第6話 新たな展開?~まさかのデビュー~

そのつもりだったが・・・隆司は寝ようとするが・・・


「う~ん・・・眠れん。目を閉じると三紀子のBL本の内容とイラストが出てくる・・・」


美咲が来る足音が聞こえてきた。


「ん・・・美咲の足音だな。毎回の起こされ方だと、単調だし、ここはビックリさせてやるとするか」


隆司は寝ているふりをして美咲を待った。

美咲がドアを開けてきて隆司の肩を手で揺らそうとしていたその瞬間「わっ!」と驚かせてみせると、美咲は美咲は後ろに倒れこんだ。


「いたたた・・・おにいちゃん、急に驚かさないでよ~」


体育座りな感じになっている美咲はパンツが丸見えだった。


「おぉ~、美咲・・・パンツ見えてるぞ~。あははは」


「もう・・・おにいちゃんってば~。エッチなんだから~」


美咲はパッとスカートを下ろしてあらわになった下着を隠していた。


「いや~、ごめんごめん。三紀子の原稿をやっていたら徹夜になっちゃってな~」


「えぇ?徹夜しちゃって授業は大丈夫なの?絶対寝ちゃうと思うよ~」


隆司はすでに制服姿だったのもあり準備を整えて、そのまま美咲と食卓へと向かった。

徹夜は毎度のことで対策は練ってある。

朝食を食べ終わると、隆司と美咲はいつもの通学路で杏子たちと合流してから、しばらく歩いて蓮司も加わった。


「おぃ、三紀子・・・例のアレな持ってきたから、ホームルームが終わったら急いで図書室に来いよな」


「えぇ~!もう出来たのぉ~・・・あんなにたくさんの原稿をたったの1日で?大変だったでしょ~」


三紀子はかなり驚いていたが、隆司にとっては朝飯前だった。


「同人誌にする原稿とCG集にする原稿をプリントアウトしてきたから、あとで図書室でな」


「うん!ありがとぉ~・・・早くホームルーム終わらないかなぁ~」


杏子も声をかけてきた。


「昨日はみんなで楽しかったわね~・・・撮影は緊張しちゃったけど、プロのメイクさんの技術を盗みたかったな~」


美咲にも声をかけてきた。


「ねぇねぇ、美咲ちゃん。写真っていつ頃できるの?なんかちょっと楽しみになってきちゃったわ~」


「美優から昨日の夜にラインが来て、プリントして今日の放課後に生徒会室に持ってきてくれるって言ってましたよ~」


三紀子はホームルームの終わる時間を楽しみに、杏子は放課後になるのを楽しみにしていた。

蓮司は昨日買った竹刀を手にして軽く振り回して感触を楽しんでいる。

後から聞いた話だと、なんでも近いうちに別の高校との対抗試合があるとのことで張り切っていた。


「蓮司、おまえ・・・張り切りすぎて部員を泣かすんじゃないぞ~」


蓮司の訓練メニューはハードだという事は校内でも有名だった。

蓮司は主将であると同時に風紀委員だ。

途中から加わった三紀子を除いて生徒会は全員有名人ぞろいだ。


「やばっ!昨日の話で盛り上がってる場合じゃないぞ?遅刻しそうだ!」


ふと隆司が声を上げると、杏子が腕時計を見ると走らないと間に合わない時間になっていた。

