第2話 植物育て系おどおど美少女、登場。

「初めまして、今時間いい?」



 そうして私が彼女に声をかけると、彼女は肩をビクッと震わせながらも返答してくれた。



「は、はいっ! 時間あります!」


「ありがと、何か私に手伝えることはあるかな?」


「い、いえっ、とんでもないです! あとは花瓶の水を入れ替えるだけなのでっ!」


「なるほど、水を綺麗にすればいいんだね」



 そう言って私は、彼女の持っている花瓶に魔法を使い、それを一瞬で洗浄した。

 すると彼女は、驚いた様子で声をかけてくる。



「わわっ……水と、花瓶まで綺麗に……! どうやったんですか?」


「水魔法の応用だよ、水を綺麗に変えるついでに花瓶についた汚れも落としたんだ」


「え……? 光魔法じゃなくて、水魔法が得意なんですか?」


「得意ってわけじゃないけど……ま、色々練習したからね。役に立てた?」


「は、はいっ! ありがとうございます!」



 そうして、彼女は少しは心を開いてくれたようで、笑顔と共に白い歯を覗かせていた。



(この子、歯綺麗だな……舐めたいなぁ……舐めさせてくれないかなぁ)



 と、私がそんな事を考えていると、彼女は何かに気づいたような表情を浮かべてこちらに話しかけてきた。



「えっと、自己紹介がまだでしたよね……わたし、ヒナノと言います。それで、リリアさん……であってますよね? 一つだけ質問してもいいですか?」


「あってるよ。でも、敬語は必要ないよ、同級生だしさ」


「えっと、じゃあ……り、リリア……ちゃんは、どうして転校してきたの? わたしは都会の方で一つの町を焼き払って追放されたって聞いたんだけど、そんな人がお手伝いしてくれるなんて思えないし」


「これまた随分と大きな尾ひれがついたね……それ全部嘘だよ。あと、転校してきたのは、光の魔法が使えないのが理由で家を追い出されからなんだ」


「そっか……厳しいご家庭なんだね……」



 そんな風に会話のラリーが続いていたころ、彼女は何かを思い出したかのような表情を浮かべて話を変えた。



「あの……ごめんね。わたし美化委員だから、花壇に魔法をかけに行かないといけないんだ」


「花壇って……校舎の入り口の? もうちょっとで授業始まっちゃうよ?」


「急げば一つくらいできるから。それに、お仕事だから」


「なら私も手伝うよ」



 そんな会話をして私は、ヒナノちゃんと共に教室の外へと向かう。

 そして、花壇の前に到着すると、彼女は何も咲いていない花壇の一つに魔法をかけたあと、私に向けて口を開く。



「これだけだと見た目は変わらないけど、これから百合の花が咲くんだ」


「確かに、魔力が溜まってる感じがするね……花好きなの?」


「うん。お花って小さいのに一生懸命咲こうと頑張ってて、それを見てると、なんだか応援してあげたいって思うんだ」



 と言った後、ヒナノちゃんはハッとした表情を浮かべた後で、わたわたしながら私に語りかけてくる。



「で、でも、わたしはあんまり魔法が得意じゃないから、上手くできてるかは咲くまで分からないんだけどね」



 そんな風に、自信なさげな訂正をしてくる彼女に、私は返答する。



「上手くいくよ、込められた魔力からしても丁寧に面倒を見てるのが伝わってくるし、たくさん魔法を練習したのも分かる。毎日頑張ってるんだね。素敵だと思うよ」



 土の様子を見るに、学校に来る日は毎日こうしているのだろう。



(自分の抱える仕事への姿勢といい、この子の真面目さが伝わってくるな)



 なんて私が考えていると、ヒナノちゃんは照れたような表情を浮かべながら言葉を返してくれる。



「えへへ……ありがとう。そんな風に言ってくれる人って初めてだから……嬉しいな」



 うお可愛っ……守りたい、この笑顔。

 では、この子に好かれる為にも手伝える事を探そうか。



「……さて、じゃあ私は水魔法で掃除でもしますか。ヒナノちゃんは他の花壇に魔法かけてきていいよ」


「そ、そう? なら、お言葉に甘えてお任せしちゃうね」



 そう言って彼女は、裏の方へと小走りで向かっていった。



(よーし、ヒナノちゃんが戻ってくるまでにピッカピカにしてやんよ)



 そうして、掃除を初めて2分ほどが経過した頃、何者かが近づいてくる足音が聞こえてきた。

 そちらの方を見てみるとそこに居たのはなんと、我が妹であった。

 そして私は、彼女に声をかける。



「あれ、ララじゃん、何してるの?」


「負け犬の顔を見にきましたの。どんな表情をしているものかと思いましたが、未だに魔法の道を諦めていないどころか、掃除の為に魔法を使うなんて、まさに負け犬にはお似合いの……」



 と、ララの語りを遮るように、一時間目開始の5分前を告げるチャイムが鳴った。

 それを受けて私は、彼女に問いかけてみる。



「……学校に戻らなくて良いの? 優等生なのに」


「こ、この卑怯者っ……覚えてなさい! この借りは学校代表の対抗戦で返しますから、私が勝ったらお姉様には魔法の道を諦めてもらいますからね!」


「私は特になんにもしてないんだけどね」



 そんな風に会話を終えるとララは、転移魔法で帰っていった。



「……結局、何がしたかったんだろ?」



 なんて呟きながらも、私はヒナノちゃんの帰りを待つ。

 すると、チャイムの音を聞いたであろう彼女は、本人なりに精一杯に走っているのであろう事が伝わってくるような女の子走りでパタパタと戻ってきた。

 なので私は、彼女にララが言っていた学校代表選について聞いてみる事にした。



「あのさ、私って転校生してきたばっかりだけど、学校代表で対抗戦出れるのかな?」


「対抗戦? えっと……成績上位者が選ばれるから、成績が良ければ出れると思うけど……」


「そうなんだ、じゃあ近々テストとかある?」


「魔法実技のテストが二週間後にあるはずだよ。それでいい成績を取れればチャンスはあるかも……」


「そっか、じゃあ頑張るか」


「……?」



 そして、そんな会話をしながら教室に戻り、授業を受けた。

 そこから二週間後。

 実技試験を終えての結果は……

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