Z級映画の彼女【ぜっかの☆】
浅野エミイ
Z級DVDの彼女【ぜっかの☆】
うちのレンタルショップには、常連さんがいる。その方は、いつもホラー映画のコーナーをうろうろ。きれいな方なのだが、趣味はあんまりよくない。
なぜそんなことが言えるのか?
ズバリ店員はレンタル履歴が見られるのです。
人のレンタル履歴を見ている店員は気持ち悪いって? 理由はあるんだ。あのお客さんは毎日店に来る。さらにレンタル数が膨大すぎて、あまりの量に店長がびっくり。それで、店員全員で何を借りているのか見てみようということになった。そしたら、すべてがホラーのB級映画ばかり。たまにサメ映画もあったか。ともかくセンスが悪い。
人気のあるDVDは華やかな恋愛ものとか、夢のあるヒューマンドラマとかだ。よっぽど現実生活に不満でもあるのだろうか。特に彼女が好きなのは、Z級ホラー。あまりにもアレな趣味で、俺は彼女のレンタル履歴を見て固まった。
「あの……」
彼女だ。普段レンタルDVDはセルフレジ。なんで俺がいるときに声をかけてきたんだろう。
「すみません、『たぬきん・オブ・ザ・デッド』って入荷してませんか?」
たぬきん・オブ・ザ・デッド。新作ではないが、超一部のマニアに人気のB級どころじゃないZ級ホラー映画だ。
ささっと端末で調べると、入荷なし。当然だ。一部の変態マニアにしか見られていないドマイナー映画だからな。
「申し訳ございません、当店では取り扱う予定ないですね」
「そうですか……ここのお店マニアックな映画が充実しているのであると思ったんですが」
「すみません」
『マニアックな映画』と濁したが、正確には『Z級ホラー』だ。ホラー映画と一口に言っても多数ある。一般的に思いつくのはグロテスクなものだろう。しかし、Z級ホラーというのはーー『おゆうぎ会で使われる感じの小道具が出ている、テンプレお決まり脚本』なのである。
彼女は長いまつげを伏せる。美しい。美しいのだが、中身は超サイコだということを忘れてはいけない。外見には騙されない。
残念そうに他のホラーを見繕って5本くらい借りて行った。あれを1日で見て翌日返却してくるから、なんというか本当に『人間としてヤバそう』である。
ところでなぜ俺が『たぬきん・オブ・ザ・デッド』がZ級ホラー映画ということを知っていたかって?
……まぁ俺もZ級ホラー大好きなんですけどね。ここの店のホラーコーナーを充実させているのは、俺の趣味です。
Z級映画の彼女【ぜっかの☆】 浅野エミイ @e31_asano
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