第3話
この山小屋にボク以外の住人、テンタが住み始めてから3日が経った。ありがたいことに、テンタが毎日ボクのためにこの山に自生している果物をとってきてくれるから、空腹で苦しむことはない。
今日もボクが起きると、テンタが外からリンゴのような果物をとってきて、待っていてくれた。
「ありがとうテンタ。」
そうテンタにお礼を告げた次の瞬間、ボクの心臓にズキンと激しい痛みが襲い掛かってくる。それと同時に一気に血が口の中にせりあがってくる。
「ごぼっ、ガハッ!!あぐぐ……。」
今までをはるかに超える量の大量の血が口から溢れ出してきた。それによって一瞬にしてボクの目の前に血の池が作られる。いつもならテンタがすぐに血の飛び散った場所に行って自分の食事を始めるのだが、今回はボクの方に心配そうにすり寄ってきた。
「ご、ご
そう言っている間にも、ボクの口からはとめどなく血が溢れ出している。今までこんなことは無かった。思い当たる理由としては、
「うぐぐ…む、胸が痛い。」
自分の血液で濡れた服ごと痛みの走る心臓の辺りをぎゅっと握ると、血が絞られてまた下へとポタポタと血が垂れていく。
あまりにも血を流しすぎているせいで、意識もどんどん朦朧としてきた。
「うぅ……。」
体から力が抜けて仰向けに倒れると、クッション代わりにテンタが頭の下に潜り込んでくれた。彼はボクの頭を受け止めると、するりとそこから抜け出してボクの顔を覗き込んでくる。
「あ、れ?テンタの顔が霞んで……それに
視界が霞んでいるだけじゃなく、どんどん赤くなってきている。視界を染めていく赤色は、どんどん濃くなって視界を覆いつくしていく。
「て、テンタ……いる?」
もう視界が真っ赤に染まってしまって、目の前すらも見えなくなってしまう。目が見えなくなって、急に寂しさを感じたボクは、テンタのことを呼ぶ。すると、手によく知った不思議な感触を感じた。
「ありが……とうテンタ。」
テンタがすぐ近くにいる。それがわかっただけで、急に安心感に包まれた。
「なんでだろう……さっき起きたばっかりなのに、眠くてたまらない。」
それに……すごく寒い。
「寒い、でもすっごく眠い……なん、で…だろ。」
次の瞬間、ボクの意識はブツンと途切れた。
◇
少年の体が冷たくなって、眠るように動かなくなってしまったのを間近で見届けたテンタは、ぴょんと飛び上がると、少年の胸の上に飛び乗り、這いずって顔の方へと向かう。
いざ少年の顔の目の前にテンタは近づくと、ぺこりと深く頭部らしき部分を下げた。その次の瞬間……テンタは少年の口めがけて飛び込み、あっという間に体の中に潜り込んでいく。
そしてテンタの姿が完全に少年の体の中に消えると、突然止まっていた少年の心臓がドクンと大きく脈打った。それと同時……少年とテンタしかいないこの空間に
『条件が満たされました。これより種族人間、真名
世界の声が響いた直後、少年……ルルアの体が内側から光を放ち始めた。
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