第18話 10日目:セーブザワイバーン
「ハッハッハッ、ワンワン!!」
「うお、タボ! 早いって!」
森を駆け抜けるタボを必死で追う。
1週間の森生活でだいぶ体力と森慣れしている。
ぐんぐん走っていくタボを追いかけてたどり着いた場所は――開けた場所。
あまりよくない光景が広がっていた。
俺とタボは茂みに潜り込んで、身を潜める。
「グルるるるるるるるるるるるるる!!!!」
「GOB!!」
「ギャハハハハハハ」
ワイバーンだ……!
かなり傷ついている、翼を弱々しく開き、威嚇を続ける。
胸には大きな槍が刺さっている……
最悪な事に、傷付いたワイバーンを囲む奴らがいる。
緑色の肌の武装した小人達は……。
「……ゴブリン!」
ファンタジーおなじみの敵キャラ、ゴブリンだ。
傷付いたワイバーンを狙っているようだな。
よく見ると、ワイバーンの背中には鞍のようなものがついている。
誰か乗っていたのは間違いない。
墜落途中に落ちたか、既にゴブリンに連れ去られたか……
いよいよまずいぞ!! もう迷ってる時間はない
「……タボ。危険だからお前はこの茂みの中で」
「ぼふっ! ぶううううん」
タボが不服そうに鼻を鳴らす。
言う事を聞いてはくれなさそうだ。
「……いいのか?」
「ワン!」
ならもうやるしかない。
ゴブリンがジリジリとワイバーンを包囲していく。
墜落のダメージで、ワイバーンは威嚇するので精一杯のようだ。
どちらに味方するかなんて、決まっている!
「毒手、全種解放! 加減は無しだ!」
スキルの修行も訓練も行った。
あとは、実戦開始だ!
「ゴブ!?」「ゴブ……!」
ゴブリンは目視で、9匹……!
鎧を着てる奴や槍を持っている奴もいる。
ワイバーンとの距離はまだある。
この位置ならーー。
突如現れた俺に驚いた様子のゴブリン達。
剣や槍を構えて、威嚇をし始める。
薬師は、弱い。
まともに戦えば、囲まれて、槍で突かれ、剣で斬られ簡単に殺されるだろう。
だから。
「まともに戦うつもりはない――"毒煙の術"」
「ゴブ!?」
ぼふん!!
目の前に紫色の煙が広がり、俺の姿を隠す。
気化毒と大毒使いスキルの応用。
濃い毒を煙幕として扱う。
ゴブリンは俺の姿を見失ったようだ。
すかさず――。
「毒分身の術」
俺の分身を作成。
殺し方は整った。
始めよう。
実戦投入は初めてだが、試す価値は充分ある。
俺は分身をゴブリン達に突っ込ませる。
「ゴブ!!」
「ゴブブブ!」
煙幕から飛び出した俺の分身にゴブリンが殺到する。
予想通り。
奴らは条件反射のように、一斉に分身めがけて攻撃をしてきた。
目を輝かせて、俺の分身をズタボロにしていくゴブリン達。
よだれを垂らし、粗末な武器を振るう。
おいおいおい、あの槍や剣、先端が汚れている。
まさか、糞でも塗りたくっているのか?
最悪だな。
そうこうしてる間に、煙幕が晴れた。
「ごぶ?」
奴らは不思議そうに本体である俺を見つめる。
今ずたぼろにした俺の分身と俺を何度か交互に見つめて。
「GOB」
細かい事はどうでもいい
そんな顔でゴブリン達がよだれを垂らし、笑う。
まるで”次はお前だ”。
そんな笑顔で――。
「いいや。お前たちに次なんてものはないがね――"発"!」
「「「「ゴブ?」」」
人差し指と中指を顔の前で立て、一喝!!
これは合図だ、起爆のな!
ッボオム!!!
毒分身が一気に破裂する。
ゴブリン達が衝撃波で吹き飛び、辺りに転がる。
無事な奴は1人もいない。
ぴくりとも動かない奴、負傷している奴。
どちらにせよ、戦いは一瞬で終わった。
毒分身爆破をエルマのトレーニングで威力調節を可能にした術だ。
本気で爆破させると毒の爆風は吹き荒れるは、爆心地は毒沼化するわで大変だからな。
おかげで、ワイバーンに影響はない。
「ご、ブ!!」
最後の抵抗、壊れかけのボウガンを俺に向けているゴブリンはーー。
「ぐるるるる!! ガウ!!」
ぼきん。
タボが飛びかかり、一瞬で首を噛み捻った。
……やだ、うちのワンコ、かわいい上に強い……
最強のペットじゃん……
「よし、毒分身での一撃確殺は成功だな。もう初見の相手には全部これ擦っていこう」
「わんわん!」
脅威は排除した。さて、後は……
『グルルルルル!!』
この警戒度MAXのワイバーン、どうしたものか……。
ワイバーンが、血を垂らし牙を剥いてーー。
『ーーおのれ!! 妾に近付くな! 禁術を扱う異端の徒め!!』
「……喋った」
そして、異端とか言われた。
解せぬ。
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