みんなで走って校門まで行くと教育担当の先生が立っていた。


「先生、おはようございます。生徒会での話し合いで少し遅れてしまいました」


隆司が代表して先生に一礼すると、先生は「そういう事情なら仕方がないな」と言ってすんなり通してくれた。

隆司は校長からの信頼も厚く職員室でも有名だった。


「ふぅ~・・・なんとかすり抜けられたな~。でも流石にホームルームに遅れるのはまずいだろうから教室に急ぐか~」


「私も急いで教室に行くね~。またお昼に~」


美咲も走って教室へと向かった。

ホームルームが始まると、隆司はウトウトしてて今にも爆睡しそうだった。


「いかん・・・落ちそうだ。こんな時の御用達。必殺サンテFX!」


徹夜組御用達?しみる目薬が一番効く。

すっきり爽快、隆司は眠気を覚ますとホームルームが終わるのを待った。

そして、三紀子も待ちに待っていた。

三紀子の方を見るとモジモジしている。

しばらく経つとチャイムが鳴り、ホームルームが終わると、隆司は原稿の入ったカバンを持って図書館に向かった。


「おぅ、三紀子。おまえ・・・チャイムと同時に走り去っていったな」


「だってぇ~・・・待ちきれなくて、早く見たくて・・・」


「ほら、これだ。原稿はうちのパソコンに入ってるから、俺のと一緒に業者に出してやるよ・・・って、おまえ聞いてるのか?」


三紀子はバッグを素早くうばいさると、速攻で中身のプリントされた原稿を手に目がきらきらしていた。

そしてにやけた表情をしている。


「わぁ~、すっごーい・・・私の描いた原稿がフルカラーだなんて・・・びっくりだよぉ~」


始めてみるフルカラーとなった自分の原稿にはしゃいでいた。


「おぅ、フォトショがあると楽だぞ~。スクリーントーンなんか買わなくてもプラグインで何とでもなる。ちなみにフォトショのプラグインはコンプリートしてある!CG集の方はペインターを使って描き起こしたんだぞ。同人誌の方はフォトショだ」


「こんな高いソフトなんて私には買えないよぉ~。隆司君はバイトでもしてるの?」


「してないぞ。同人誌を売った資金をためて買ったんだよ~」


フォトショップもイラストレーターもプラグインもペインターも高価なソフトだ。


「気に入ったか?ペインターは水彩風に描けるからCG集にはもってこいだ。内容はともかくとして、おまえの画力はたいしたもんだ。誰かに教わって絵を覚えたのか?」


「独学よ~。図書館や図書室にデッサンの本があるから、それを見ながら練習したりトレーシングペーパーを使ってなぞり描きをして覚えたものなのよぉ~」


と、言いながら、三紀子は自分のかばんをゴソゴソと漁り始めると財布を手にしていた。


「いくらくらい払えばいいかなぁ~?」


「いや、いらねぇって。その代わり、一緒に夏コミに出ること!自分のホームページでも宣伝しておけよ~。おまえのホームページ見たけど、かなりの閲覧数だよな?世の中は・・・そんなに腐女子が多いのか!」


