Dahlia

WaKana

ダリア

取扱説明書


1電源を起動してください

2彼女と目を合わせ、あらかじめ決めた名前で呼びかけてください

3自由に、彼女を育ててください  

*彼女が感情を覚える期間:六ヶ月

            

彼女は、ロボットです



「なんだこのトリセツ、、」

俺はある一枚の紙を見ながら眉を寄せる。そして、今まさに目の前にある一人の白髪の少女に目を移す。

自由に、か。注意点とかないのかこのロボットには。そもそも説明が足らなさすぎる。取り扱い方をちゃんと説明してくれよ。

あるサイトでたまたま見つけたこのロボット。無駄に値段は安いし『人間そっくりな人造ロボット!あなたの寂しさを解消します』なんて怪しいキャッチコピー付き。あーあ。何でこんなん買ったんだろ。そんなことをぶつぶつと考えながら彼女の左手を取り、つけていた手袋を外す。そこにはまさに電源ボタン、というような赤いボタンが姿を見せる。

「これか、、、。その前にまず名前を決めないと。」

置物のように動かない彼女を床に座らせ、俺は散らかった机に広がったペンと紙を手に取る。名前、名前、、今まで考えたこともなく、ありきたりな名前をいくつか頭に並べる。どれだけ並べても、どこかで聞いたことのあるような、そんな名前ばかりだ。指先で回るペンを見ながら、ため息をついて部屋を見回した。そんなとき、ふと目に入った一輪の花。

「真っ白な、花」

最近亡くなった義理の姉が、最後にこの部屋に置いて行った花。姉貴にぴったりな、格好いい、寂しげな、真っ白な花。いつも見ていた明るい笑顔は、もう記憶の中でしか見ることはできない。嗚呼、寂しい。

―「ダリア」―

この花、そういうのよ。綺麗でしょ?

いつか聞いた、懐かしい声。

「ダリア、か。」

俺は呟き、動くことのない人形に向かって歩き出す。もう一度、彼女の左手を手に取る。そのボタンを押したとき、静かに生気が吹き込まれるように、彼女は瞳を開いた。その瞳は、俺をまっすぐに見つめている。

『ダリア』

独りになって寂しいからってまんまとこんなん買ってんじゃねーよ、俺。

まあいい。せっかく買ったんだから少しぐらい騙されてあげようか。

「それじゃあよろしく。ロボットさん」


最初はピクリとも動かず、ただ俺の目を見つめているロボットでしかなかった。本当に動くのか心配になった俺は、彼女に声をかける。

「動けるか?」

手を伸ばしてもやはりピクリとも動かない彼女に、やっぱり不良品じゃねーか、と入っていた箱をにらむ。あぁどうしよ。返品とかできんのかな。俺はこんな詐欺ロボットを売った奴にも、こんな詐欺ロボットに縋った自分にも嫌気がさして、もう捨ててしまおうかと彼女の髪に触れる。その真っ白な、白髪に。

「ダリア」

無意識に、またそう呟いていた。白いその花も、白いその髪も、無性に俺を孤独にする。また、胸の奥が締め付けられる。ああもう、、

「はい。なんでしょう」

その透き通るような機械音に、俺ははっとする。

「え?」

うつむいていた顔を上げると、少し首を傾げてこちらを見る、彼女が目に映る。

「、、、ダリア?」

「はい。なんでしょう」

先ほどと同じ、機械的な返事が俺の耳に届く。そうか。彼女は今、自分の名前を学習した。『自由に、彼女を育ててください』なるほど、自由に。一から君を、ダリアを作ってゆく。

“人間そっくりな人造ロボット!あなたの寂しさを解消します”

「君はそばにいてくれるんだな。頼むからもう、消えないでくれよ。」

俺はうつむいて、そう呟いた。


「ダリア、部屋はここだ。そう。手をかけて引けば開く。服は、、姉貴のでいいか。」

まるでペットをしつけているような、そんな感覚。だけどやはりペットとは違う。へー、すごいんだな今のロボットは。少しずつ、小さな動作も言葉も笑い方さえも、俺を見てまねて、人間に近づいていく。俺の動きをコピーしたように、それを再生するように綺麗な指先を動かす。俺が笑うと、ダリアも微笑む。何処かで見たことのあるようなその笑顔に、俺は言葉をこぼした。

