第3話 僕はナルシスト

 前途で書いた通り、ジャッキーはもうこの世にはいません。私が大学を卒業する前に亡くなりました。


 小型犬の平均寿命は十三から十四歳。元々、癌を抱えていた身ですが、それでも長く生きたと言われました。

 十四年間、とても楽しかったです。


 今はペットフードが豊富にありますが、当時は少なく。同じものが続くと、たべなくなることがありました。

 作る人もいるそうですが、当時はネットもなく、我が家は共働き。そのような手間をかける時間もありませんでした。私も子どもでしたので、できることは一個一個、口に持っていって食べさせることくらい。それでも渋々でした。


 夏の暑い時は、帰って来るとすぐにクーラーをつけろとせがみ、冬また同様。毛が長くて暖かそうに見えるのに、とても寒がりでした。

 お陰で扇風機やヒーターに近づく度、注意したほどです。お留守番ができるくらい、行儀がいいワンコだったのですが、やはりそこは別のようでした。


 さらに意外だったのは……鏡が好きなこと。

 元々、綺麗好きなので、ブラッシングも大好き。鏡台の前の椅子に座って、大人しく待っているのはいいのです。小型犬であるため、鏡の位置も高く、その映っている姿を私も見ることはありませんでした。


 現在もそうですが、当時もペットを取り上げた番組があり、鏡に驚く犬猫たちを見て……ニヤリ。私もけしかけることにしました。

 ちょうど大きい鏡もありましたので、ジャッキーの目の前に……ドン!


 すると驚くどころか、うっとり。「僕って、なんて可愛いんだろう」という音声が聞こえてくるほどでした。すぐさま鏡を撤収。不満げな顔を向けられましたが、いやいや、私が耐えられない。


 元々、可愛いと言われることが大好きなワンコだったのは知っています。そして自分が可愛いということも……。

 さらにいうと、それは犬の世界でも同じようで。動物病院や犬が集まる場にいると、他の犬たちが寄ってきます。しかしジャッキーは興味が一切なく、逆に迷惑に感じていました。


 それほどにジャッキーの見目はいいらしいと知ったのは、ブリーダーさんからのお話。実はジャッキーのご両親は、コンテストで優勝するほどのシーズーだったのです。

 ジャッキーの兄弟の中にも、勿論コンテストに出たことがあったのでしょう。けれどブリーダーさん曰く、一番可愛いワンコをウチがいただいてしまったらしいのです。


 ヒィー! すみません。ウチの兄がとんでもないことを……!


 そんなわけで、飼い主目線だけでなく、ジャッキーは可愛いという事実が判明。自身の姿にうっとりするのは……ご両親からの遺伝だと思いたい……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る