第4話 最下級迷宮
「もうそろそろ、〈魔力〉と〈闘気〉が、半分尽きてしまうな」
これ以上の深入りは、死亡リスクが高くなってしまう。そろそろ、限界距離だ。
「くぅ~ん?」
とりあえず、休憩のために壁を背にして座った。
子犬は、俺のズボンを噛んで進むことを促してくる。
「俺は、才能がないんだよ。継戦能力が致命的にないんだ。それと、スライム程度なら倒せるけど、上級モンスターが出てきた時点で逃げるしかいない。今日は引き返してもいいかな?」
「くぅ……ん」
言葉は伝わらないみたいだけど、気持ちは理解してくれるみたいだ。賢い子犬なのかもしれない。
だけど飼うことはできないんだよな。ギルドに引き渡すのが義務になっている。そこで
ここで子犬が、何処かへ行ってすぐに戻ってきた。
「何を持ってきたんだ?」
何か結晶っぽいモノをくわえて来た? 赤い結晶?
手に取ってみると、〈魔力〉が回復することが分かった。
「学校の授業でも習わなかったな。もしかすると、大手ギルドは、これがあるから探索を行えるのか?」
かなりの貴重品の可能性もある。
そして、高額で売れる可能性……。
考えていると、子犬が今度は白い結晶を持ってきた。
触れると、今度は〈闘気〉が回復した……。
子犬を見る。目で何かを訴えている。
俺は立ち上がった。
「行こうか」
「わん!」
◇
赤い結晶と白い結晶は、何度も使うことができた。持っているだけでも、回復するんだ。
俺の
だけど、俺の継戦能力は、数倍に跳ね上がったと言ってもいい。
「スライムだけが出てくるのであれば、俺の攻撃力でも探索は可能かもしれないな」
そう思った時だった。
色違いのスライムが現れた。しかも、通常スライムの数倍の大きさだ。
「くっ、先手必勝!」
俺の全力の〈魔力〉と〈闘気〉を籠めた一発を放つ。短銃が過熱していて、次の弾を撃つのにはちょっと時間がかかる。
巨大スライムは、体の1/3を吹き飛ばされたけど、死ぬことはなかった。
「最悪だな。急所を外したか」
俺は、子犬を抱えて撤退を決めた。
その後を巨大スライムが追ってくる。
状況として最悪だ。短銃は、次の一発で破損する恐れがある。銃身が持つとは思えない。
何でこんな無茶をしたのか。
(幼馴染2人が活躍したからといって、俺もって思ってしまったのかな……)
安全マージンを考えるべきだった。
走りながら、白と赤の結晶から補充を受ける。次の一発で足止めをして、入り口に辿り着けなければ、俺の死亡が確定する。
そう思った時だった。
「わん!」
子犬を見ると、青い結晶をくわえている?
今の俺は、左脇に子犬を抱えて、左手に白と赤の結晶を持っている。右手には、短銃だ。
短銃を仕舞い、青い結晶を受け取る。
そうすると、何かしらの力が体に流れてきた……。
「これ……、〈魔力〉と〈闘気〉とは違うな。エネルギーが体の周囲を覆っている?」
青い結晶を持っている右手には、今までとは比較にならないほどのエネルギーが集まっていることが分かる。
後は使い方だ。
ここで、雑魚スライムが行く手を阻んで来た。
右手で振り払うと、スライムが吹き飛んだ?
「身体能力が上がっている?」
そういえば、さっきから走っているけど息が上がらない。
速度も上がっている気がする……。
後ろを振り向くと、巨大スライムとは、距離が離れていた……。
「新しいエネルギー源?」
まだ使い方が分からない。
せめて、攻撃に転用できれば、勝機もあるんだけど。
「わん!」
子犬を見ると、青い結晶の力を集約していた。何かしようとしている?
子犬の意図を感じ取り、背後を向いた。
「わおーーーん!」
レーザー光線みたいな光が、犬の口から放たれた?
それが、巨大スライムに直撃すると爆散した。
俺の背後には、
煙が晴れて、巨大スライムの死骸が見えた。塵になってるよ。
「お前、凄いな」
「わふ?」
◇
その後、
もう2時間は経過しているけど、探索を続けることにした。
何かある──その確信だけはあった。
子犬がここで、俺の腕から降りた。
そして、青い結晶を食べ始める。
「俺にも真似ろってことか?」
試しに持っていた、小粒の青い結晶を口に含んでみた。そうすると、液体に変わり……飲み込めた。味は、少しの甘みを感じるくらいだ。
「わん!」
子犬が続けろと言っている。なんとなく、意思疎通ができるようになってきた。いや、意思疎通以上だな。
とりあえず、青い結晶を砕いて、食べられるだけ食べてみる。
そして感じる……。〈魔力〉と〈闘気〉以外の力を感じる。なんというか、体の外側からエネルギーを得られる感じだ。
「これ……、
エネルギーの流れが、今までと違う。
試しに右手にエネルギーを集めてみた。
真円の光の玉弾、無重力下の炎、お化け屋敷の鬼火……。そんなエネルギーの塊ができ上った。形は任意に変更できそうだ。立方体にも変えられる。そして、発射してみた。
──ガキン、ピシピシピシ……ドパン
さっきの子犬の真似だけど、指先からビームを撃てた。これは大きいな。
「……威力として申し分ないな。昨日の俺の攻撃力の十倍くらいだ。しかも、銃の補助なしだし。いや、エネルギーを溜める時間を調節できるのであれば、威力は跳ね上がるか?」
巨大な青い結晶が、砕け散った。
そして……、ダンジョンが変化し始めた。
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