第42話 10日目:動き出す世界
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運営からの特別なお知らせ
こんにちは、皆さん。運営です。
あるプレイヤーからの運営問い合わせを経て、皆様によりこの世界を楽しんで貰う為のシステムを追加します
・リアルマネーシステム
こちらはこの世界で稼いだ所持金について、元の世界への持ち帰りを可能とするシステムです。
この世界の貨幣である1ゴールドを1円に換金させて頂きます。
・リアルアイテムシステム
この世界で得たアイテムについて好きな物を3つ、元の世界へ持ち帰る事を可能にします。
以上2つのシステムを実装しました。
まあ、正直、元の世界に帰る事や、そちらの世界での富や財などあまり価値を感じないかとは思うのですが……耳を傾ける価値がある方からのアドバイスに今回は従ってみましょう、まあ、どうせ意味なんてないでしょうけどもね、ふんだ。
今日の運営からのお知らせは以上です
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◇まっしろなくうかん:運営◇
「…トモムラ先生の特典、そのお知らせは、こんなものでしょうね。ふむ、こんな事、意味があるとは思えませんが」
運営が一人、真っ白な空間でぼやく。
そこは神坐よりも高き場所、この世ではない、どこかにある世界。
疲れた様子の運営、指をぱちりと鳴らす。
きい、きい。
揺れる安楽椅子にタキシードのまま腰掛ける。
「……疲れました。身体の芯が重たく、呼吸するたびに眠気が身体に溜まっていく……ああ、これが疲れですか」
運営が長い髪を垂らし、一人ぼやく。
12回。
あの話し合いで、目の前の人間を殺せた回数だ。
だが結局、運営は彼に手を下す事はなかった。
「まあ、そちらの方が面白い、なんて言われたら……弱いですねえ」
自嘲気味に笑う。
小さき定命の者の舌先に乗るのは少し、屈辱だったが……。
何故か、悪い気分ではなかった。
「まあ、いいです。これでもし、世界が何も変わらず……いえ、安っぽくなった上でプレイヤーの意識も変わらず、何も起きないようなら……」
運営は別の楽しみを見出す。
運営は最大の譲歩を友村友人に示した。
運営が、友村友人の邪魔をする事はもうない。
運営は賭けたのだ。
自分の創った世界が、友村によりさらに面白くなる道を。
これでもし、世界が彼の言う通り面白い物にならなければ運営はなんの躊躇いもなく友村を殺すだろう。
だが――。
「楽しみですねえ、トモムラ先生、その時が。貴方はどんな言い訳を――」
《ピロン》
きっと、その時は来ない。
《ピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロン》
「え………………??」
《チュートリアル呼び出し300件超》
世界が、さっそく変わり始めた。
◇10日目:夜、王都ロードウィン各地にて◇
「……マジ? え、マジか」
あるVtuberは暗い部屋の片隅でその知らせを聞いた。
「え、これって……この世界でめっちゃ頑張ったら、元の世界で凄い事になるんじゃ……」
あるVtuberはその日の仕事、冒険者ギルドの受付業務を終わらせ、その知らせを聞いた。
「これが、本当なら……」
あるVtuberは騎士団の仕事終わり、とある酒場でその知らせを聞いた。
「おいおいおいおいおいおい! 見た!? 見た、さっきの!? 医療費ルーレットやってた甲斐があるんじゃないの!!??」
あるストリーマーは戦場での治療司祭としての仕事中、更なる金稼ぎのモチベ―ションを得た。
「団長、見た感じすか? 運営からの知らせ」
「これさー……なんか荒れるくね? 団長どうします?」
「うん、今、見た……2人共、今日から町のパトロール、2倍に増やしてね」
「おっほ、仕事爆増!! やばい? やった感じ? 俺、質問ミスった感じ!?」
「あー藪蛇ったねー」
あるVtuber達、ロールプレイにより法を司る秤の騎士団の中枢を担う事になった彼ら、彼女らも眩い聖堂の礼拝所でその知らせを聞いた。
「ねーボスボスー!! なんか運営からね、お知らせ来たよ!」
「ボス、俺らも見たよ。その知らせ! なんかお金とアイテムを現実に持って帰れるって!」
「ボスボスボスボス! どうすんの!? やっちゃうの!? てか、もうやっちゃおうよ! ウチらで! 教会の銀行襲っちゃう!!??」
「おー☆ ほんとだ……じゃあ、本格的にやっちゃうか?? 異世界ギャング、やれんのかって!!」
「「「「おー!! やっちゃおー!!」」」」
あるVtuber達、ロールプレイにより法に反乱するアウトローの道を行く事になった彼ら、彼女らが暗い地下の隠れ家の中でその知らせを聞いた。
「待ってwwwあひゃひゃひゃひゃ! マジか! あーぼったくりタクシー続けておけば良かったー! なんだこれ!」
「どうしたの、レイ」
「んー……? 多分、これから忙しくなるかもって感じ! 頑張ろうね!」
「……ほんと、ごめん、レイ。私のせいで……指名手配に……」
「いいっていいって! アレは仕方ないって! てか、あそこでロアちゃん助けれない方が無理だったし! よおし! ドラちゃん! とにかく、警察がこない所まで飛んでいけー!!」
『承知した、我が愛よ』
あるVtuberとこの世界の住人。ある事件に巻き込まれ、この世界発のPK《プレイヤーキラー》として告発された彼女達は夜空を羽ばたくワイバーンの背の上でその知らせを聞いた。
この世界での金銭、アイテムの現実への持ち帰り。それは目に見える、報酬だ。
まず、ゲームに絶対必要なピースが1つ揃った。それは明確な報酬の存在明示。
世界はこの瞬間から変わり始めていた。
そして、ゲームに絶対必要な最後のピースはこれから彼らが揃えるだろう。
古い森の中で冒険をはじめ、毒を鍛え、魔を討ち、運営を説き伏せた男。
友村友人とその仲間が始めるビジネスによって。
あとがき
昨日のお話、たくさんの☆頂きありがとうございました。
コメント全て返せずごめんなさい、全部見てるので今やってる明日〆切が終わったらコメント返事していきます。
ほんとカクヨムの読者さん暖かいよ……
ありがとうございます。
運営、なんかお前に優しい人が多くて困惑するわ……。
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