だ。俺は構わず撃つ。だが、直後俺の意識は奈落の底へ落ちていった。












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