第3話 初日:ユニークスキルを鍛えよう
【もちろんです! 千年樹のレベルは1000! スキル経験値効率も最高レベルで溜まります! おまけに毒手スキルであれば、対象を破壊せずとも攻撃するだけでスキルを使ったと判断される事でしょう! これは、薬師職で毒手などの固有能力を持つ方だけが出来る鍛錬方法かと!】
「……分かった。やってみよう」
ちょうど、目の前に見上げるサイズの樹がある。
分厚い樹皮に、赤茶の太い幹、青々とした緑の葉っぱ。
人が殴ってどうこうなるものには思えない……。
【スキル使用については、慣れるまでは音声による使用ルーティンをおすすめします! 発声によるスキル使用に慣れた後は、無声や、オリジナルのスキル名をご自身でつけるのもいいでしょう!】
情報がなさすぎる。
今は言われた通りにするしかない。
「スキル”毒手”」
呟いた瞬間、異常が始まった。
右手と左手が痙攣し、みるみるうちに毒々しい紫色に染まる。
血管は浮き出て、爪も黒くなっているような……。
【素晴らしい! スキルの発動に成功しましたね!】
「……主人公の能力じゃないな……」
俺はそれを握りしめ、木を殴った。
ぺちっ。
「……硬い」
【あー駄目ですね、本気が感じられません。毒手で全力でなければスキル経験は得られないでしょう】
「クソが……」
もう、やるしかない。
そうだ、考えろ、想像しろ。
主人公なら、痛いとか怖いとか関係なしに、やるべき事をやるはずだ。
俺は、もう半ばヤケになって……。
ごつっ……。
拳に衝撃と鈍い痛みが走る。
「ぐっ……痛っ……」
素人が素手で木を殴ったらどうなるか。
答えは単純、普通に拳を痛める。
【スキルでの攻撃が確認されました、千年樹とのレベル差990がスキル経験値として加算されます】
なるほど……この痛みに耐えれば……スキルを成長させる事が出来るらしい。
俺は皮が擦り剝けた拳を見つめて……
ん? 待てよ……そういえば……。
「チュートリアル、ステータスにあった所持品って使えるのか?」
【一部の生産系職業は初期装備でかばんタイプのアイテムを保有しています、かばんタイプのアイテムを使えばいつでもどこでもアイテムの保管、使用が可能です】
「……薬師のかばん」
ぼんっ!
目の前に、くたびれた革のカバンが現れる。
ポシェットのように肩に掛けられるタイプだ。
「あった……」
ずきずきと痛む手を鞄に突っ込み、取り出したのは赤い液体の入ったビンだ。
〜〜〜〜
★無痛薬★
品質:伝説
種別:個人変異
効能:飲む者に”無痛症”を付与する、飲む者に”不感症”を付与する
説明:厄王が創り出した禁忌の薬の1つ。痛みという概念を消し去る。
厄王に仕える騎士、王家の配下に向けて贈られた薬。
厄王は、神々の処刑台で嘯いた。
ヒトよ、進む為に、痛みを捨てよ。たとえソレが人の証明だとしても
〜〜〜〜
「無痛薬……ね」
薬師職業を考えたのは俺だ。
設定段階では、いくつかの薬を作成できるクラスとして考えていたが無痛薬なんてものは作った覚えはない……。
それにこのフレーバーテキストっぽいのは一体……。
「だが、これは……実におあつらえ向きな薬だ」
【たはー気付かれましたか! 初期装備や所持品については各職業、そして固有スキル事に序盤で役に立つものをご用意しました! 無痛薬を飲めば、スキルの鍛錬も効率が一気に上昇する事でしょう! ――まあ、もちろん無理にとは――」
きゅぽ! ごくり。
【え?】
コルクの蓋を外し、一気に中身を煽る。
甘ったるい味、喉に絡むとろとろの液体を飲み干す。
「……時間が惜しい、さっさと続けよう、スキルの修練を」
【……素晴らしい】
~~~~
スキル経験値が加算されます
~~~~
視界に文字が浮かぶ。
コツコツスキル上げ……。
命がかかってなかったら結構好きな作業なんだけどな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます