第2話 僕は女の人が好き
ジャッキーは、兄の遊び相手として我が家にやってきたわけですが……当の本人は、兄が嫌い。
体力が有り余っている男の子としては、大人しく静かにしていたいジャッキーでは、物足りなかったようです。
さらに私もですが、兄はいたずら好き。けれど同年代の子にはしません。代わりに……ジャッキーにはよくしていました。
たとえば、貰ったラジコンカー。室外で走らせることはせず、ジャッキーを追いかける道具にしたり、猫ではないのに高い所(子どもの背の高さ)から落としたりなど。
お陰でジャッキーは男の人が大嫌いになりました。逆に私が連れて来た友達には、愛嬌を振りまくほど、女の人が好き。
皆、「可愛い、可愛い」と優しく撫でてくれますから、その気持ちは分かります。可愛いといわれて嫌な気分になるほど、世間を知っているわけでもありません。
その典型的なエピソードがペットショップでの出来事でした。
両親が綺麗好きだった影響なのか、ジャッキーも綺麗好き。よく、何カ月に一度はシャンプーに出すと言っている家がありますが、我が家はジャッキーが主張してくるため、その頻度は覚えていません。
自分の体が汚くなってくると(私たちの感覚では、ほんの少しですが)、アピールをするのです。実際、ジャッキーをペットショップに連れて行くのも、お金を払うのも母ですから、「私に言ったって困るよ。お母さんに言って」と教えてあげると、その後は母に主張するようになったそうです。
今は男性のトリマーさんも増えたようですが、当時のトリマーさんは女性が多く。それも若くて可愛い女の子! まさにジャッキーの好みだったわけです。
シャンプーをしてもらうペットショップを変える度に、向こうは事務的にこう聞きます。
「何か要望はありますか?」
「若くて可愛い女の子が好みらしいです」
「は?」
「腕は関係なく、若くて可愛い女の子であればいいそうです」
「え?」
母も恥ずかしかったらしいのですが、事実なのだから仕方がありません。さらに、シーズーは毛が多いため、トリマーさんたちも大変なんだそうです。
特に新人に任せる様な犬種ではない、という。しか~し! ジャッキーが好むのはまさにその新人……。
おっかなびっくりしている姿も可愛く見えるのでしょう。
とある新人トリマーさんは、ジャッキーと同じ小型犬のシャンプー中に、手を噛まれてしまったそうです。それ以来、自信喪失。けれどその日、ジャッキーの好みのトリマーさんは彼女しかいませんでした。
母からの話を信じ、そのトリマーさんにジャッキーを任せることにした店長さん。
なんでも毛を引っ張られても、文句を言わないどころか、心配でやってきた先輩トリマーさん(男性)に威嚇するほどだったとか……。
家で私と母が二人がかりでシャンプーした時は、常に唸っていましたが!?
色々と文句を言いたいことはありましたが、新人トリマーさんにはとってジャッキーは自信をつけてくれた犬だったというわけです。
もうこれが最後のシャンプーかな、という時、彼女はジャッキーの耳にヒマワリのリボンをつけてくれました。
時期ハズレではあったのですが、ヒマワリは元気の象徴。花言葉は「あなたを見つめる」「光輝」
また元気な姿を見せてほしい、という気持ちでつけてくれたのだと聞きました。
ジャッキーの女の人好きはどうなのか、と常々思っていましたが、巡り巡って良いことをしていたようです。
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