と、隆司はちょっと驚いていた。

今のブームは定番の異世界転生モノばかりだ。

そんな作品は飽き飽きとしていた。


「でも、実際に有名になってるのって言えば異世界ものだもんな~。初めは面白かったけど、流石に多すぎだよな~。三紀子もそう思わんか?」


「うん・・・確かに多いわねぇ~。私はソードアート〇ンラインからブームになったと思ってるけど。タイムリープ物の方が好みかな」


「と言いつつも、今回の同人誌は異世界召喚ものなんだけどな・・・あははは。部数稼がないと元が取れん!」


隆司は夏コミとかでは売れ残ったことがない。


「ちなみに俺の得意分野は学園ラブコメものだ。あとはアニメやスマホゲームを18禁にしてしまうことだぞ」


「私はBL一択かなぁ~」


「言わんでもわかるわ!おまえの描いてる時の表情が浮かんでくるわ!」


そうこう話し込んでいるうちに突然チャイムが鳴り響いた。


「まずい!授業がはじまっちまう!三紀子・・・走るぞ!」


三紀子は急いで原稿のプリントされたのを急いでしまい込むと隆司に手を握られ教室へと走って向かった。


「はぁはぁ・・・階段は疲れちゃうぅ~。エスカレーターかエレベーター付けて欲しいよぉ~」


そんな学校などありはしない・・・。

息切れしながら教室に着くと席に座って、教科書と筆記用具を机の上に並べていた。

淡々と授業が進む中、休憩時間になるたびに三紀子はいつにもなく真面目な表情で何やら読んでいた。

隆司は徹夜明けで授業中から昼まで爆睡していた。

そして、昼休み・・・

自然とみんながいつも通りに生徒会室に集まっていた。

と、いきなり三紀子が隆司の前に来て、両手で隆司の手を握って真剣な面持ちで話しかけてきた。


「なんだ?おぃ、どしたのさ?」


「これ・・・隆司君の書いた今度の夏コミの原稿でしょ?」


手を離すとカバンから原稿を取り出して生徒会長の机の上に置いた。


「あぁ、俺のも入れちまったか・・・おまえ、これ読んだのか?」


「うんうん、すっごい面白いよ、これ!BL一択の私が夢中になって読んだのって初めてなの!」


と、ヒートアップする三紀子の反応に杏子も近寄ってきた。


「どしたの?ヒートアップしちゃって」


杏子はモグモグとおにぎりを食べながら三紀子に話しかけると、三紀子が一枚の原稿用紙を杏子の目の前に差し出した。


「ぶーーーーーっ!なによこれ!」


「うわぁ~!杏子ちゃん、汚いってばぁ~」


三紀子の顔面はご飯粒だらけ。

そして見せた原稿用紙は18禁の一番激しいシーンだった。


「んっ?あれか?今書いてる・俺だけの女子校生たちに囲まれて、恥辱の日々・のことか?」


隆司が書いている作品は、女子高ハーレムものだった。

内容は女子高に男子一人が入学するというもので、お笑いあり修羅場あり友情あり恋愛ありの詰め込まれたものだ。

よくありそうなタイトルとは異なり、単なるワンパターンなストーリー構成じゃらいらしいのが三紀子のツボにハマったらしい。


「俺、毎回思うんだけどさ~。ゲー研でも作らないか?そしたら俺と三紀子の同人誌がエロゲーになる!」


「ん~・・・ゲー研か。作る目的はともかくとして、うちの学校は授業でプログラミングもあるから先生に打診してもいいかもしれないわね~」


「私はプログラミングは苦手かもぉ~・・・」


隆司はプログラミングは、そこそこ出来るが複雑なのは流石にできない。

自分の描いたCGに時計やMP3プレイヤーやカレンダーといったものをプログラミングしてフリーソフトのサイトに載せている。



「よしっ!今度の生徒会会議で先生に打診してみよう。JavaにJavaScriptにPHPってところか。俺はC++しかできん!」


授業ではJavaとJavascriptがメインとされている。


「う~ん・・・スマホゲームを作るにはJavaとJava scriptとPHPってとこだもんな~。PHPなんてさっぱりわからん!」


「えぇ~!学内トップの成績の隆司君でもわからないことってあるんだぁ~」


杏子が隆司の成績を唯一抜ける授業はプログラミングだった。

部活が認められたら、間違いなく杏子が部長だろうなと隆司は思ってた。


「ん?美咲ちゃん、夢中で何やってるの?集中しちゃって珍しいわね~」


「あっ!杏子先輩~・・・ちょっと友達とラインしてて~。放課後が楽しみだって言ってましたよ~」


と、杏子は思い出して顔を赤らめていた。

そうこう話しているうちに予鈴が鳴り始めた。


「もうこんな時間か~。放課後が楽しみだな。杏子・・・あはは」


「もう二度とやらないわよ~。あんな恥ずかしいのはこれっきりよ~。そんなことよりも、早く教室に戻りましょ」


みんなで話しながら生徒会室を後にして教室へと向かった。

今日はなんだかんだで毎日恒例の杏子のお茶会をすることはなく、放課後に美咲の友達も一緒にという話になった。


「あっ!わりぃ~。俺は徹夜で眠すぎるから保健室で寝るわ~」


「あんた、毎回やるけど、なんで校内トップの成績なのか不思議で仕方ないわ~」


杏子は呆れ顔で隆司に言っていた。


「放課後に友達連れてくるので、よろしくお願いします~」


美咲は一言言うと1年生の教室へ走って向かった。

隆司は三紀子に「体調が悪いから保健室に行くって言ってたと伝えてくれよな~」というと、隆司は保健室へ向かった。

杏子は三紀子の手を引いて「ほっておきましょ」と言いながら蓮司も連れて教室で午後の授業を受けることになった。


「保健室には先生なしか・・・さて、寝るか~」


寝ること数時間・・・。

ばっ!・・・

隆司が突然起きた。


「はぁはぁ・・・なんという夢だ。この俺が男どもに・・・あんなことやこんなことを。三紀子のBL本の影響か・・・インパクトありすぎんだよな、あいつの本。でも、あいつの画力なら普通に描けば良い線いくと思うんだけどな~」


