2章 新たなる戦剣の誕生3

父は、研究を重ねた結果、1年数か月をかけてその鉱石が玉鋼と同等の性質を持つことだけが判明した。

政府に問い合わせたところ、名古屋神宮系列で疑似戦剣ぎじせいけんを作れる鍛冶師が長野県にいると紹介を受ける。

その後、父は楓に電話をかけ、巧太郎と榛奈の近況を聞く。最後に楓は

「私のすべてを教えた」

と言い、電話を切った。続けて康介に電話をし、巧太郎を藤女子学院に入学させる話を進めた。


翌日の準備を整える中、机の上に置かれた家族写真を目にし、それをカバンにしまう。

次の日、父は紹介された鍛冶師に会うため、長野県へと向かった。


父が大きな屋敷に到着して、

「すみません」

とチャイムを鳴らして数秒待ち、ドアを開けてもらった。

「名古屋神宮から紹介を受けてきました。」

父の言葉を聞くと若い青年は微笑みながら言った。


「どうぞ、こちらへ」

と案内し、部屋へと導いた。


部屋に入ると、お爺さんが静かに座っており、父は改めて挨拶をする。

お爺さんも軽く

「おう!」と返す。

その後、家族が集まり、真剣な話が始まる。

父はカバンから手に持った鉱石を取り出し、テーブルに置いた。


「これを見てほしい」

と言い、その異常な性質について話し始める。

鉱石は黒く変色し、まるで光を吸い込むような不気味さを持っていた。

お爺さんがその鉱石をじっと見つめ、手に取って触れた瞬間、彼の表情が硬直する。

しばらく黙っていたが、やがてその重みを感じ取ったように、静かに言葉を漏らす。


「これは…ただの鉱石じゃない、何か温かさを感じる。」

お爺さんは鉱石を手に取り、その温かな感触に驚きながら言った。


「こんな感覚は初めてだ。何かが秘められている。」

その言葉が部屋に静かな緊張を生み出し、他の者たちはその温かさに何か異常を感じ取り、次第に慎重な表情を浮かべ始めた。


お爺さんは静かに語り始めた。

「私はかつて、国宝として名を馳せた鍛冶師だった。名古屋神宮に奉納された刀を作ったこともある。

その刀は、ただの武器ではない、神聖なものとして扱われている。」

彼の目に少し誇りの眼差しが宿る。

「そして、様々な疑似戦剣ぎじせいけんも作った。これこそが、私が最も自信を持って作った作品だ。」

その言葉に、部屋の空気がさらに緊張感を増した。


お爺さんはその重い口で、深刻な表情を浮かべながら言った。

「この鉱石を使って戦剣せいけんを完成させれば、必ず命を落とすことになる。」

その言葉に、部屋の空気が一層重くなった。彼は続けて言った。

「わしは百年生きた、もういはないと思っていた。息子や孫に技を託し、満足していた。

だが、この鉱石を手にしたことで、今、いが残ってしまった。」

その言葉には深い悲しみと覚悟が込められていた。部屋の空気は一層重く、誰もがその言葉の意味を噛みしめた。


お爺さんは立ち上がり、深く息を吐いた。

「これを打つことに決めた」

と、決意を込めて言った。そして、お婆さんに向かって言った。

「わしに力を貸してくれ。」

その言葉には覚悟と頼る気持ちが込められており、周囲の空気が一層緊迫した。お婆さんは静かに頷き、その決意を受け入れた。


孫と息子はお爺さんの決意に胸が痛み、涙を流していた。

お嫁さんたちはその姿を見て、お婆さんを優しく抱きしめ、家族の絆と共にその重い決断を支えていた。

静かな涙とともに、家族の覚悟が集まっていた。


お爺さんは明日の朝に作業を始めると告げ、家族は涙をこらえながら仕事場へ戻った。

お爺さん、お婆さん、そして父が残り、お爺さんが

「使い手の写真はあるか?」と尋ねる。


父は「あります」と言いながら、カバンから家族写真を取り出した。

お爺さんとお婆さんは家族写真に写る妹を見て、

「かわいい子じゃないか」

と言った。父は慌て驚き父は息子の方を指差し、

「息子が使い手です」

と説明する。お爺さんとお婆さんはその言葉に驚き、静かな空気が流れる。

父はその後、息子に起きた出来事と、母から託された使命について話し始める

父は真っ黒い石を取り出すと、お爺さんはそれをじっと見つめながら言った。

「この石は、戦剣せいけんと一緒に使うべきだろう。力が宿っているようだ。」

その言葉に、父は黙って頷き、お爺さんに手渡した。


お爺さんは真っ黒い石をじっと見つめながら言った。

「これは、たぶん闇属性だろう。本来あり得ない属性だ。四属性とほかに上位の光属性があるが、闇属性は存在しない。敵でさえ、この力を持っていない。」

その言葉に、父は驚きと共に静かに聞き入った。話が終わりお婆さんは静かに言った。

「よければ、今晩は泊まっていきなさい。」

その言葉に、お爺さんも頷きながら同意した。父は少し戸惑いながらも、お礼を言って、彼らの厚意を受け入れた。

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