17歳で名家から無能と言われて追放されたので、田舎の魔法学校でかわいい彼女を作って、ついでに追放した父を見返します!〜たまに真面目な変態女と植物育て系のオドオド女の子の百合ラブコメ〜
リンスinハンドソープ
第1話 追放、そして出会い。
「お前は我が一族には不要だ、出来損ないは出ていけ」
そう父に言われて家を追い出されてから数日が経過した。
そして今、私は田舎にある古い校舎の魔法学校に転校し、教室の扉の前で先生に声をかけられるのを待っていた。
(……本当に追放されたんだな、私)
本来であれば歴代の血族たちは16歳までには光の魔法を使う才能に目覚めているのに、なぜか私には発現しなかった。
それを理由に、17歳になった頃に家主である父に悪態を突かれつつ、追放を宣言された。
そして、私はそれをひたすらに黙って聞くことしかできなかったのだ。
なにせ光の魔法が使えないのは、事実だったから。
(ま、名家にはプライドがあるもんね。魔法実技も座学も成績自体は良かったんだけど、やっぱ光の魔法が使えなきゃゴミ扱いかぁ……)
私の先代は光の魔法で魔物と戦った魔法使いらしく、それを今も受け継ぐ立場であるおかげで、今の『街の中核』のような地位を保っているという事情もある。
だからこそ、私が一族に残ると迷惑なのだろう。
(それにしても、なんで私には光の魔法が使えないんだろ。妹は使えるのにな)
妹のララには、私と違って圧倒的な才能があった。
それも、あらゆる魔法の中でも特に一族内では重要視される光の魔法の才能が。
そのおかげで昔は仲も良かったのに、彼女が光の魔法に目覚めてからは嫌味も言われ放題で肩身もせまかった。
(ララには『お姉様が光の魔法が使えないのはただの努力不足でしょう? もう魔法の道は諦めて家を出ては?』みたいな事言われてたし)
そんな風に、日々変わっていくララを見ているのは中々に辛かった。
それに加えて周囲も彼女を肯定し続けていたから、居場所がないのも正直効いた。
「……ま、しょうがないよね。生きてるだけでラッキーでしょ」
もちろん追放された以上、学校も転校することになったから、生活自体は大変である。
でも、なんとか殺されずに遠い親戚の家へと転がり込むことができたし、なにより血で血を洗う権力闘争の世界から足を洗えたのは大きい。
(あくまでも噂だけど、父さんは権力闘争の相手を拷問にかけてなぶり殺した事もあるらしいし……なんなら普通にやりそうだし)
そんな事情もあるので、私の立場では生きているだけでラッキーなのだ。
(田舎街でのんびりスローライフってのも、なんかこう……いい響きじゃんね。楽しそうだし)
と、私がそんな事を考えていると、先に入った担任の先生である、若い女の人の言葉が聞こえてきた。
「転校生を紹介します、リリアさん、入ってきて下さい」
そして私は、言われた通りに教室のドアを開く。
すると、私の視界に飛び込んできたのは、制服を着た沢山の女の子たちだった。
(お、やっぱり田舎だし、全体的に女の子が地味な気がするな……これは興奮してきたぞ)
前通っていた学校は国内有数の優秀な学生が集まる魔法学園だったからあんまり派手な子は居なかったけど、それに比べてもなんだか洗練されてない感じの子が多い気がする。
(そうそう。こういうのでいいんだよ、こういうので……)
都会の女の子達も近くを通ると良い匂いがして好きだったけど、それは所詮、香水で上塗りされた偽りの香り。
しかしこの空間には、若い娘の肉体からしか抽出できない天然の良い匂いが充満している。
そんな楽園を前にして私は、これから訪れる生活にムラムラ……いや、ワクワクしていた。
(ここから始まるんだ、私の青春が!)
そうして、教師に誘導されるがままに自己紹介を済ませた後で私は新たに与えられた自分の席に座り、朝のホームルームに参加した。
そしていよいよ、一時限目が始まる前の休み時間になる。
(さて、自己紹介は無難に終えたし、これなら誰かしら声をかけてくれるだろう……最初はどの生娘となかよしできるのかなぁ……? へへへ)
なんて思っていたものの、待てども一向に誰も話しかけてこない。
というかむしろ、私の方を見てヒソヒソと話しているクラスメイトの声がたまに聞こえてくるくらいで、なんだか気まずい空気すら流れている。
(……あれ、なんか避けられてる?)
そう感じた私は、座ったままの体勢でクラスメイトの声に耳を傾けてみた。
すると、会話が聞こえてくる。
「あの人金髪だし、たぶん都会の方から追放されたって人だよね……? 何したんだろ?」
「多分だけど、相当悪い人なんだよ。もしかしたら、気に入らない人をひき肉にしたりするのかも……」
「ひえ……」
……どうやら私は、危険人物として恐れられているらしい。
(ありゃ、噂はこんなところまで……)
光の魔法を使える者は、体内で産まれる光属性の魔力の影響で金髪になる。
クラスメイトの声を聞く限り、バレたのもこの髪色のおかげだろう。
(これは困ったな……光の魔法が使えないのに髪だけは金になってるのは昔からだけど、他の人は当然そんな事情を知らないから、それが変に足を引っ張ってるぞ……まあなんにせよ、声をかけられないのならば自分から声をかけに行くしかあるまい。ならば、あの子に行くか)
そうして私は、1人の女の子にロックオンし席を立つ。
(今回のターゲットは、背が低い黒髪の、なんだか気の弱そうな小動物みたいなあの子……私の性癖にどストレートな姿をしている。ぜひお近づきになりたい)
そう考えて私は、教室の後ろに置かれている花瓶の水を入れ替えている作業をしているらしいその子に、下心を隠しながら声をかけた。
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