「秋月君、どうしたんですか?まだ体調がすぐれませんか?」


と、保健室の先生がベッドを覗いてきた。


「いえ、ばくすぃ・・・じゃなくて、ゆっくり休めましたからもう大丈夫です。って、もうこんな時間ですか!生徒会室へ急ぐので失礼します~」


もう放課後の時間だった。

隆司は急いで生徒会室へ向かうと、なにやらみんな騒いでいた。


「おぅ!爆睡して遅れた・・・ってなに騒いでんだ?」


杏子が隆司を見ると「今、コーヒー淹れるわね~。サボり魔さん」といってテーブルに並べられたお菓子も一緒に持ってきてくれた。


「杏子、何みんな騒いでるんだ?ん?あの子は・・・美咲の友達の、えぇっと、名前なんだっけ?」


美咲の友達も隆司に気づいて挨拶をしに来た。


「あっ!生徒会長さん。改めまして、小笠原 美優といいます。美咲ちゃんとはいつも仲良くさせてもらってます」


「おぅ!いつも美咲と仲良くしてもらってありがとな。俺のことは隆司でいいから・・・って貸してたカメラか」


美優は隆司に挨拶して手にしていた借りた一眼レフを返した。

盛り上がっている理由が何となくわかった。


「もしかして、盛り上がってるのは昨日の写真か?ちょっと見せてもらうかな」


隆司は美咲が座る書記の席へ向かうとずらりと並んだ写真を目にして、1枚手に取った。


「おぉ~!これ、杏子か~。流石に告られまくってるだけはあるな~。これ、引き伸ばして学内の掲示板に貼るか」


「ぶぅーーーーー!いじらないでよ、恥ずかしいんだから~」


「ぶはっ!おまえ、またか!コーヒーぶっかけるのは毎日の恒例か?」


杏子はかなり顔を赤らめていて、恥ずかしそうにしている。

三紀子は、昨日のレイヤーさんの写真を見ていた。

頼んで男装コスの人のも撮ってもらっていたらしい。

それを見ながら想像に想像を重ねて「えへ・・・えへへへ」と変態笑いをしている。


「おぃ!そこ・・・変態笑いをするなって。おまえの描いた本が焼き付いて夢にまで出てくるぞ」


「だってぇ~・・・この子、かっこいいんだもん。胸のふくらみとかは、どうしているんだろうねぇ~」


「ん?おまえ、そんなことも知らんのか?Bホルダーだろ。男装コス定番アイテムだぞ」


隆司はコスプレのこともかなり詳しい。

コミケではスカウトして毎回売り子をしてもらっている。

その時の知識が募り募っている。


「わたし、コスには興味がないからぁ~・・・でも、男装コスを始めてみて興味が出ちゃったなぁ~」


「その子は、おまえの想像の中でエロい子とされるのか?気の毒にな~。あはは」


三紀子はバッと写真をカバンの中にしまい込んだ。

半分は図星だったらしい。


「そういえば、蓮司の姿が見えんが、あいつどこ行ったんだ?」


「あぁ、蓮司君は風紀委員のいつもの見回りが長引いてるんじゃないかな~」


蓮司の明言は「悪・即・斬」新選組かぃ!って感じの真面目なやつだ。

蓮司が剣道部になったのは、某有名なアニメに出てくる新選組に憧れてだった。


「で、美咲は今度の応募にする写真は決まったのか?」


「う~ん・・・杏子先輩の写真と並べちゃうと、どれもパッとしなくって~」


