第四章 ママの匂い

【まもる16歳】

【2016年 7月20日】


礼子の寝室で。


※※※※※※※※※※※※※※※


今、僕はママの寝室にいる。

一人ベッドに座り、甘い匂いに包まれながら。


同窓会に出かけているママはいない。

僕は時々、こうして寝室に忍び込んでいた。

ママとはもう何年も一緒に眠っていない。

中学生になる前にママから告げられたから。


『もう、大人なんだから一人で寝なさい』


(そ、そんな・・・)


『ごめんね・・・』

狼狽える僕の気持ちを読み取ったのか、ママが小さく呟いた。


『でも、もぅ・・駄目だから・・・』

寂しげに見つめる瞳が潤んでいる。


あの日から何度も見せる表情だ。

今から思えば確信が持てる気がする。


そう、あの夜。

ママは大人になった僕を知ったのだろう。

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