可愛い僕の転生先
有木珠乃
第1話 僕は良いワンコ
そのワンコは、私が小学一年生の時に我が家へやってきました。
兄が小学四年生となり、学童を卒業。それを読むだけでも分かるように、我が家は共働きの世帯でした。
母は、そんな兄が帰宅時に寂しくないようにという理由で、犬を飼うことを決意。職場の方の紹介で、ブリーダーさんから購入することになりました。
当時、小学一年生だった私は、そんな事情も、行った先がブリーダーさんのお宅だとも知らず、ただただ母にくっついたのを覚えています。しかしその裏では、兄が子犬を追いかけていたらしく、運悪く捕まってしまったのが、のちに我が家へ来ることになったオスのシーズー、ジャッキーでした。
ジャッキーは小心者でおっとりした犬。子どもの遊び相手としてやってきたにしては、役不足ともいえるワンコでした。けれど運動量が少なくて済む小型犬であり、かつ大人しい性格は、我が家の状況にはピッタリだったのです。
なぜかというと、共働きという言葉から分かるように、普段は家を留守にしがち。ちゃんとお留守番ができるワンコでなくては困ってしまうのです。
ジャッキーは、初めからそれに順応していたと聞きました。さらに一人でお留守番をしている方がいいのか、普段は家にいない時間帯(たとえば振替休日など)にいると、「なんでいるの?」という顔をされてしまうのです。
「行かないで!」と訴えるペットが多いというのに、いえ、それはそれで構いません。帰って来ると勢いよくやって来るほどですから。
しかし、床がフローリングであるため、家族の皆が危ないと注意をします。私もいつかは転ぶだろうと思い、何度も言い聞かせました。
そしてついに……危惧していた事態が起こったのです。いつものように駆け足でやってきたジャッキーは、つるんと転び、そのまま玄関から落ちてしまいました。
我が家の玄関は、腰かけて靴を履くのがちょうどいい高さだったのです。怪我には至りませんでしたが、普段は叱ること以外、手を上げないため、相当痛かったと思います。お陰で出迎えることはなくなりました。
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