「おまえはかわいいんだから、なんでもいけるって。フィギュアにして俺だけのケースに飾っておきたい気分だ」


美咲の友達も同感そうで、何枚かピックアップしていた。

杏子の写真にもかなり驚いていたが、美優は美咲一択だった。


「隆司先輩のおかげで昨日はとっても楽しかったです!。質問なんですけど、毎回、放課後にはみんなで生徒会室に集まっているんですか?」


「ん?あぁ、昼と放課後は毎日な。良かったら美咲と遊びに来ても良いんだぞ?」


「いつも杏子先輩の美味しいお菓子と美味しいコーヒーが飲めるなんてうらやま~です」


美優も杏子の手作りのお菓子を食べながらコーヒーを楽しんでいた。


「さてと・・・」


バシッ!と隆司は三紀子の頭をこずいた。


「また写真見ながら変な想像してないで我にかえれ!」


「あ、いたっ!もう、隆司君・・・痛いってばぁ~」


三紀子は写真をしまうと両手で頭を押さえていた。

隆司と杏子以外はそれぞれの世界に浸っている。


「ほーら、みんな。もうそろそろ帰る時間よ~」


杏子はみんなに言いながら食器などの片づけを始めた。

美咲の友達も、どうやら写真が決まったらしく、5枚手にしていた。


「ねぇ、美優・・・今回は、その5枚にするの?」


「うんうん、一番輝いている風に見えるもん。副会長さんの写真はどれも素敵」


「美優ちゃんだっけ?私のことも杏子でいいわよ~。それから、いつでも美咲ちゃんと遊びにいらっしゃい」


美優はこの雰囲気がすごく気に入ったようで、とても喜んでいた。

みんなが帰り支度を終えると生徒会室を後にした。


「ん~・・・蓮司が来ないな。校則違反者でもいたんかな~・・・まっ、帰るか~」


と、みんなで校門へ向かうと何やらベンツが停まっていて、校門に着くなりベンツのドアが開かれて一人の女性が出てきた。

隆司は、どこかで見たようなといった感じの表情をしていた。


「やっと見つけたわ。あなたをずっと待っていたのよ」


と、その女性は杏子に声をかけてきた。

杏子も誰だかわからず困惑していると、美咲が耳打ちしてきた。


「あぁー!昨日の編集長さんでしたか。メイク、有難うございました。私、メイクに興味があるので、とても勉強になりました」


「単刀直入に言うけど、あなた、私の雑誌の読者モデルになってくれないかしら?それと、メイクに興味があるのだったら、あなたにもメリットになりますよ。どうかしら?」


杏子はあたふたして取り乱している。


「えっ?えっ?えぇーーーーー!わたし、撮られるのは苦手だから無理ですよ~。上がって、顔面が硬直しちゃうんです~」


「まあ、そう言わずに、今期の秋冬物の服だけでいいのよ。お礼は弾むし、メイクも教えるわ。悪い条件ではないと思うのだけれども」


メイクという言葉に反応して「んーーーー」と考え込んでいた。


「杏子先輩、すっごーい!先を越されちゃいました~」


「あら?あなたも一緒に来なさいな。あなた・・・何度か応募していたわよね?確か・・・秋月 美咲さんよね?以前から気にはなっていたのよね。今季だけだけどどうかしら?」