「姉貴、、?」

そっか、姉貴。俺ちゃんと弟だったみたいだ。義理の姉でも、血が繋がっていなくても、俺の笑顔は姉貴にそっくりだ。髪の色も顔も身長も違う、そんなロボットと重ねて見てしまうほどに。そんな幻覚が見えてしまうほどに。

そんなことを考えたその時。俺の心はどこか、満たされるような気がした。ダリアが何か一つ教えるたびに人に近づいていくこと。また一人だったこの部屋に、一緒に暮らす人ができたこと。朝起きればそこに、ダリアがいること。気持ちが、そんな一つ一つに満たされていく。そうか。空っぽだったんだ、ずっと。俺の心はかけていたんだ。姉貴がいなくなったあの日からずっと。

あーあ、俺はいつまで、姉貴に縛られるのか。過去に、縛られ続けるのか。

「しっかりしろよ、俺。」

俺の大切な人はもういない。そんな変わりようのない事実は、とうの昔に知っている。

大丈夫。たとえ忘れることはできなくても、俺は前に進むから。


ダリアを育て始めて一週間。覚える速度は思っていたよりも早く、日常的な動作はある程度こなすようになった。最初は信じる気がなかったこのロボットも、最近では少しずつ、楽しくなってきている。まるで、育成ゲームをしているようで。いや、これはもうある種の育成ゲームなのかもしれない。次は何を教えようか。

「よし、言葉だ。言葉を覚えよう」

言葉は動作を教えるよりも難しかった。言葉を伝えるために、言葉を教えなきゃいけないから。動作のようにはうまくいかない。これは、毎日の努力が必要なようだ。骨が折れるな。

「日本語って難しんだな。なぁ、ダリア」

返事もなくこちらを見るロボットに、俺は笑いかけた。かえってくる言葉なんてないのに。そりゃそうだ。まだ教えていないんだから。目に入った家の鍵を指先で回す。ああ、先が見えない。本当にこのロボットは喋るようになるだろうか。そんな悩みの張本人であるダリアは、こちらの考えなんて何一つ知らずに、またいつもの俺と同じ笑顔を見せる。


気持ちのいい秋の早朝。久しぶりにベランダで肌寒い風を受けながら、煙草の箱を開け、ライターに指をかける。カチッ、と音がした瞬間。後ろで無機質な声が聞こえた。

「おやすみ」

育て始めてまたさらに一週間。とにかくこの一週間は『ありがとう、おはよう、おやすみ』など、なんとなく、よく使いそうな言葉から教え始めた。

「ダリア。朝起きたらまず、『おはよう』だな。今日は早いな。俺が起きたからか?」

手元で揺れる火を消し、煙草を空になった空き箱へ戻しながら、問いかける。

「お前、姉貴の服似合ってるな。サイズも丁度だ。ただ、お前の銀髪は目立ちすぎる。」

ふとそんなことを口にする。もう見慣れたその髪色も、客観的に見れば普通ではない。姉貴がよく来ていたその服も、彼女が黒髪だったからか、別の服にも見える。

「そうだ。髪、染めてみるか?」


おれは無地の白シャツにジーパン。それから飾りっ気のないクロックスを履いて、家の扉を開けた。たまたま鉢合わせた同じマンションの隣人に少し頭を下げながら、見慣れた階段を下りていく。いつも行くコンビニに向かいながら見る並木道は、赤色に染まり揺れていた。


