2章 新たなる戦剣の誕生4

朝早く、父は目を覚まし、家の皆に挨拶をした後、顔を洗い、

さっぱりとした気分になる。

一家で揃って朝食をとった後、父とお爺さんお婆さんの3人だけがその場に残った。


「写真を貸してくれるか?」

とお爺さんが尋ねる。

父は頷きながらカバンから家族写真を取り出し、手渡した。それを見つめたお爺さんとお婆さんはゆっくりと立ち上がる。


「刀匠着を持ってきなさい。」

とお爺さんが言った。


3人は静かに工房へと向かった。工房の中に足を踏み入れると、古びた木材と金属の香りがただよい、長い歴史を物語っていた。


「ここに座って見ていてくれ。」

とお爺さんが言い、父は用意された椅子に腰を下ろした。


お婆さんは道具棚から、小槌こづちを5本取り出し、それぞれに異なる属性が宿っている様子だった。

一方、お爺さんは壁際に立てかけられた小槌こづちを手に取る。

「昨日のうちに鍛錬たんれんまでは終わらせてある。」

とお爺さんが静かに口を開いた。その言葉に、父は緊張を覚えつつも、静かに頷いた。

お爺さんは小槌を手に取り、父に向かって重々しく言った。


「ここからは炉に入れることなく、造込つくりこみからを行う。」

父が疑問に思う間もなく、お爺さんは続けた。


「通常、鉄は熱を加えながら鍛えるものだが、コレはなぜか熱を嫌がっているようだ。」

お爺さんは5属性の小槌こづちを見つめながらさらに説明した。

「本来は1つの属性だけで打つのが通例だ。しかし、これは特別だ――5つすべてを必要としている。」


今度はお婆さんが口を開いた。

「私の感覚が教えてくれるのよ。コレが望む順番で属性を打ち込む。それを守れば、失敗はないわ。」


お爺さんは頷き、静かに続けた。

「形については、婆さんにすべてを伝えている。あんたはそこに居て見守っていればいい。」


2人は工房の中心で向き合うように座った。


お爺さんは手に持つ小槌こづちで「コレ」にそっと触れ、軽く「カン」と音を立てて優しく叩く。

それを受け、お婆さんは迷うことなく、その場所を正確に打ち込んだ。

お互いに声を発することはない。ただ、経験と直感だけで連携し、叩く場所とタイミングを完全に共有しているようだった。

お婆さんは時折小槌こづちを持ち替え、異なる属性の力を加えながら作業を続けた。


父は響く音のリズムに耳を傾け、不思議と形が変わっていくその光景に見入っていた。

魔法のようなその技術は、言葉を超えた職人の域だった。


どこかの段階で、お爺さんは目を閉じ、静かに集中していた。耳と手だけに意識を集め、打つべき場所を正確に見極みさだめていく。

その間も、工房には一定のリズムで音が響いていた。

やがて、叩かれるごとにお婆さんの小槌こづちが一つ、また一つとひび割れ、ついには壊れていく。

最後の小槌が砕けたとき、2人は自然と手を止めた。

お婆さんは静かに椅子に腰を下ろし、疲労をにじませながらもどこか満足げな表情を浮かべている。

お爺さんは目を開け、『真っ黒に輝く刀』を見つめた。そして小さく頷く。

最後の工程として、お爺さんは黒い石を取り出し、つばの部分に慎重にえた。

小槌こづちで優しく叩くと、石は刀と一体化するように吸い込まれ、完全な形をなした。

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