「私も良いんですか~?私の夢は読モになる事なんです~」


美咲の友達も先ほど生徒会室で選んだ5枚の写真を編集長さんに渡した。

写真を見ながら美咲に「メイクは自分で?」と言うと、美咲は返事をした。


「うちの社のメイクアップアーティストにやってもらうことにしましょうか」


美咲は目を輝かせて杏子の手を引いて揺さぶっていた。


「杏子、美咲のためだ。俺からも頼むよ」


隆司は前々から美咲の夢を応援していたので、杏子の肩に手を置いて真面目に頼んでいた。


「隆司がそういうなら・・・でも、今回だけよ。隆司は美咲ちゃんのこととなるとムキになるからね~。仕方ないか~」


「あら、それじゃ、引き受けてくれるのかしら?」


杏子は隆司と美咲の顔を見てから「今回だけでしたら・・・」と編集長さんに答えた。


「それじゃ、急で申し訳ないんだけど、明日、またこの時間に迎えに来るわね。それじゃ、よろしくね」


というと、編集長さんはベンツに乗って学校を後にした。


「杏子ちゃんに美咲ちゃん・・・すっごーい!この学校から二人も有名人が出ちゃうなんてぇ~」


三紀子は二人の手を握り嬉しそうにしていた。

隆司はともかくとして、三紀子も影では同人界の腐女子どもの有名人。


「おまえも表に出ないだけで十分に有名人だと思うがな。この変態腐女子が!ホームページのカウンター数が半端じゃないじゃんか」


「腐女子って・・・わたし腐ってないよぉ~」


隆司は呆れ顔で「あほか、おまえ」といい放った。

美優は驚きのあまり呆然としていた。

生徒会のメンバーに馴染んでいないのだから無理もない。

ここにはいないが、蓮司もこの学校では知らない者はいないくらいの有名人なのだから。


「おいおい、あの編集長のおかげで、すっかり遅くなっちまったな。さっさと帰ろうぜ~」


「あっ!いっけなーい。私、お菓子の材料買ってから帰るから先行くね!また明日ね~」


杏子は大急ぎで走って行った。


「あいつ、毎日違うお菓子作ってくるけど・・・お菓子マスターか!」


どうやら、美咲の友達も帰り道が一緒らしくて、途中まで雑談をしながら帰宅した。

美優はどうやら、杏子のファンになったらしく夜遅くまで美咲とラインで杏子のことを色々聞いていたらしい。

隆司はいつも通りパソコンの前で同人誌の作成にあたっていた。

今回は三紀子の分もあるので夜更けまで作業をしていた。


「さてと、今日はこれくらいにして寝るとするか~。完成したときの三紀子の変態笑い顔が気になるな・・・」


隆司はベッドに横になりスマホで目覚ましをセットしようとしていたら、杏子からラインの着信が来た。


「おぅ、杏子、こんな夜更けにどうしたんだ?おまえが夜更かしするなんて珍しいな。いつも美容に良くないとかなんとか言ってるのに」


「隆司~・・・どーしよ。明日のこと考えると眠れなくって~。もう緊張して無理~」


杏子はどうも明日の放課後の件が気になって眠れないらしい。

苦手な分野だから緊張するのも仕方のないことだ。

無理を言った隆司にも責任はあると感じていた。


「ん~・・・明日のアレか~。まあ、無理を言った俺も悪かったな。美咲も一緒なんだし、俺にも責任があることだし、俺も一緒に行くよ」


「ほんと?なら、少しは安心かな~・・・三紀子も一緒に来てくれないかな~?」


「あぁ、まだ起きてると思うからラインしてみるよ。今日はもう遅いし寝ろ。またな、杏子」


隆司は通話を切ると、三紀子にライン通話してみた。


「・・・・えへ・・・えへへ」


「おぃ!腐女子・・・何やってんだおまえ。普通はもしもしだろうが!」


「あっ!隆司君かぁ~。どしたのぉ~。こんな遅くに・・・わたしはねぇ~・・・ゲームしてたぁ~」


「あっ!隆司君かぁ~。って他のやつだったらどうすんだ!まあいいや、ちょっと話が合ってな」


プレイしているゲームの内容はだいたいわかってるからスルーした。

隆司は経緯を説明すると、三紀子は快く返事をして同行することになった。


「おまえ、こんな夜更けまで変なゲームやってないで早く寝ろっ!また明日な~」


通話を切ると、寝ることにした。

流石に二日続けての保健室通いはまずい。

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