「ありがとうございましたー。」

温かかったコンビニを出て、珍しく手動なドアを開けながら身震いする。肌を刺す冷たい風は白いレジ袋にあたり、小さく音を鳴らした。あー、さむっ。そうつぶやいた時、

「あら?」

ある一人の声が聞こえた。

「あなたこんなところにいたの。お父さんも心配してたわよ」

心臓が音を上げる。聞きたくもない、聞きなれてしまった癪に障る雑音。

「母さん、、なんでいるんだよ」

遠い昔の記憶がよみがえってくる。日が昇ってくる頃に帰ってくる親父の顔に、吐き気のするような酒の匂い。名前を呼ばれたことなんて数回しかない、呂律の回っていない声。そんな親父と一緒に子供なんてほったらかして夜な夜な家を出る母親の横顔。あぁ、まだ顔覚えてたんだ。しっかり見たことなんてないのにな。今更来て、なんなんだよ

「ちょっと見ないうちに大っぽくなったわね。背も伸びた?あ、そうだ。“お姉ちゃん”は元気してる?」

は?

寒気がした。その言葉に。その声に。吐き気がした。その顔に。その笑顔に。姉貴は、姉貴は、、っ。俺の中で、何かが切れた。上がった息を落ち着かせる。

そうだよな、こんな奴に、自分から関る必要なんてない。葬式にも来ないような人間に、いなくなったことすら知らない人間に、人間性なんて求めちゃ駄目だ。何を教えようと、結局こいつはこいつで、変わることなんてないのだから。

そういえば俺も、親の名前なんて呼んだことがあるだろうか。親?いや、俺に親はいない。

ただの人間で、知る必要のない、ただの他人だ。


家に帰り、扉を開く。すると、部屋の奥から歩いてくる人影が見えた。

「ただいま。ダリア。」

「おかえり」

返事が返ってきたことに少し驚き、嬉しくなる。

「そう、そうだ。帰ってきたら、そう言うんだ。」

俺は微笑みながら、頭を撫でた。俺の笑顔を見て、彼女もまた、笑顔を見せる。

「そうだ。髪、カラー剤買って来たんだ。黒髪にしてみるか。」


洗面台の前に立ち、手に黒いクリーム状の液体を取り出した。

「初めてなんだ。失敗したらごめんな。」

長く白い彼女の髪に、触れる。少しずつ、真っ白な髪は黒く、黒く、染まっていく。今思うと少し、この白色が見れなくなるのは寂しいが、やっぱりその服には黒色がよく似合う。またいつの間にか、俺の頬は緩んでいく。ダリアとの思い出が、増えていく。

「なあ、ダリア。その笑顔。ずっと見せてくれな。」


「よしできた。どうだ?ダリア。初めての黒髪だな」

そう笑顔で問いかける俺の声を聞いて、彼女はゆっくりと振り向いた。その、笑顔は、、、

―ドクン―

俺の視界が揺れた。振り向いて笑う黒髪の彼女はまた、ある一人の、大切な人に重なる。

また、思い出してしまう。いつまで、俺の心に残るつもりだろうか。なあ、姉貴。

「あり、がとう?」

はっとする。そうだ、彼女はダリア。ただのロボットだ。

「あ、ああ。そう。こういう時はありがとうって言うんだ。よく、似合ってる。ダリア」



ダリアと過ごし始めて三ヶ月。言葉も覚え、もう普通の人間と区別がつかない。

「おはよう」

俺が声をかけると、彼女はいつも通り、返事をする。

「おはよう。今日もいい天気ね。朝ごはん、できてるよ」

俺が少なからず意識してしまっているせいか、喋り方も、言葉遣いも、どこか姉貴に似ている節がある。俺は少しずつ、それでもいいと思うようになっていた。思おうとしていた。無理に忘れようとすればするほど、きっと俺の中にこびり付いていく。悩めば悩むほど、姉貴について考えてしまう。だからもう、俺の中の姉貴はずっと姉貴で、変わることなんてないのだから、俺の中で生き続けるのだから、この気持ちは大切にしようと思った。

「あね、き」

思った、はずなのに、、、。無意識に、口から洩れてしまうその一言。俺は、今もずっと、きっとどこか貴方を求めている。日に日に似ていくダリアを見るたびに、胸が痛くなる。ダリアを姉貴と、呼んでしまいそうになる。笑顔が、重なる。

