第2話 初日:クソステータス職業・薬師

 ◇初日:友村友人・世界樹の森◇


 ……なんだ、この状況は……。


 フルダイブゲームの先行プレイに参加したら、異世界に転移させられた、だと?


 いや、落ち着け。

 パニックになったらそこで全部終わる。

 呼吸を、ゆっくり、静かに。



【転移おめでとうございます、プレイヤーの皆様にはまず、ステータスチェックをお勧めしております! 頭の中で念じるか、言葉に出して頂くだけで皆様の能力を数値化したステータスを御覧頂く事が可能です!】



 頭の中に響く女の声。チュートリアルの声だ。


 ステータス……やってみるか? 

 ラノベでも、ステータスとかは割とお約束だし……。


 俺が、頭の中で念じると――。

 ふわり、目の前に文字が浮かんできた。



 ~~~~


 名前:友村友人(ともむら ともひと)

 性別:男


 区分:先行プレイヤー

 配信:無し


 レベル:10


 生命力: 50 (全職業平均120)

 魔力 : 00 (全職業平均100)

 速度 : 50 (全職業平均100)


 筋力  :20   (全職業平均100)

 頑丈  :20   (全職業平均100)

 器用  :40   (全職業平均100)

 カリスマ:5    (全職業平均50)


 固有スキル  :毒手※チュートリアルを呼んでね!

 変異    :無し

 隠し種族  :有り

 隠し技能  :複数有

 職業クラススキル:《薬師》薬効判定Ⅰ 素材感知Ⅰ 回復薬生成Ⅰ 外敵の知らせⅠ 毒の高揚Ⅰ

 称号    :追放者

 所属勢力  :無し

 所持品   :薬師のかばん(容量小)、無痛薬(伝説)、無限の空き瓶(遺品)

 装備    :追放者のフード、薬師のローブ、革の旅ブーツ

 友好勢力  :無し

 敵対勢力  :一二神教(害虫扱い。見つかったら駆除される)教会騎士団全般(討伐対象)

 信仰    :無し

 ロールプレイ:”0” 自由に生きる事が可能

 嗜好    :犬だいすき人間

 ~~~~~



「弱え……」


 全職業平均を出されてしまい、自分の雑魚さが際立つ。


 誰だ、こんな職業を考えた奴――俺だ!

 バカが! 

 何がステータスは控えめの方が玄人感とリアリティあるよね……だ!


 RPGゲームなんて、基礎能力であるHPと魔力の数字の暴力が全てのはずなのに!

 遊ぶ人間の事を何一つ考えていない!



「こんな事ならもっとステータスを盛れば良かった……!」



 どうするべきだ?

 この状況が、盛大なドッキリである事に賭けるか?


 夢や幻覚であるという一番現実的な結論を出すか?


 いや、その行動はなんか序盤で死ぬタイプのモブっぽいぞ……。


 今、一番ヤバいのは、運営が言っていた言葉が全部マジの真実である事だ。


 つまり、俺は本当に異世界に転移し、クソザコステの最弱状態。

 仲間もなしにこの森で生き残る必要があるという……。



「……自分の書いた設定に苦しめられる、自業自得すぎるな」



 言いながら、頭を切り替える。


 俯瞰、俯瞰、俯瞰。

 考えろ、考えろ、考えろ。


 俯瞰的に考えよう。

 お手本にすべき最高の存在を思い出せ。

 異世界ラノベの主人公なら、こんな時は……



 ――謎の順応性でテキパキ動く筈だ……!


 この状況がドッキリや夢オチであると決まるまでは真剣に生き残る事を考えよう。



「チュートリアル……スキルについて教えろ」


【もちろん! 貴方に与えられた固有能力は"毒手"です! 直接攻撃した相手に貴方の血液や魔力から作成した毒を与える事が出来ます。また、成長する事により様々な毒物の生成が可能になります】


「……それ、強いのか?」


【E級クラスのスキルです。この世界においてはいわゆるハズレの固有能力です】



 これもお約束か。

 使いづらそうな微妙な能力。


 でも、腐っている暇はない。

 とにかく行動しなければ……。


「チュートリアル、俺が今、この状況を生き残るために必要な最適解を教えろ」


【…………】


「……どうした?」


 返事がない。何かまずい事でも――。


【素晴らしい!!!!】


「うお、声でか……」



【その積極性! 他のプレイヤーは、未だ現実を受け入れない方が目立つ中、ここまで建設的なプレイヤーは珍しいです! さすが、トモムラ先生! ――おっと、1人のプレイヤーへの肩入れはまずいですね】


 このチュートリアル、さっき白空間で好き放題してた運営と話し方が似ているな……。

 

【ずばり! 初期ステータスに恵まれなかったプレイヤーの方へのおすすめはスキルを鍛える事にあります! 各主要ステータスを鍛えるのはいくつか方法がありますが、そのどれもが長い時間を賭けたり、危険を伴ったりします、しかし、スキルの成長はシンプル! 只、使い続けて頂ければ結構です!】


「……使い続ける? 具体的な方法は?」


【ユニークスキル”毒手”の場合は、発動した瞬間にスキル経験を積む事が可能です! また何かを毒手で毒状態にする、毒手で何かを殴ったりする事でもスキルを成長させる事が可能ですよ!】


「……お前が考える今、最も安全で効率の良いスキル鍛錬法を教えろ」


【はい、喜んで! それでは、周囲にある”千年樹”を毒手で殴り続けて下さい!!】


「…………それは、本気で言ってるのか?」


 なんかバカな事言い出したぞ……。

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