「ダリア、ダリア」

俺は、自分に言い聞かせるように言葉を並べる。彼女はダリア。俺が育てた、ただのロボット。

「よし!大丈夫。」

俺は笑顔で、“ダリア”を見る。


「今日、ちょっと買い物に出かけてくるね。楽しみにしてて。」

季節は変わり、桜の舞う春の朝。ダリアと出会い、七ヶ月が過ぎた。彼女はそう言い、家を出ていった。一人で買い物へ行くなんて珍しいが、それだけ彼女の中で自分の意思が出来たことに、俺は嬉しくなる。今思えばこんなことを言い始めたのはこれが初めてだ。

「行ってらっしゃい。ダリア。」

初めて一人で扉を開ける彼女の後ろ姿。俺はその景色を目に焼き付けた。


テレビをつけ、スマホを見ながらうとうととしていた時、扉が開く音が響いた。

「おかえり、ダリア、、、」

俺は、彼女が手に持つ花を見て、動きを止めた。

「みて、この花。真っ白で、綺麗でしょ?」

その服を着て、その髪色で、その喋り方で、その笑顔で、彼女はそう言った。

―ドクン―

まるで、姉貴が真っ白な花を買ってきた、あの日のように。

―ドクン―

彼女はそう言った。まるで、人間のように。

―ドクン―

また、重なる。重なる。貴方と、貴方。姉貴と、ダリア。

―ドクン―

重なる。貴方の笑顔と、貴方の笑顔。

―ドクン―

違う。

―ドクン―

ちが、う。

―ドクン―

ダリア、

―ドクン―

ダリアだ

―ドクン―

ダリ、ア。ダ、リア?ダリア、、


“お姉ちゃんは元気?”



『ああ、元気だ。なあ?姉貴?』

俺は、目に映る笑顔の彼女を見て、言った。




「おはよう。姉貴。」

俺は今日も声をかける。いつも通りの、朝。台所に立つ姉貴に、微笑みかける。

「おはよう。今日もいい天気ね。朝ごはん、もうできるよ」

いつも通りの、日常。明るい日差しを浴びて、温かく笑いあうごく普通の兄弟。いつも通りの、姉貴と俺の、日常生活。

鼻歌を歌いながらエプロンを外す姉貴を見ながら、俺は呟いていた。

「もう、どこにも行かないでくれよな。姉貴。」

「ん?何言ってんの。どこにも行ったことなんてないでしょ?ずっと、そばにいた。」

そう、そうだよな。俺は、どこか聞こえる自分の声に、蓋をした。



「姉貴。今日誕生日だよな。どっか行くか?」

「そうね。それじゃあ久しぶりに焼き肉でも連れてってもらおうかな」


「今日イルミネーションやるみたいよ。寒くなってきたものね」

「久しぶりに、見に行ってみるか?」


「メリークリスマス。ケーキ買ってきたから食べようぜ」

「おいしそー!そういえば、今年はホワイトクリスマスね」


また、時が経つ。楽しくて、嬉しくて、温かくて。あっという間に。なあ、姉貴。姉貴は今楽しい?俺とこの二人の日常が、楽しい?俺は楽しい。楽しい、はず。多分。

最近、ていうかここ半年。よく思うんだ。何でもないこの生活は、とても大切で、大きくて。でも、壊れてしまうときはあっという間な気がして。例えば明日、いきなり姉貴が死んじゃって、この日常が消えちゃう、とか、そんなただの妄想。想像。だけど、俺にはそれが不安で仕方がない。取り払ってくれる、誰かが欲しい。なあ、姉貴。最近なんだか、体温を感じないのは気のせいか?ぬくもりを感じないのは、気のせい、、?


「最近元気ない?大丈夫?」


「大、丈夫。ありがと。」

―なあ、姉貴―





ある日、ふと目に入った白い花。真っ白な、どこかで見た、白い花。

「ダリア」

俺は、はっと口に手を当てる。

何か、崩れてしまう気がしたから。言ってはいけないような、そんな言葉な気がしたから。

気付いていたような、気付かないふりをしていた様な、そんな気が、、。

―ドクン―

何処かで感じた、この感覚。また、心臓が音を上げる。

『見て、この花。綺麗でしょ?』

ドクン

ドクン

ドクン


俺は、散らかった机に落ちていた、ある一つの紙を手に取った。



取扱説明書


1電源を起動してください

2彼女と目を合わせ、あらかじめ決めた名前で呼びかけてください

3自由に、彼女を育ててください  

*彼女が感情を覚える期間:六ヶ月

            

彼女は、ロボットです



―ドクン―

“彼女は、ロボットです”

ロボット。姉貴。ダリア。ロボット。

「ダリア、、、」

『はい。なんでしょう』

フラッシュバックのように、あるはずのない記憶が、機械的な声が、流れ込んでくる。姉貴。姉貴。今はとにかく、姉貴に会いたかった。この目で見たかった。生きている、姉貴を。いつもの、笑顔を。

「どうしたの?机、散らかって来たわね。」

―ドクン―

「あね、き?」

無機質な、機械的な、そんな声が聞こえた。

俺が聞いていた声は、確かにもっと姉貴の声で、生きていて、温かい。そんな声だった。そんな声を、聴いていたはずだった。本当に、そんな声だった、、、?

「一緒に、片づける?」

やめて。やめてくれ。これ以上、その声を聞かせないで。その声で、その笑顔を見せないで。その笑顔は、姉貴の笑顔。その笑顔は。見れるのが嬉しかったその笑顔は、貴方の笑顔は、、

「そんな笑顔、もう見せるなっ、、、」

気づけば俺は、彼女を突き飛ばして、叫んでいた。違う。きっと俺が見たくなかったのは、ずっと目を背けてきたのは、『現実』だ。

『3自由に、彼女を育ててください』

あーあ、最低だ、俺。勝手に彼女を姉貴にしたのは、俺なのに。



























私はある、一人の男の人の家で目を覚ました。彼が私にくれた名前は、

『ダリア』

彼は私に、多くのことを教えてくれた。私を、人にしてくれた。私に、笑顔を教えてくれた。そんな彼に今、私は突き飛ばされている。

「そんな笑顔、もう見せるなっ、、、」

私は、笑っていた。いつもの笑顔で、微笑んでいた。だってあなたは、私に笑顔しか教えてくれなかったから。私に、そんな顔は教えてくれなかったから。

ねえ、私に動き方も、喋り方も、服も、髪も、この笑顔も、教えてくれたのは全部貴方なん

だよ?貴方が言う『姉貴』は、私にとって誰かはわからない。でも、私が『姉貴』になれば、貴方は笑顔でいてくれるから。優しく笑ってくれるから。私がいつも『笑顔』でいれば、貴方も笑ってくれるから。だから私は、今も笑う。貴方は、笑顔しか教えてくれなかったから。


ある日、貴方はベランダで笑っていた。とても楽しそうに。久しぶりに見る、貴方の笑顔だった。

ある日、貴方は柵に立った。いつものその笑顔で。楽しそうに、苦しそうに。

ある日、貴方は消えた。ベランダにいたはずの貴方は、その手に白い花を持って、飛び降りた。

ある日、貴方は私を一人にした。もう、貴方は私にその姿を見せてはくれなかった。貴方がいなくなったそんな時でも、私は笑っていた。貴方が、笑顔しか教えてくれなかったから。


ある日、私はベランダに立っていた。いつもの笑顔で。貴方が笑ってくれる、頭を撫ででくれる、いつもの笑顔で。

ある日、私は貴方が教えてくれたその行動を、コピーしたように、それを再生するように、繰り返した。これで私は独りじゃなくなる。

私は貴方を追いかけた。いつもの服で、髪で、笑顔で、―ダリアで―


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Dahlia WaKana @wakana0805

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